第44話 『食べる話~グロ注意♡ 2』

食文化のちがいについて語り出すと、

究極のものに行きつく。


そう。それが、


「人間を喰う」


である。



とある学者が

食人族の村に出向き

生活ぶりを調べることにした。


その部族は

腹を満たすために

人間を喰うのではなかった。


敵対する一族の者たちを倒し、

その相手の強さを

自分の中に取り込む儀式の一環として


「人を喰う」


のだという。



しかし、

その食人族たちは

ときおり奇病を発症させた。


体のバランス感覚を失い、

泡を吐き、


意識が混濁して、

やがて死んでしまう。


現代医学でも

該当する病気はなかった。


発症する者の多くは

女、老人、

そして子供だった。


当然、

なにかの規則性があるのではと思う。


考えはじめれば

答えが出るのはすぐだった。


彼らは食人族である。


現代医学に

該当するものがないのであれば、

理由はきっとそこにある。



そこで

「人を喰う」

儀式のことをくわしく聞いた。


すると男たちは、

敵対する戦士の能力を手に入れるために


腕や足の

筋肉の部分を中心に喰い、


女や子供、老人たちは、

残った内臓の部分を口に入れるのだという。


そう聞いて、学者はピンときた。



これは、

狂牛病とおなじ症状ではないか――と。


狂牛病とは、

牛の骨や内臓を粉末化してエサにまぜ、


家畜として飼っている牛たちに

喰わせたことが原因で起きたとも言われる。


脳がスポンジのようになり、

運動機能などに障害が起き、

やがて死に至る。


人間に伝染する可能性もあるとされ、

有効な治療法もないらしい。


そんな狂牛病とおなじような状況が、

食人族の彼らにも起きているのではないか・・・。

学者はそう考察した。



同族喰いの報い――。


そう評する人もいる病である。


人が人を喰う、

というカルマから離れることができれば、


一族の者が

奇病にかかることはなくなるはずである。


おそらく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る