第7話 くだらん
「くだらーん」谷井が叫ぶ。
「どうした?なんなんだ?」
「役者が不倫しただと!くだらん」
「でもお前だって、くだらんとか叫んでるけど、けっこう喜んでるだろ?」
「ふん!私には大事なものがあるのだ。つまらんものには関わってられんのだよ」
「でも、お前の言ったりやったりしてることは、大体どーでもいいことのような気がするけどな」
「そこが素人の赤坂見附!」
「お前、いつの時代の人間なんだ?そんな言い回し、今は誰も知らんぞ」
「お前は知ってるじゃないか?誰も知らない何てことはないということは、今、証明されたぞ」
「わかったよ。で、役者が不倫したことを世間が騒いでいるのがくだらんと言ってるのか?」
「いや、まあ人にはそれぞれ事情があるからな。一概には言えん」
「訳わからん。じゃ何がくだらないんだ?」
「人類はどうなるんだ?」
「急にすごいことを言い出したな。役者の不倫はどうした?」
「人類の未来を考えるときに、そのようなことはどうでもよい」
「どうでもよいって、お前が言い出したんだろうが」
「人のせいにしてはいかんな」
「さすがに怒るぞ。何がくだらないんだ?」
「くだらないと思わないのか?人類なんて何も進歩してないじゃないか。核兵器は無くならない、人種差別も無くならない。そういうことはいけませんというお題目をいつまで唱え続けるつもりなんだ?」
「そういうことは諦めずに言い続けることが大事だと思うけど。言い続けなきゃ実現しないだろ」
「言い続けるのは結構だが、核兵器を廃棄した国があるか?どの国も軍事力なんか増やしてばかりじゃないか。もう駄目だ。人類は滅亡するしかない」
「極論過ぎるぞ。希望は捨ててはいけない」
「何が希望だ。この間、公園でペットボトルの水でうがいして、花壇に吐き出していた親父がいたぞ!そんな奴がいるのに希望なんか持てるか!」
「話が飛び過ぎだ。なんでそんな親父が出てくるんだ?」
「見たのだ!恐ろしい愚行ではないか!そう思わんのか」
「やっちゃいけないことだとは思うけど、人類の滅亡までいくか?」
「ああ、情けない。一事が万事。こういうところから人類の滅亡は始まるのだ。人類に希望はあるか?歩きタバコはやめない。歩きスマホもやめない。駆け込み乗車もやめない。馬鹿ばかりではないか!どこに希望があるんだ?中国もアメリカも喧嘩したくて仕方ないようじゃないか?北朝鮮は核兵器を保有したじゃないか?イスラエルは常に戦闘状態にあるじゃないか?ロシアは大統領に逆らったら殺されちゃうじゃないか?日本は与党も野党もへんちくりんな奴ばかりじゃないか?どこに希望があるんだ?言ってみやがれ!!」
「確かに良くないとこはあると思うけど、いい人もたくさんいると思うよ」
「たくさん?どこに?何人?」
「子供か!」
「大体こんなことを話してることがくだらん」
そいつは谷井保治という Aba・June @pupaju
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