第17話 晩餐会襲撃!!
敷地外は今、戦場と変わった。
「何事だ!」
「ジュラキ様、侵入者です!」
「ほう……ここにゴキブリが侵入していたとは」
施設外の見張りが慌ただしい表情を浮かべながら大声で叫ぶ。
「施設外の警備員から報告で、施設内に侵入されたの事です」
「そうか。まさか優秀な中級の吸血鬼のみの編成でいけると思っていたのだがな……。まあ、いい。――全ての吸血鬼達に伝え、急ぎ
「了解しました」
会場の幹部たちがざわつき始める中、ジュラキ伯爵は冷静に周りにいた部下たちを集めて情報報告を確認する。
幹部達と話し合いをしている隙に、いきなり
「今のうちに地下施設に行くぞ、
「わかった先生! 案内する!」
愛萌の合図で施設内を知っている拓人を先頭に
会場内の扉を開けるとそこはまるでテレビや映画で見るような戦場の世界のようだった。
やられている吸血鬼もいれば負傷して援護を呼んでいる兵士達もいる。
その場で足をすくみそうになったが、愛萌が強引に拓人の腕を引っ張る。
「なにボッと突っ立ているんだ! 早く場所を案内しろ!」
愛萌はこの戦場に目もくれず拓人に案内をさせる。
我に返った拓人は吸血鬼達と兵士達の戦闘に巻き込まれないように身を低くしながら全力で走っていく。
地下に向かう階段の前に三人のレンジャー部隊が拓人たちが来るのを待っていた。
「愛萌さんご無事でなによりです!」
眼鏡をかけたインテリ系のレンジャーが愛萌たちに語る。
「ワクチンのある場所まで護衛は任せる――ん、確か護衛は五人のはずじゃ……」
愛萌の言葉で拓人も気付いた。確かに作戦だと護衛は五人のはず。
拓人はイヤな胸騒ぎがした。
三人のウチの一人、女性の兵士が口を開いて説明した。
「私たちが施設に向かう途中、残り二人は吸血鬼の攻撃をうけ……やられました」
「…………そうか、二人の為にも急いでワクチンの場所に向かうぞ!」
〈〈〈レンジャー!!〉〉〉〉
三人のレンジャーは愛萌の後一斉に復唱した。
今は仲間の死に浸ってる場合じゃないのは皆思っていた為、伯爵が来ないうちに早めに地下に向かわなければいけない。
急いで拓人は地下の階段を降りて隠し扉のある倉庫へと向かった。
「ここか!?」
「ああ。ここの奥にある木製の棚の方に扉が隠されている!」
「俺に任せろ!」
一人の金髪のレンジャーが短小銃で棚を破壊しようとした時、
「――そうさせない」
太くドスの効いた声が聞こえた瞬間、金髪の兵士の頭部だけが中に飛び跳ねた。
一瞬の出来事だった為、その場にいた者たちは何が起きたのか呑み込めないでいた。
〈吸血鬼だ!〉
愛萌の叫びで一斉に我に返り、残りのレンジャーは拓人たちの前に立ち、目の前の敵に銃を構える。
スーツ姿のスキンヘッドの体格の良い男性が拓人たちを睨み殺す。
「やめておけ。お前らが束になっても俺の相手じゃない。――だから大人しく俺の餌になれ」
この戦局はかなり厳しい状況だ。レンジャー二人だけじゃ、幹部の相手にもならない。
それに二人とも銃口がぶれるほどの震え出している。
拓人はより一層不安が
「ここは俺一人で何とかする。岬少尉はそこの三人と一緒に地下に進むんだ!」
インテリ風のレンジャーは自ら一人この場に残ると告げた。
「無茶です! 私もここに残って戦います!」
「バカやろう! お前までやられたら、誰がこの三人を守るんだ!」
「――俺もこいつを食い止めるから、あんたは拓人と姐さんの護衛を頼む」
二人の間に柳場は割って入り、
「いいのか? あいつは手強いぞ」
「俺も吸血鬼だぜ。お前よりは遙かに強いから安心しろ」
「そういうことだ岬少尉。二人を任せた!」
「……わかりました」
岬は強い眼差しで仲間のレンジャーに敬礼する。
拓人は不安のある眼差しで柳場に向けると、
「なにしらけた面しているんだよ! 俺は死なない、なんせ不死身だからな。この作戦が成功したら、一緒に飯食いに行こうぜ、拓人」
「うん……絶対だからな。約束を破るなよ!」
拓人の台詞の後に愛萌は黙って柳場を見つめていた。
「姐さん! 早く行ってください!」
「……わかった、死ぬなよ。――行くぞお前たち!」
「うん」と拓人は強く返事をする。
「了解」と岬も続けて返事をした。
岬は短小銃で木製の棚を壊して三人は隠し通路に向かった。
ワクチンの強奪、破壊をしに拓人達は地下にある施設へとかけていくのだった。
壊された棚の向こうにはさらに続く隠し階段があり拓人たちは素早く駆け下りた。
駆け下りていく途中、鳴り響いていたピタリとやむ。
だが、立ち止まるわけにはいかない。そう胸に強く思い降りていくと拓人たちは思いがけない物に目がとまる。
「これは……ミサイル!?」
