第2話 二人だけのクリスマス・ディナー
「え!俺たちだけ?」
恵比寿駅の改札で待ち合わせた。
あいつは黒いタートルネックのセータとぴっちりしたジーパン。黒革のブーツ。やはり黒い膝までのジャケットを着ていた。黒ずくめ。
ジャケットの襟の中まで入っている長い髪は、すっかり髪の染料が抜けていた。
鬼芦達の魔の手から救ったとき、
「日本男児は黒髪だ」
などとつい好みを言ってしまった。それ以来、薄い茶髪だった頭が徐々に黒くなっていった。艶やかで柔らかそうな毛筋だ。それを撫でながら匂いをかげたら・・・
「H(水泳部)とN(こいつだけ特殊で合コン部)は突如デート。S(陸上部)は大風邪引きさ」
俺は神様にこの幸運を感謝していた。あいつはつまらなそうな顔をしたが、にこっとして、甘えるように言った。
「じゃ、今夜は大介と俺のデートだね!驕ってよ」
毎年クリスマスに飾られる、ガーデンパレスのツリーはきれいだ。周りにはたくさんのカップルが行き来する。ツリーを俺たちはしばし並んで見つめた。肩先がほんの少しだが触れている。
あいつが幸せに浸っている俺を小突いた。
「ねえ・・・あのカップル見なよ」
見ると、白いジャケットを着た白っぽい茶髪の子と、その横のサラリーマン風の若い男がツリーをまぶしそうに見ている。サラリーマンはこの寒いのにコートを着ておらず背広とネクタイだ。180センチぐらいか。丸い赤ら顔でまじめそうな奴だ。
彼の肩ぐらいの背しかない白ジャケットの子の顔を見て俺は言った。
「・・・あれ、男だろ?」
時々、白ジャケットの子は耳のあたりの髪を撫でたり、右手で拳を作って口の前に持って行っている。何となく女性的で可愛い仕草だ。
「絶対・・・あの二人、むふふだよ」
俺の心を見すかれたかと、どきっとしてあいつを見るとあいつはにやっと笑って、
「へへ!嘘!」
あいつはぷいと方向を変えると、
「レストランへ行こう!」
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