第46話 『タカオカ』

チューガクのときさ、夜、

みんなで堤防のとこ行ったの。


そこで

ぷかぷかタバコ吸ってたらさ、


「おーい。おーい」

って海から声が聞こえてきたんだよ。


で、誰だ誰だ? 

って暗い中を見たら、小舟が浮いてて。


そこにオッサンみたいのが立って、

ぶんぶん手を振ってんだよ。


知り合いか?

警察か?


なんて思って

堤防から身を乗り出して見てたら、

全員の背中が

ドンッ! 

って、いっせいに押されてさ。


で、みんなバランスを崩したんだよ。


あぶねーなーと思ってたら、

タカオカだけが堤防から海に落ちちゃって。


泳げね~ッ! 

たすけてくれ~ッ!


ってバシャバシャもがいて叫んでるんだよ、

タカオカ。


でも堤防高いし、

海は真っ暗だからどーしよーと思ってたら、


足、つかまれたッ!

誰だよコイツッ!


って泣きべそかきはじめて。


やべーやべーって思ってたら、誰かが、


そうだ、オッサンッ! 

あのオッサンはッ?


ってひらめいて、

小舟に乗ってたオッサンにたすけてもらうことにしたんだよ。


で、どこだどこだって目を細めたんだけど、

夜の海だからわからなくってさ。


オッサ~ンッ!

オッサ~ン、たすけてよぉ~ッ!


ってみんなで声をかけたらさ、


「――そりゃあ、無理だよ」


って返事がかえってきたんだよ。


真後ろから。


でもさ、

ふり向いたら、誰もいなくって。


コワくなって、みんなで逃げたんだよ。


ありゃ、ぜったい幽霊だなってことになってさ。


そっこー家に帰ってフトンかぶったもん。

あんときは、ほんとブルったよ。


……なに?


……え?


タカオカ?


知らね。


おなじガッコウじゃないし。


となり町のヤツだし。


みんなでなかったことにしたから。


べつにニュースになってないから、

まぁ……、


生きてんじゃね?

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