二頁目/スタンドアロン・マイノリティ

羅針盤もないまま、大海原によし行け自由だ!と放り込まれるようなもので、んじゃあ自由ってそりゃそうですけど、そうこうしてるうちに時間だけは律儀に過ぎていくんですよね。


世界の片隅に一人くらい、何をやったって報われない莫迦がいたっていいじゃないか。


女子の群れ、って、ああ楽しそうかつ面倒そう、なんて思っていたけれど、こうなってひとり歩くとよくわかる。服を選ぶにも、知識とセンスを外注しなきゃ不確か過ぎるのだ。わたしたちは、やっぱり社会的には弱いやつらで、つまり相変わらず私は被捕食者でしかなくて、その位置に落ち着くものだから、これも隣にだれかが欲しい。そこらへんの恐怖が、根底にあるのに、そのままにされて生きている女子って凄いなと我が身で感じた。実際には、既に先行された時点でもうどうにもならないので、私が私だろうとそうでなかろうと変わらないのだけれど、それを剥き出しにされたままになるか否かの恐怖の質量ときたら、もう下手なホラー映画なんぞ比較にならんのです。

一方、異端は異端で、敬おうが蔑もうが、もうこいつらはどうしようもない、って相変わらずな事実を突きつけられる。やつら、自分の底にある常識から逃れきるだけの意識がないし、そも、そんなバカをしなくていいので、結果としてお互いに理解し合うなんぞ到底不可能という事実だけが転がってくれる。

好きでこんなふうに生きてるし、生きてるわけないんだけどね?

基盤が違えば取り替えたくもなるのが基盤にあるみたいで、そこらへんどうしても異端が異端になるらしい。もう憎むのもやめたから、後は連中任せにならざるを得ないけれど、どっちにしろその基盤をひっぺがして取り替えるなんぞ無理難題にぶち当たるから、じゃあその要素だけは都合良く無視してくれれば平和です。そも、平和が示す概念もズレているらしいけれど、そこはそれ。

人並みに生きるのは、ひとには簡単だけど、それができねー上に「じゃあだれか仲間!仲間!...いねえの?おいおい」ってなる理解不可能な存在も、一応ヒトに分類されてしまうので、異端には相当...あ、いや、たぶん、どだい無理なんじゃないかってくらいに難しい。ヒトナミモドキ。

あ、それから、春の夜は意外と寒い。めっちゃ寒い。


ーー、ところがこんな邪魔者である。

おかげで仮面が手放せぬ。



私はいつのまに緩い白が似合わなくなったのか、だから私が鬱いのも、いつも通りだ。生きなきゃいけないみたいな言い回しが嫌い。何当たり前のことみたいに言ってんですか。死にゃいいでしょう死にゃ。何故見ず知らずの皆さんが、そんな他人の死に忌避感を示すのか、こんな生き方をしてきた私にはわからなかった。こいつの問題点は、割と深刻な主体の欠如に起因していた。なんて後ろ向き。主体性がないから、振る舞い方が不明だった。入力してください。ならば動きますが、しかし、ここから先に物語を用意していなかっただけのこと。じゃあ、私は、なんて人間にみなされたいんですか。割り振られればなんでもやるよ。入力してください。でもそれじゃあいけなかった。ハードディスクは耐えきれなかった。だから私は考えるしかなくて、考えろ、考えろ。主体性を掴み取れ。できれば不可逆の条件を与えたうえで実行したかった。嘘は嫌い。Misery。六文銭はタダの時代。ポジティブ・シンキング・ストラクチャ。軸をつくって歪んていく先に、だからこそ真っ黒になるまで砕いて示さなきゃならないんだって悟って、「じゃあ、私がいなくなるから。」なんて結論を踏み潰さなきゃいけなかったし、それは誰かの仕事ではないはずだ。


無意味な、たったそれだけの、ごく僅かな成果。

願った果ての、無意味な、けれども大切な結末の為に。

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