第6話
「あ、あの……」
用意されていた朝食に気付かない振りして食パンを食べてると、タケと一緒に降りてきたリョウが俺から3歩程離れた所から話し掛けてきた。
朝ヤエと喋っていた時よりも更に小声で。
年上なんだからここは普通に敬語か、それとも一応家族なんだぞってアピールの為にタメ口か?
それとも無視……は流石に子供過ぎる。
気分はタケの友達?
いや、実際は夫?嫁?
どっちが嫁ですかーなんて、軽々しく聞いては駄目な話題だろうし、それ以前に朝からする話じゃない。だったら辺り触りなく敬語で良いだろう……って、なんでこんな気ぃ使わなきゃなんねーんだぁ!
「なに?……ですか?」
がっつりタメ口で返事してしまったのを、非常に苦しく誤魔化した。
「冷蔵庫、の中……弁当作ったから……えっと……」
何故そんなにテンパってんだよ!俺年下だし、高校1年だし!タケと同い年なんだろ?だったら堂々と「弁当作ってやったぞー有難く持って行けー」ってなテンションで言えば良いじゃねーかよ!なーんでそーモジモジモジモジとー!
いつまでも無言でいると、タケがリョウの隣に現れ低い声で一言。
「シュンイチタロウ」
無表情怖っ!
「んだよ」
チキンな俺はここで視線を完全に食パンに移したのでありましたとさ。ちゃんちゃん♪
「弁当作ったから……食べて……ね?」
ね?と来ましたか、ね?と!
改めてリョウを見ると、右手で自分の胸倉掴んでて心配そうな表情で俺を見ていた。で、思ったんだけど……タケはバイだったんだから恋愛対象はノーマルに比べると多少なりとも広かった筈。んで、最終的にコイツになった。
で、何処に惹かれたんだよ兄よ!
余程のチャームポイントが存在してる?
性格が良いとか?
容姿は華奢で色白、顔もまあまあ綺麗……そんでもこれ位の容姿の男なんざゴロンゴロンいるだろ?
まぁ、昨日いきなり家族ですよーって紹介されて、早速全員分の弁当を作るってんだから良い人……と言うより……思い切った性格?
「うぉまえらぁぁぁ遅刻だぁぞぉ~!」
部屋から出てきたのはエマで、久しぶりに独特な喋り口調を聞けた。
エマの一人称は「うぉれ」で、人の事は「うぉまえ」と言う。ヤエと台詞が被らないのもエマの独特な口調のせいなんだと今更。
だって昨日かなり普通に「そっちの子は?」なんて言ってたからすっかり忘れてたと言うか……家での会話のなさに少々の笑いが。
じゃない、遅刻する!
「エマ姉ぇ!冷蔵庫ん中に弁当入ってるってさ~」
あ、あれ?
なんで俺がそんな事を言う必要があったんだよ。しかも遅刻位で急いでる構図は昨日までの俺ならありえなくないか?
ふと立ち止まって振り返るも、大学とは逆方向にある高校に走ってた俺の目にあの夫婦?が見える訳もなく、しっかりと持って来てしまった弁当を近所の公園で食してから登校した。
こんな愛妻弁当丸出しな弁当を学校で開けなくて良かったと心底思いながら。
ハート型の海苔はナイわぁ~……。
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