第4話 お金を儲ける
「お金が欲しい。ほしーい!」谷井が叫ぶ。
「何かお金が必要なことがあるのか?」僕は尋ねる。
「お金は必要に決まっているだろうが!お前は金が要らないのか?欲しいだろう。物欲しそうな卑しい顔をしてるぞ」
「金の欲しいと叫んでいる奴にそんなことは言われたくないな」
「ふん!きれいごと言いやがって。金はいらないという奴を知っているか?口では金ではない。金では買えないものがある。金より価値があるものがある、なんて言ってる奴はいるが、そういう奴もいざとなれば、尻の穴から手を出してでも金を掴もうとするに決まっているのだ!」
「まあ、金の亡者というような奴はいるな」
「いやいや、みーんな、金に支配されておるのだ。一番哀れなのは支配されているのに、それに気がつかない奴隷どもなのだ。お前もそうだ!では聞くがお前金はいらないのか?」
「金がないと生活に困るから、お金は要る」
「ほらみろ。金に支配されているじゃないか!」
「支配じゃないよ。生きていくのに必要なお金はいる、と言ってるだけだ」
「生きるためだと!じゃあお前は何のために生きているんだ?金を稼ぐためなんじゃないか?」
「だから、お金稼がないと何もできないだろ?」
「なら、金に支配されていることになるだろう。金を稼ぐために生きているんだから」
「そうじゃないよ。生きるなら、少しでも快適に生きたいじゃないか」
「快適!快適!馬鹿丸出しだな。タワーマンションにでも住むのか?豪邸とかいうものを建てるのか?高級な家具でも買うのか?ブランドの服着て、バッグ持つのか?たか~い腕時計して、高級車に乗るのか?VIPルームで飯食うのか?なーにを言っておるのだ、この糞袋が!」
「何だ?糞袋って?」
「本当に馬鹿だな。人間、口と肛門は管で繋がっていて、その管には糞が詰まっている。それを皮で包み込んでいるのが人間、つまり糞袋だ。糞を包んだ袋が高級だの、快適だの抜かすな。糞であることを自覚せんか!」
「そんなにひどく言わなくてもいいじゃないか。人それぞれ何をしようと自由だろう。お前がつべこべ言う必要はないと思うが」
「そりゃそうだ。人間は自由だ。自由だからこそ何をするのかが問題なのじゃ」
「「なのじゃ」って年寄り臭いな。というより坊さんみたいだな」
「なんとでも言うがよい。じゃ聞くがな、今、なんでお前はここで生きてるんだ?」
「はあ?」
「はあ?じゃない。は、は、はのはあとか言ってる場合か!」
「はあ、としか言ってないけどね。生きてるんだからしょうがないだろ?死にたくはないし」
「死なずに何するんだ?」
「お前、俺に死ねってのか?」
「そんなこと言っとらん!馬鹿だな、ほんとに。死ぬときゃ、お前が「生きたい!生きたい!」って叫んだって死んじまう。車にはね飛ばされりゃ、叫ぶ暇さえなく死んじまう。だから、生きているとき何するんだって聞いてるんだ」
「うーむ。妙に難しいことを言い出したな。そう言われると、特にやりたいことはない」
「うわわわわ。やりたいことがないだと!」
「すまん。面目ない。でも、谷井よ、お前は何のために生きてるんだ?」
「つくづく馬鹿だな、お前は」
「馬鹿でいいよ。お前は何のために生きてるんだ?」
「そんなこと考えてる暇はなーい!生きてんだから、それでいいだろ!ただ生きてりゃいいんだ」
「じゃ、これまでの話はなんだったんだ?」
「わかりませんっ!」
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