第19話 最終決戦!!
かなりのダメージを負っている伯爵は飛行速度が遅くなっている為、拓人との距離はみるみる近くなってくる。
やがて伯爵の姿が肉眼で見えてきたとき拓人はさらにスピードを上げて詰め寄る。
伯爵は背後の気配を感じ取り確認すると、拓人がこちらに向かってきているので、このまま振り切れないと思った伯爵は急停止し、迎え撃つ体制に入った。
「貴様! 空も飛べるのか!?」
「ああ。伯爵! ここで決着を付けよう!」
拓人の鋼をも超える拳を伯爵の顔面を捉えると同時に伯爵も負けじと拓人にきつい一発を顔面に入れる。
お互いひるみはしたが、伯爵の方がややダメージが入り、気を失いかけそうになっていた。
その隙に拓人は鋭い蹴りを脇腹に入れようとしたが、間一髪それを防ぎ伯爵は距離を離す。
わずか十分しか飛行ができない為、拓人は内心焦り出す。
伯爵がそのまま翼を広げて拓人に接近するが、拓人も伯爵に向かって突進する。
伯爵の考えた予想通り覚醒した拓人が突っ込んで来た瞬間、両肩を掴み身動きを封じた。
伯爵はゼロ距離で口から妖力の溜めたエネルギー波を拓人に解き放つ。
その勢いで拓人は吹き飛ばされそうにはなったが、何とか気合いで耐えた。
自身の焦りが仇となった拓人に伯爵は痛快な面持ちで見つめている。
「どうした? 私を阻止すると言っておきながら、このザマとは無様だな」
「くそ! まだこんな隠し技を持っていたなんて!?」
「今ここで貴様を排除しなければ後々厄介なになりそうだから、ここで排除してやる! 死ね!」
伯爵は鋭い爪で拓人に斬りかかろうとした時、伯爵に向けて激しい銃撃が打ち込まれた。
拓人の周りには十機ほど囲む自衛隊の戦闘ヘリが援護しにやってきたのだ。
「そこの坊主。俺たち第一空挺部隊が援護してやる! この場から離れろ!」
戦闘ヘリの操縦しているパイロットが無線で語り出した。
「おのれ~、次から次へと目障りなゴキブリどもめ~!」
伯爵に向けて頭部のガトリングガンを四機の戦闘ヘリが打ち放つ。
素早く攻撃をかわし、伯爵は目の前にいた一機の戦闘ヘリの懐に入る。
「図体がデカいゴミの塊が!」
伯爵は鋭い爪を振り下ろし、戦闘ヘリのフロントガラスが割れ、そのまま操縦士の喉元を貫いた。
近くにいたもう一台の戦闘ヘリは咄嗟に伯爵に向けて両脇に配備したミサイルを発射させ勢いよく爆発した。
「やったのか……」
無線からこぼれた操縦士の声が聞こえた途端、煙が立ち籠もる中から勢いよく伯爵が飛びだしてきて、撃墜させた一機と同じように攻撃してきた戦闘ヘリをあっけなく撃墜させた。
残り二機。このままでは勝ち目がないと思った時、向こうから何かが飛んでくる音が聞こえてくる。
暗闇だが拓人は吸血鬼の為、目が良く目をこらしてみると、こっちに向かってくる物体は何とワクチンを搭載した弾道ミサイルだった。
待ちに待ったミサイルに拓人は大声を上げて残りの戦闘ヘリに避難するように告げた。
「今すぐこの場から離れてください!」
「坊主はどうするんだ!?」
「俺は伯爵をこの場で引き止めて起きますから、急いでください!」
「君一人じゃ危険すぎる!」
「大丈夫です! こう見えても俺は吸血鬼ですよ!」
しばらく操縦士は何かを考えていた。
「……わかった。後は君に任せる。力になれない我ら自衛隊を許してくれ」
そう言い放ち、二機の戦闘ヘリは急いでこの場から撤退した。
この場にいるのは伯爵と拓人の二人だけ、戦局では伯爵の方が有利に見える。
「この状況で君に何ができるというのだ?
