第4話
2階のタケの部屋に入ると、もう1人見知らぬ顔の男が1人緊張した面持ちで行儀良く座っていた。
男は、俺達3人を確認すると顔面の筋肉がものの見事に引き攣った笑顔を作って見せた。
こんなぎこちない笑顔なら、無表情で居られた方がまだマシだっただろう。
「俺、ジャーナリストになるから。内定、決まったし」
あ、えっと……大学卒業を控えたこんな時期、将来についての説明は大事だとは思うよ?しかも内定確実だってんだから立派な勇姿に違いないんだけど、隣の奴の説明は?
「そっちの子は?」
「貴方、名前は?」
普通、双子キャラといえば言葉を発するタイミングが同じで、しかも言葉も同じというのが相場で決まってる筈なのに、この双子の着眼点は微妙にズレているのか、台詞の被りは昔からほぼない。
「……リョウ。これから一緒に住むから」
唐突過ぎる!
「どういう意味だよ」
俺が驚きで詳しい説明を聞こうとしてる中、エマは疲労がピークに達したらしく「寝るわ」と一言。自分の部屋に向かって階段を降りて行った。
この短時間の間に新しい情報がかなり沢山あったと思うんだけど、それにも打ち勝てるほどの疲労なら、確かに寝た方が良さそうだ。
「リョウとは、俺達の両親と似たような関係だ」
はい?
あのさ、高校生である俺の方が色々とややこしい事件とか問題とか起こすのが普通の家庭としては正解なんじゃないのか?なのに、こんなインパクトのある事を起こされたら、後から何をしようが薄いんですけど?
だからって必死になって問題を起こす程熱くなるのも可笑しい訳で……。
「出会いの切欠は~?テカ!そっち系って気付かなかったんだけど~?」
ヤエ、全力で茶化す方向で行くのか、それで良いのか?
「初めて会ったのは学校。そっち系もなにも、俺は元々バイだ」
初めて知ったし!堂々宣言って男前過ぎるし!
この姉弟、俺の感情置いて行き過ぎだわ……。
ヤエを2階に残したまま俺は早々に自室に戻った。
これから一緒に住む事になるとは言われても、実質他人が2階にいるんだからギターを弾くって気分にもなれずに普段なら無視する宿題に目を通し、だからと言って問題を解いてる訳ではなく、ただただ考え事。
タケが、元々バイだ。との堂々宣言がどうも自分の中で引っかかる。
俺はこれまでギターばっかりで恋愛を意識した事がない。
まぁ、今現在興味があるのは恋愛よりもギターなんだからどうしようもない。そう思って言葉をかき消しても浮かんでくるのはどういう事か……。
タケが余りにも何でもなさそうに発声した事への衝撃だと納得しよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます