第3話「兄編 カフェYasaka」


「店主のモノローグ」


 小さい頃、祖父から言われた言葉をよく覚えている。

「お前は親父に似て誰よりも優しい。優しいが故に、人一倍泣いてしまうかもしれない。でも忘れては行けないよ。妹弟たちを守れるのはお前だけだということを。お前は兄姉弟妹(よにん)の中で、誰よりも丈夫だということを。泣こうが喚こうが、決して倒れては行けないよ。兄姉弟妹を守り繋ぎ止めるのは、お前の役目なのだから」

 これを言うとき、祖父は決まってバツが悪そうな顔をしていた。きっと、僕にプレッシャーを与えてるんじゃないか、と思っていたのかもしれない。

 けれど、この言葉は僕にとって悪いものではなかった。むしろ、僕を勇気づけてくれる魔法のようなものに思えた。

 今はもう、バツが悪そうな顔で話す祖父の顔は見れない。

 ただそれでも、僕は真っ直ぐ前を見据える。

 兄姉弟妹かぞくを繋ぎ、守るために。

 そして、祖父が遺してくれたこの店を続けて行くためにも。

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兄姉弟妹! 三久田ウドン @mikutan007

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