諦めて投降したら、特別に私の側近とさせてやっても良いぞ」
手を差しのばす伯爵に向けて拓人は鼻で笑う。
「フッ、ごめんだね。なんせお前はここで死ぬのだからな」
「なに!?」
拓人は最後の力を使って勢いよく伯爵の背後に回り、背中に覆い被せるようにした。
「離せ! 貴様、何をするつもりだ!?」
「見てわからないのかよ。俺とここで自滅するんだよ」
すると近くから
「なんだと!? 早く離せ! 貴様だってただではすまされないんだぞ!」
「別に言いさ。地球が救われるなら本望だよ」
ポケットから鳴り響くスマホを取り出して耳を傾ける。
着信相手は
「拓人。もうすぐ五分になるが、そちらの状態はどうなっている!?」
「伯爵の身動きを取れなくした。急いでC4を起爆してくれ!」
「お前は非難できたのか!?」
「ああ。爆破に巻き込まれないように非難している。だから早く起爆してくれ!」
「わかった! 起爆をする!」
ミサイルが目の前に来たと同時にスマホからの通話が切れた瞬間ミサイルが勢いよく空中爆発が起きた。
物凄い爆発雲が起こり、ワクチンが空中から地上に向けて
愛萌たちがいる施設内でも爆発音が聞こえきた為、第一任務が完了したがもう一つ施設内の時限爆弾の事が気になる。
〈時限爆弾の解除が実行されました。〉
「やった。施設の爆破は免れたな……」
愛萌と
「そうだ拓人君とは連絡は取れたのですか?」
「ああ。そうだった」
拓人に着信をするが、応答がない。
何度もかけ直すが留守番サービスに繋がってしまう。
二人は湧き上がる不安が募る。
急いで地下施設から上がり倉庫に戻ると、多数のレンジャーがこちらに向かってきた。
「援軍を連れてきたぞ」
先頭にいたのはレンジャー部隊の
「隊長その腕は!?」
「ああ、これか不意を突かれてな。まだまだ私も未熟だってことだな」
失った腕を見せびらかすように苦笑しながら大吾は語る。
「伯爵以外の吸血鬼達はどうなったのですか!?」
今まで鳴り止まなかった激しい銃声が、今は嘘のように
「それが我々レンジャー部隊は吸血鬼達の勢力に押されていたのだが突然、空から雨が降り出して吸血鬼達が元の人間に戻ったのだよ。その時、運良く援軍部隊が到着してな。一気に吸血鬼どもを
「これで平和が戻った、と言うことか」
愛萌はホッと一息つ気ながらレンジャー部隊と一緒に施設に出ると――そこには警察や自衛隊などが元吸血鬼だった人間達を拘束していた。
だが、そこには拓人の姿はなかった。
「拓人はどうしたんだ!?」
大吾は少し間をあけた後、口を開いた。
「拓人君を援護しにいった攻撃ヘリのパイロットが私に報告があったのだが、伯爵と一緒にミサイルの巻き添えになったと……」
「……そんな」
愛萌は、その場から崩れ落ちた。
岬は優しく愛萌の肩に触るが、何と言葉を返していいか正直迷っていた。
「今は爆発が起こった場所を部下達が捜索している。それと
「そういえばいつの間にか私たちの前からいなくなったのだろう?」
岬と大吾は辺りを見渡したが、世宇主の姿はどこにもなかった。
「とにかく、拓人君の発見を急がないと、少尉は愛萌さんの事を頼んだぞ」
「レンジャー!」
大吾はこの場を去り、ミサイルの爆発現場に向かった。
放心状態になっている愛萌を解放しながら拓人の心配をする岬であった。
後日。ミサイルの残骸は運良く自衛隊と警察の市民を非難させたおかげて怪我人はなく、建物の破損だけですみ、マスコミにはどこかの国がミサイルを飛ばしてきたなどテロ報道をしていたが、国ではそれを否定し新型戦闘機の実験機が空中分解した、ときわどい言い訳で国民に説明をすると、自衛隊に激しい批判を受けてしまい、早くこの騒動が国民達から忘れられることを政府は願っていた。
吸血鬼達の事件の騒動から一週間が過ぎた頃、拓人の消息が未だ見つかっていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます