第2話 自分が吸血鬼!?
厚くふかふかの布団を剥がし、ベッドから起き上がろうとすると、激しい立ち
気分が優れない拓人は室内にある洗面所まで、点滴スタンドで体を支えながら向かい、肩幅まで見れるガガミにふと目を向けると衝撃的な現状を突き付けられる。
(なんだよ……この顔!?)
目の周りが
拓人の顔が変わり果てる前は、あまりスポーツをやらないが外で遊ぶのが好きなため、肌色がやや焼けていたハズだったのに、病人みたいに豹変してるのに深い絶望に陥った。
肌以外も上の歯が妙に引っかかりを感じていたので口を開けると
(もしかして……吸血鬼になってしまったのか!?)
拓人は鏡の前で慌てふためいていると、静寂な病室のドアががらりと開き、母親と妹の
「お兄~ちゃん!」と泣きながら拓人の胸に飛び込んでしがみついてきた。
真紀奈は男勝りの性格がある反面、外見は桜色のした爽やかな髪型に美顔で身体も顔に撒けないくらいのナイスボディ-。しかし、兄である拓人には異常なくらいベタベタするブラコンでもあった。
「泣いてくれるのは嬉しいが、ここは病室だから静かにしてくれ」
「うん。わかった……でも……もう少しこのままでいたい……」
目を真っ赤に腫らしてデカいぬいぐるみをぎゅっと抱くように力一杯締め付けられた。
苦しくなり真紀奈の身体を離そうとした両腕が急に止まり、真紀奈の首筋に浮かぶ血管に目がいく。
(吸いたい……)
喉奥が熱く
「――拓人?」
母親の声に我に返り、そのまま真紀奈を突き放した。
「痛た! 何で突き飛ばすの!?」
母親が側にいて心の底から
「――ごめん。立ちくらみがすごくて、ついつい突き飛ばしてしまった」
また吸血衝動が起きないように、目をなるべく首筋を見ないように、倒れた真紀奈を起こし上げる。
「ありがとうお兄ちゃん。立ち眩みが酷いならベッドで
「いや、自分で歩けるから大丈夫だ」
真紀奈は拓人の腕を肩に回そうとしたが、それを拒み、一人で少し千鳥足になりながらベッドの上に仰向けになった。
「なあ、俺が病院にいるって事は、通行人に発見されて通報されたのか?」
「ええ。あなたが路地裏で倒れているところを近くにいたサラリーマンが急いで救急車に通報してくてたのよ。先生から連絡が来て急いで向かってきたのよ」
「そうだったんだ。ごめんね心配かけて」
すると真紀奈はベッドの上で
「ほんとだよ昨日は一日中意識を失っていてもう……一生起きないんじゃないかと……思ったんだから……」
股ぐずり出す真紀奈を必死で拓人は宥めた。
「ほんとあんたが一日中気を失っていたせいで真紀奈が自宅で泣きじゃくり、最後には自殺未遂までしたのよ」
母親の話を聞いて拓人はさらに青ざめた。自分が思っていたブラコンとは違いヤンデレだったことに。
母親が話し終えると拓人は気になる質問をする。
「それそうと、俺以外に倒れていた人はいた?」
すると母親は頬に手を当て首を傾け。
「救急車が到着したときは、あなた以外いなかったそうよ」
まさか、と拓人は耳を疑った。
路地裏には、首から大量の血を流している女性が倒れているの目撃したはずなのに。
(もしかして倒れていた女性は目を覚ましてその場から逃走した。――いや、あの出血の量じゃ不可能だ。じゃあ、倒れていた彼女は一体、どこにいったんだ!?)
「ねぇ、お兄ちゃんさっきからなにブツブツ言っているの?」
心の中で思っていたことが口から漏れて、母親と真紀奈は不気味がる。
「何でもいない、少し疲れたからもう寝る」
「そうね。その方がいいわ、医者も過労で倒れたんだから二、三日で退院できるって言っていたから」
「……そうなんだ」
正直、過労とかの問題じゃない。
吸血鬼に襲われ自分も吸血鬼にされた、なんて言っても信じてくれないに決まってる。
「それじゃ、私たちは帰るね。ちゃんと先生の言うこと聞いてしっかり安静にしてるのよ」
「わかったよ。二人とも気をつけて」
「私はお兄ちゃんの隣で添い寝する」
「ダメよ。すぐ会えるんだから今日は私と帰りなさい」
「え~、お兄ちゃんは可愛い妹にいて欲しいよね?」
子猫のように頬をスリスリする真紀奈をゴミのようにあしらう。
「俺に可愛い妹なんていない――ワガママな妹がいるけどな」
「ウキー! お兄ちゃんのバカ!」
「ワガママじゃなくって、お猿さんの妹だな」
猿みたいな奇声を上げる妹をおちょくると、不機嫌な顔をしながら母親と病室から出て行った。
いつも妹には優しい拓人だったが、吸血鬼化しているので側にいられると危険だと感じたからだ。
かわいそうなことをしたと少しは罪悪感が募り真紀奈と兄妹仲が悪くならなければいいな、と思う。
そのためには、早く人間に戻らないと人を襲うことになる、と思った拓人は、こういうオカルトに詳しく研究をしている人物に相談することにした。
オーバーテーブルに置いているスマホを取り、連絡をする。
『やあ、
スマホのスピーカーから大人びた女性の声が聞こえた。
「
『ほほう。拓人から吸血鬼の話しが出てくるとは珍しいな。いつもならウザそーにシカトしていたのに、もしかして妖怪にでもばけたのか?』
「冗談でもそういうことは言うなよ」
今の拓人はオカルト的なジョークは一切通用しない。なんせ自分は吸血鬼なのだから。
『ん? 反応がおかしいな。何かあったのか? もしかして吸血鬼の事で聞きたいことがあると言っていたが、そのことと関係があるのか?』
「そうなんだ。実は……」
昨日の吸血鬼事件のことを詳しく話し、しかも拓人が吸血鬼になってしまったことも話す。
『なに! 吸血鬼になったのだと!? それは本当なのだろうな。嘘でした、なんて今更言ったら人体実験するからな』
「嘘はついてないし、本気で悩んでいるんだ」
しばらく沈黙が続くと愛萌が口を開いた。
「わかった。今すぐ拓人が入院している病院に行く」
そう言って拓人ととの通話が終わった。
その専門の分野に関わる人物と交流している事に初めて得をしたと思った。
オカルト大好きの愛萌が来るまでの間、拓人はベッド上でしばらく
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