第14話 戦い前の休日
残り三日普段と変わらない生活をしていてほんとにいいのだろうか、と内心思いっていると突然部屋のドアが開いた。
誰が来たか見なくてもわかる。
「お兄ちゃん! 今日は暇でしょ。遊ぼ。暇じゃなくても遊べ~!」
「いいよ。何して遊ぶんだ?」
勢いよく急ブレーキを掛け、自分の兄に何が起きたのか、と目を大きく開けて驚いてこちらを見てくる。
「熱でもあるの?」
「はっ? 別に熱なんてないよ」
真紀奈は恐る恐る
「何だよ。勝手に人のおでこ触るな」
「……熱はないみたいだね」
何故か安心する真紀奈に俺は怪訝する。
「それじゃリビングに行くか。何かゲームでもしようぜ」
「…………う、うん」
今日の真紀奈は妙にぐいぐい攻めてこないので不思議に思う。
リビングに入り、テレビモニターの電源を付けて、ゲーム機の電源ボタンを押し起動させた。
「まずはリズムゲーやろうぜ」
「うん」
今でも人気である太鼓のリズミカルゲームを真紀奈と二人でプレイする。
勿論、難易度は
今までの真紀奈に対しての
そして自信満々に挑んだゲームに拓人は敗北した。
「うそ……だろ……」
「えへへ、お兄ちゃんに勝った」
「もう一回だ! 今のは準備運動だ!」
「いいけど、もしまた負けたら私のお願いを聞いてね」
「わかった。約束する」
次は拓人の大得意の曲を選択して、また再度、二回戦を開始。だが、結果は見えていた。
またしても敗北。大得意だったゲーム――しかも相手は妹に負けたことに悔しく床に四つん這いになって落ち込む。
「これで誰か強いかわかったでしょ。それじゃ私の願いを聞いてね」
拓也の顔が
「それで俺に何の条件を告げるんだ?」
真紀奈は嫌らしい笑みを浮かべて拓人に近づく。
「それじゃね~、私の条件は……」
耳元で吐息と一緒に呟いた真紀奈の言葉に気を失いそうな恐怖を感じた。
こうして自ら地獄に足を踏み出した一日は幕を閉じる。
次の日、俺はベッドで深い眠りに陥っていると、一瞬体が金縛りのように重くなった。
あまりに苦しく拓人は目を恐る恐る開けて見ると、そこには馬乗りになって拓人の唇に熱いキスをしようとしている。
「どけてくれ……頼むから」
「いいじゃん。おはようのキスしてあげる」
真紀奈のこめかみ鷲掴みにして握りしめた。
「あたたたたっ! ちょっ! マジで痛い!」
さすが吸血鬼の力触っているだけなのにすごい握力だ、と感心してしまう。
「次から寝込みを襲う行為はしないと約束できるか?」
「ちっ、誓いま――せん!」
少し力をいれると真紀奈は悲鳴を上げ叫ぶ。
「わかった! 約束するから!」
真紀奈のこめかみから手を離すと、そのままベッドから崩れ落ちた。
「……もう、妹に暴力なんてひどいよお兄ちゃん……」
「これは正当防衛だ。暴力は振るってない」
「今日忘れてないよね?」
「もちろんだ。今日二人でデートに行くんだろ」
「…………いや、やっぱりいいや」
まさかの発言に拓人は耳を疑う。大のお兄ちゃん大好きブラコン妹がまさかのデート拒否。
「なんだ? 熱でもあるのか?」
深いため息をつきながら真紀奈は口を開いた。
「熱があるのはお兄ちゃんの方でしょ。なんかいつもと感じが違うだけど隠し事でもあるの?」
「――べっ、別に!」
一瞬、真紀奈から目を背けるのを見逃さなかった。
「もういい! そんな状態のお兄ちゃんとデートしたってつまんない!」
怒りの態度を見せながら妹は部屋から出て行った。
まさか、妹に隠し事がバレるとは予想もしていなかった拓人であった。
食事の時間なり拓人と真紀奈や両親達と夕食を始めていた。
案の定、真紀奈は無言でハンバーグに箸をつける。
いつもなら無理矢理でも拓人の口の中におかずを入れ込もうとするのだが、今日はむしろしてこない。
「なあ、今日はお兄ちゃん。はい、あ~んってしてこないのか?」
その答えに真紀奈はジト目でこちらに冷たい視線を送ってきた
「今日はしたくない!」
そのまま夕食終えて真紀奈は自室にへと戻っていった。
拓人が何かを隠していることに気づいていると自覚はしているが、自分が吸血鬼だと告げたら真紀奈は自分のことをどう捉えてしまうのだろう、と不安で告げることをためらってしまう。
ただ、妹の真紀奈以外にも両親達も普段の様子に異変が気づいていた為、心配していた母親が口を開く。
「拓人。あなた最近体調が悪いんじゃない。顔の
「……最近貧血がひどいだけだよ。何も心配するほどじゃないよ」
あまり両親に心配させないように微笑みかけながら言葉を返した。
しかし両親は無理に表情を作ったと思い。懸念していた。
夕食を終わった拓人が自室に戻り、ベッドに仰向けになり一人で考えこんでいた。
明後日の伯爵襲撃作戦は成功するのか不安もあるし、元の人間に戻れるのか不安になりながら、そのまま深い眠りにつく拓人であった。
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