【第2話】『ある日から使えるようになった転移魔法が万能で生きるのが楽しくなりました』
あれから1週間が過ぎた。
朝のニュースを見ながらトーストを
ここから大学までは5キロ程
「へぇー、あの芸能人
俺はトーストをもぐもぐと食べる。焼きたてのトーストにバターの
映画の主演が発表されたようで取材に応じる姿が映し出される。
俺はコーヒーを飲みきると。
「さてと」
荷物を手にする。そして──
「よし、そろそろ行くかな」
そう言うと、次の瞬間景色が切り
「……こっちの部屋も
別に自分の部屋をけなしているわけではない。
先程までいたのが、テレビとベッドがあり、
「まあ、利用させてもらってる身だから文句は言えないけどな」
ここは部室
「授業開始5分前。うん、
スマホを取り出して時計を見る。時刻は9時5分と表示されている。先程まで家でトーストを食べていたはずなのに、何故俺がここにいるかと言うと──
「おっと。早く行かないと席が
できるだけ目立たないように
「……はぁはぁ、暑い」
大学でも体育の授業は存在する。俺が履修しているテニスの授業では、前日雨などが降ってテニスコートが使えない場合、こうしてマラソンをさせられることがある。
「にしても……今日は暑すぎるだろ」
昼過ぎということもあり、太陽が
周囲には俺と同じく、息を切らしている連中が
「
中にはこの
「そっか……。できなくはないか?」
俺は人のいない場所に移動すると、
「
小さく転移
「ぷはっー! 生き返るわぁ」
限界まで
「後はこの暑さをもう少し何とかできればなぁ……」
折り返しなので戻らなければならないのだが、こうも暑いと体力が回復しない。
「待てよ、これも何とかなるかも?」
俺は思い付いたことを
他の連中に見られないように木を背にする。そして木と背中の間に転移魔法の入り口を出現させ、その出口を大学の教室の
「ううう、生き返る」
そうすると、俺の背中から涼しい風が流れてくる。その心地よさにしばらく身を
「そろそろ戻ろうかな」
すっかり元気を取り戻した俺は、周りの人間が
あの日。俺は、他人にはない
俺が得た能力。それはいわゆる転移魔法だった。
空間を
もし、俺の能力が世間にばれると大変なことになるだろう。色んな人間に注目され、
なので、とにかくこの秘密を
この能力には
一つは自分がイメージした場所に瞬時に移動する能力。目覚めたばかりの頃に公園に一瞬で移動したのがこの力だ。これを【ワープ】と名付けた。
一つは青白い光の輪を広げて移動する能力。これを【ゲート】と名付けた。ゲートの力は俺だけではなく、他の生物なんかも
その他にも様々なことがわかった。一度の転移魔法で移動できる距離はおよそ50キロ。ゲートの大きさは自由に変えることができる。
同時に出せるゲートは全部で3つだが、目覚めた当初は一つだったことから今後も増える可能性はある。
人目に付かないように実験を
「この能力を上手く使えれば今までより楽しく生活ができるんじゃないか?」
俺はこの転移魔法を有効に使う方法を考えるのだった。
翌日、能力の検証を終えた俺はある場所を
「それじゃあこれが地図ね、
目の前には
現在、俺が訪れているのはポスティング事務所である。
先日の話だが、たまたま見ていたバイト情報誌にチラシのポスティングのバイトが
何か転移魔法を生かした仕事が無いかと考えていた俺だったが、このバイトを見た
地図を見てみるとこの辺一体の地図に投函
「わかりました。それじゃあ行ってきます」
そう言うと俺はチラシの束を
大量のチラシを持った俺はまず、人目の付かない場所へと移動するとゲートを開いて自分の家へと戻る。
「よし、早速配りに行くとするか」
そして、チラシを1束持つと地図を
「まずは北西にするか」
北西に行くにはいくつもの入り組んだ道を通らなければならない。だが、この地区には足を運ぶ価値がある。
「ここは戸数が多いから
事務所からの距離が遠くて配布の範囲の端なので、
だが、俺にとってはその程度の距離など大した問題ではない。
「早速、転移していくか」
「まずは
そう言って俺はゲートを開く。
今回開くゲートはビー玉が通るぐらいの大きさだ。
これは
そうならないために、俺は
マンションの
「ふーむ。見たところ誰もいなそうだな」
視界が動く。ゲートの出口側の位置を移動させて360度
俺は転移魔法を使っていく内に、ゲートの大きさを自由自在に調整できるようになった。そして、ゲートの出口を自分の意思で動かすことで、人気が無いことを確認する。
この二つの転移魔法の応用で、俺は他人に気取られることなく転移魔法を使うことが可能になったのだ。
周囲に人気は無い。俺はチラシを手に持つと、ゲートを消し、今度は転移魔法を使って目的の場所へと飛んだ。
「よし。無事移動
【画像】
俺は何気ない顔をして建物の裏手から出ると、見上げ切れないばかりのタワーマンションが目に映る。
駅に直結しているので交通の便が良く、高層ともなると同じ高さに存在する建造物は数件のマンションの他はスカイタワーのみ。
そういった好条件のせいか、住める人間は限られているのか、集合ポストが設置されているのでポスティング効率が非常に良い。
マンションに入っていくと同業なのか、ポスティングをしている人がチラホラいる。この時間帯は買い物帰りの主婦がポストをチェックして回収していくのでチラシの効果が高いという話だからだろう。
俺は軽く頭を下げると
あっという間に手持ちのチラシを配り終える。追加分を取りにアパートに
その様を見ながら俺は建物のかげに移動すると、
「普通ならあのぐらい大変なんだろうな」
同業者への同情をするのだった。
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