はじめての撮影会

「お嬢様~!こっちです!こっちを向いて!!」

「お嬢様かわいいです!最高!美少女!!」

「はい!5分経過です!交代してください!」


カメラを持ったメイドたちが入れ替わり立ち代わりながらシャッターを切っている。

最初は3人のメイドが撮影をしてくれていたが、今や10人近くのメイドたちがそれぞれに

役割を分担しながらの大掛かりな撮影会になってしまった。


レフ板などを持つ者、2人1組でアシストしながら撮るもの、

はては時間の計測をする者までいる。

あとは、潮風で少し崩れた化粧や髪を直してくれる者とか。


さきほどまでビーチや海で遊んでいた人たちはいつの間にか消え、(何人かの執事たちがうろうろしてたのは見えた・・)

青く美しい海と晴天をバックに私をモデルにした撮影会が開催されている。

「どうしてこんなことに・・」

私はメイドたちのきる無限のシャッターの光を浴びながらこんなことになったことを思い出す。



30分前。

黒髪のメイドが写真を撮ってくれた後、どんな風に撮れたか気になって見せてもらった。

「あら、綺麗に撮れているわね。ありがとう」

衣装のコーディネイトを任せている分、こういった技術は彼女の得意分野だった。

メイドは頭をかきかき照れながらも喜んでいた。


「日記に貼っておくわね」

思えばこの一言が余計だった。


私のこの一言を聞くと黒髪のメイドは、

「ならもっと本格的に撮りましょう」

と一言つぶやくと、テントに整然と積まれた荷物からいくつか鞄を取り出し、

他のメイドたちと連携をとりながら次々と本格的な撮影機材を準備していく。


で、何枚かポーズをとった写真を撮ると、

「可愛いです!もっとほかに・・ビーチを歩いたりしましょう!」

とメイドたちの迫力に推されるまま、ビーチを歩いたり砂に気を付けながら寝転んでみたりと

いろいろと要望を聞いたりしているうち人手が必要ということで、

遠巻きに控えていたメイドたちも参加しての撮影会となった。



海にふらっと遊びに来るだけで、なんでそんなに荷物が必要なんだろうとは思っていたけど、

まさか撮影に必要な道具一式が詰め込まれているとは・・。

しかも、いったい何台持ってきてるの?

ちなみに一応今回海についてきたのは執事とメイドあわせて15人だった。

(撮影会は男子は参加不可)

メイドたち一人ずつカメラが準備されていたので、もしかして・・・。


とはいえ、私としても可愛い水着を着ているし、モデルとして可愛らしく撮影してくれる分には悪い気はしないでもない・・。



ま、まぁ!あのまま海を眺めながらじっとしているのももったいないわ・・。

メイドたちも喜んでいるみたいだし、たまにはご褒美を与えないとねッ!


「お嬢様!次はこう!こうしてください!」

緑髪の悪魔メイドがポーズをとるよう促してきた。


「こ、こうかしら」

私はモデルウォークをするように軽く足を前に出すと少ししなを作ったポーズをしてみた。

長い三つ編みもかきあげる仕草もいいかもしれない。


「「「キャーーーーー!!!!!!」」」

バシャバシャバシャバシャッッッッッ!!!!!

嬌声というかもはや叫び声が響く中、まるで記者会見でもするかのように一斉にカメラのフラッシュがたかれる。



「お嬢様!せっかくですから海に入っては!私が責任をもって整備させて頂きます!!」

青髪の蝙蝠羽をもったメイドが何やらそわそわしながら言った。

蝙蝠羽もピンと張った状態になっている。


「ありがとう・・でも今回はもう面倒だからいいわ」

正直疲れてしまった私はこともなげにそう断ると、

青髪のメイドは蝙蝠羽をしょんぼりとさせながら「そうですか・・」とだけ呟き、メイドたちの列の中に戻っていってしまった。

その後も次々と撮影は進んでいき、結局2時間近くの撮影会となってしまった。

正直、当分カメラで写されるのは遠慮したい・・。


ちなみに、帰宅後。

深夜に大広間から変な声が聞こえるからこっそり見に行ってみると、昼間に撮った私の写真がでかでかと壁に映し出されていた。


その様子を家中のメイドや執事たちが整然とまるで映画館のように並んで鑑賞している。

写真の前では撮影した本人が感想などを交えてプレゼンを行っていた。


もちろんその場でにゃん太郎に命じて没収させたが、まるで年貢を取り立てられるかのようにすすり泣く者や抵抗を見せる者もいて、夜を徹しての攻防を繰り広げることになってしまった。

一応、データや印刷された写真類は没収できたと思うが、まだ隠し持っている者もいるらしい。

あの日以降、定期的な検閲が私の家では実施されるようになった。

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