バンパイア
関口 ジュリエッタ
第1章 吸血鬼化
第1話 吸血鬼の王現る!
陽が沈み都内のビルや街頭がイルミネーションのように明るく夜道を照らしているなか、高校二年生の
塾から帰路につく時は、この路地を通ると自宅の近道になる。そのため、拓人が大好きな恋愛ドラマが放送五分前に自宅へ着けるのだ。
今回は浮気した彼氏の自宅に彼女が侵入して、証拠を見つけようと部屋を物色してると突然ドアが開き、彼氏が帰ってきたハラハラする展開で終わったため、拓人は来週まで首を長くして待った。
今夜、その気になるドラマの続きが放送されるため、気持ちを高ぶりながら歩く。
「……うう……ううう……だれ……か」
「なんだ?」
近くから
まさかこの世には存在してはいけない幽霊では、と背筋がぞわっとし出す。
辺りが暗い事もあって拓人は声のする方へと勇気を振り絞って恐る恐る歩み寄る。
一歩一歩脚をガクブルに震わせ――そして目が暗闇になれたとき、拓人は目の前の光景を見て全身に流れる血の気が引いた。
目の前には、血まみれの女性が首を押さえて壁にもたれていたのだ。
腰を抜かしそうになったが、何とか立て直した。
「……って、……っすけて、……ねが……い」
俺の姿を見つけ、苦しそうにこちらに助けを求めてくる。
やな予感がしたがまさか殺人事件に巻き込まれるなんて一層お化けや妖怪に出くわした方がお借ったと本気で思った。
だが見捨てるわけに行かないので、急いで彼女の方に歩み寄る。
「大丈夫ですか!? 今救急車と警察を呼びますから!」
咄嗟にポケットからスマホを取り出して、救急隊を呼ぼうとしたとき、――突然背後に何者かの気配を感じた。
背後から感じる冷たく鋭い殺気が拓人の身体を切り刻む。
「まさか目撃者がいたとは……」
若い男性の低い声が聞こえ、拓人は恐怖の余り身がすくんでしまう。
咄嗟に悲鳴を上げて、周りの人に助けを呼ぶのもできる。もしくは重傷の女性を置き去りにしてこの場から逃げることもできる。
なのにできない。
「俺は男の血液は興味は無い。だから貴様はここで殺す」
相手の殺すという鋭い言葉が、拓人の心にグサリと突き刺り、額の汗が尋常じゃないほどの冷や汗が流れ落ちる。
「…………」
「私にシカトしているのか? それとも恐怖のあまり声も出ないのか?」
殺人鬼の言うとおり、今の拓人は殺人鬼に怯えて口が硬直している。だが、どうせ死ぬなら逃げずに戦おうと拳を強く握リ絞める。
「断じてお前なんか怖くない。おまえみたいなちっぽけな殺人鬼なんか、ひとひねりで倒せる」
「そういうわりには足が震えているぞ」
「この震えは、武者震いだ!」
「はっはははは! そうか武者震いか。それに私に恐怖しないか――面白い人間だ」
殺人鬼の人間という言葉に引っかかりがあり、拓人は恐る恐る踵を返すと、先ほど自分は人間ではないような台詞を吐く理由がわかった。
漆黒の夕闇で
先ほど幽霊や妖怪に出くわした方がマシだったと口ずさんだが、実際に出くわすと恐怖で身体が氷山みたいにガチガチになる。
自分の考えが二回三回変わっているが、今はそんな事考えている場合ではない。
一応人間かどうか試しに確認することにした。
「あんた……一体何物なんだ」
「私は全ての闇を支配する吸血鬼の王、ジュラキ
「吸血鬼!?」
まさかの台詞に拓人は狐に化かされたように、その場で立ち尽くす。
「そうだ。だから――」
その瞬間、吸血鬼の王と名乗るジュラキ伯爵は、目の前から瞬時に消えた。
拓人は呆気に取られていると、急に何者かに髪の毛を捕まれた。
「……一体……何が……」
目の前にいたジュラキ伯爵は、急に拓人の背後に移動して首の
必死に身体を突き放そうとするが、相手の化け物染みた力の前では無理だった。むしろ
満足したのか、ジュラキ伯爵は拓人を突き飛ばした。
うつ伏せになる拓人に不気味な笑みを浮かべながらジュラキ伯爵は口を開いた。
「お前の血管に私の血液を流した。これでお前は私の下僕だ」
じんじんと痛みがある首筋を手で抑え、ふらつきながら立ち上がる。
「ふざけるな! 勝手におまえの下僕にするな!」
「いや、おまえは段々人間の流れる血液に飢え、やがて人を襲うようになってくる。――そろそろ身体も変化してくるはずだ」
段々マグマの中に入るかのように、拓人の身体が焼けるように熱くなっていく。
甲高い悲鳴を上げ燃え上がるような痛みに歯を食いしばって必至に耐える。
「――なんだ……身体が……熱い……」
伯爵は俺の藻掻き苦しむ姿を薄笑いをして眺め口を開く。
「その苦しみや痛みは急激に身体の組織が組み替えられているからだ。安心しろ、じきに楽になる」
「……ふざけるな……こんなことして……タダですむと……思うなよ……」
身体の不快感が徐々に脳に伝わり吐き気が強く感じてくる。
拓人の身体が徐々に組織細胞が人間と異なる新しい細胞へと急激に変化してることのによって身体がとてつもなく負担がきているからだ。
意識が遠のいてくる。やがて視界が闇に包まれ、拓人はそこで意識を失った。
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