「まさか、こんな都市にミサイル兵器があるとは……信じられない」
あまりの出来事に拓人はあんぐりと口を開けてしまう。
全長二十メートルは超えると思うミサイルが発射台に置かれていた。
「これを発射させたら、それこそ国同士の戦争を引き起こすかも知れません」
血の気を引いた岬は声を震えながら話す。
ミサイル圧倒されていたが、あることに気付く。
「なあ、先生。あの中に女神の涙があるんだろ?」
「――ああそうだ」
「じゃあミサイルに入っている女神の涙はどう取り出すんだ? 無理に取り出すと爆発するぞ」
ミサイルに女神の涙が入っているとしたらどう取り出すか拓人は考えていなかった。
「落ち着け。まずは施設の周りを探すんだ」
施設内は東京ドームの二個分に近い広で二十メートルをも超えるミサイルの全長の高さだ。
「ミサイルを発射させないように今のうちにC4を仕掛けておいてくれ」
「了解しました?」
急いで岬はミサイルの方まで向かおうとしていたとき、最悪な状況に陥る。
「まさかとは思うが、君がこのテロを起こしていたとはな」
「この声は――伯爵!」
階段からゆっくりと降りてきたのは吸血鬼の王ジュラキ伯爵だった。
拓人に目掛けてジュラキ伯爵は何かを投げつけてきた。
投げてきた物が拓人の足元に転がり落ち、目を向けると、全身吐き気が伴う気分になる。
「そんな……柳場……それに……隊員まで」
拓人の足元に転がっていた正体は柳場とレンジャー部隊の頭部だった。
〈よくも! 仲間を殺したなぁぁぁぁぁ!!〉
怒り狂いながら岬は見境泣く辺り一面に短小銃をばらまくように発砲する。
「やめろ! 岬さん! 落ち着くんだ!」
「お前はC4の設置を早く済ませるんだ。任務を失敗してしまったら、それこそ同士の死が無駄になるぞ」
愛萌と拓人は力尽くで岬を取り押さえた。
「仲間割れか? 哀れだな」
三人のやり取りを見たジュラキ伯爵がクスクスあざ笑う。
「とにかく岬さんはC4設置を急いでください!」
「……わかりました」
C4設置に取りかかろうとしたとき、
「黙って見過ごすと思うか?」
突然瞬間移動をしたかのように、岬の目の前にジュラキ伯爵が現れた。
岬がやられるのはマズいと思って拓人は庇うように目の前に立つ。
「何のつもりだ?」
「貴様には邪魔はさせない!」
拓人は伯爵に鋭い拳を繰り出すが、ハエでも止まったかのように防御せずに身体で受け止めた。
「邪魔だ」
「――うっ……」
「拓人!」
急にお腹に違和感と刺すよな痛みが感じ、恐る恐る確認すると、伯爵の手が自分の腹に突き刺さっていたのだ。
そのまま力尽きるように拓人は倒れる。
「これでも喰らえ!」
愛萌は胸の裏ポケットから9㎜のハンドガンを伯爵に向けて発砲した。
弾丸は伯爵の左腕にあたり勢いよく腕が弾け飛んだ。
「たかがピストルの弾がこんな威力とはな」
弾き飛ばされた腕を再生させようと伯爵はするが再生ができない。
「博士の作った対吸血鬼用の特殊な弾丸だ。当たった吸血鬼は再生を妨げるんだ」
「この女が!」
伯爵の爪が伸び鋭くまるで刀のような刃物化となり愛萌に振りかざした。
しかし、愛萌に振りかざした伯爵の腕を拓人が物凄い握力で阻止をした。
「拓人……おまえ」
「どういうことだ! 致命傷を負ったお前が何故立ってられる!?」
いつもと雰囲気が変わった拓人を見た伯爵は一瞬ひるむ。
その隙を見逃さず拓人は力一杯、伯爵の顔面を殴り飛ばした。
勢いよく吹きおとんだ伯爵は地面に這いつくばり睨み殺すように拓人を見上げる。
「まさか――覚醒したのか!?」
靄みたいな邪悪なオーラが拓人を包み、髪色や髪質も銀色の鋭い針のように長髪に変わり、まるで別人に豹変した。
「……拓人」
変わり果てた拓人の姿を見て愛萌は声を震わせながら拓人に尋ねた。
暴走し、理性も抑えることができないんじゃないか、と愛萌は思っていた。
「先生……ここは俺に任せて!」
「おまえ一人で大丈夫なのか!?」
拓人は今まで見せたこともない落ち着いた表情を愛萌に見せる。
「大丈夫。今の俺だったら伯爵に勝てる! だから今は岬さんの援護に回ってくれ」
「わかった。だが、自分の身体が変化したから、といったて油断はするなよ」
「わかってる」
愛萌は急いで岬の援護に回った。
「おのれ~。覚醒者がまさかここにも現れたなんて――しかもそれを生んだのはこの私だとは……なんたる屈辱」
自分自身を裁きたくなるように伯爵は悲観する。
「伯爵! ここでケリを付けてやる!」
吸血鬼の王と覚醒した拓人の戦いが始まる。
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