第9話

 少し経ってヨロヨロとトイレから出てきたエマはグッタリと椅子に座り、途端マサヤは エマに駆け寄って心配そうに背中を擦っている。

 「吐ききってくれたわ!!」

 思ったより元気そうでなにより。

 「で、どーしたんだよ?」

 そんな爽快に吐くってんだから余程の事があったんだよな?しかもその理由は自分で説明するって言ってたんだから原因は自分でちゃんと分かってるんだろう。だったら聞くさ。

 「うぬ、うぉれは懐妊したぁ!」

 へ?

 か、懐妊って、そんな全力疾走で言う台詞か!大声上げて大丈夫なのかよ。

 「うぉれは母親だぁぁぁ!!」

 いや、だから叫ぶなっての!

 「落ち着けよ、大声って良くねーんじゃねーのかよ」

 「ふはははは!!うぉまえ!うぉれが何処で働いてると思っている!!」

 そりゃ医療現場って分かってますけど!あ、つまりもう安全な安定期に入ってるとか?だったら大丈夫……いやいや、さっきのリバースは悪阻、だよな?それってまだ安定期に入ってないっぽくないか?

 ま、まぁ……医療現場で働いてる本人が大丈夫ってやってる事なんだから大丈夫なんだろうと納得しよう。

 「で、父親は?」

 「あー、俺なんだけど……」

 子供の父親を聞いてエマの後ろに立っていたマサヤが手を上げながらそう主張した。

 うわ~まじかよ……。

 う~わ……まじですか……。

 「我ら、結婚する事と相成った。式は上げぬ故、今うぉまえが歓迎いたせ」

 急展開過ぎるっ!

 一目惚れした挙句記録的スピードで失恋した果てに結婚するから歓迎しろとな!?

 ありえねぇ…一般常識的に考えてありえねぇ。

 エンディングを急ぎ過ぎてる物語だってもうちょっとは段階を踏むだろ!

 「ただいま~」

 そこへヤエが帰って来てグッタリとしているエマの後ろに立っているマサヤに一言。

 「あ、久しぶり~なになに?引っ越ししてきたの?」

 勝手に話を飛躍的に進めんじゃねぇよ!

 「ヤエ久しぶりー俺18になったから正式に結婚しようって」

 18って若っ!

 ヤエとは既に面識があるらしいし、引越ししてきたー?って台詞が出るんだから結婚するって所も知ってたって事か……。

 だから展開が速いっての!

 もうちょっとは傷心タイムくれよ!

 傷心タイムってなんだよ!

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