第3話

 両親のいない我が家では、ヤエとエマが家の決まり事を色々作っていて、その中には門限という項目もあった。

 こういうと他にも細かいルールがあるように思われるのだろうけど、門限以外のあるのは「犯罪行為はしない」だの「ゴミの分別はする事」だの「無断外泊禁止」だの、その程度の当たり前な項目だけ。

 ちなみに、犯罪行為を働いた時は容赦なくヤエにより逮捕される事になっている。

 厳しいのか緩いのかよく分からないルールの元、高校生の俺に下された門限は、夜10時。

 そんな俺が学校から帰ってやる事と言えば宿題。

 ではなくて、ギターを弾く事。

 学校での友達作りに失敗した俺は、悪天候以外の日にはギター片手に近所の公園へ行き、大空の下で練習に励んでいる。

 タケの門限は何時なのかは知らないが、俺が帰宅する頃にはいつも家にいて、チェスや執筆、果ては機械弄りといった多彩な趣味を謳歌していた。

 ヤエも仕事から帰るなり趣味の絵を描く為キャンパス前から離れず、俺は俺で帰ってもギターの練習。

 エマだけ無趣味なのか?と言われたらそうでもなく、エマもタケの影響を受けて執筆し実費出版してネット販売している……らしい。

 こんな個々が趣味に突き進んだ家族構成、食事の時間はもちろんバラバラで寝る時間もバラバラ。

 両親がいなくなって空いた部屋にエマが移動した事で1人1部屋というのだから、兄弟4人暮らしと言うよりも4人のシェアー生活と言った方がしっくりくる。

 兄弟間の会話なんてほとんどないし、家に限ると俺はこの1週間声を発していない。

 独り言や「よっこいしょ」の類も誰の口からも出ずに無言。

 ただ、執筆作業中のキーボードを叩く音、絵を描く筆の音、俺が出すギターの音で五月蝿くはある。

 そんな生活が続いたある日、2階の部屋を占領して使っていた兄、タケが全員を2階に呼んだ。

 「ちょっと集まってくれ」

 しばらく聞かない間にタケの声は落ち着いた大人の声になっていた。

 階段を上がろうと部屋から出ると、同じように階段を上る2人の姉もいて、2人は同じ顔で同じように顔を見合わせて首を傾げている。

 ただエマは仕事上なのか、徹夜して執筆していたのか、その両方なのか、寝不足による疲労感を惜しみなく醸し出していた。

 我が家のルールに「就寝時間」もしくは「睡眠時間」の項目が必要になる日も遠くないだろう。

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