第17話 『空き巣』

Zは

お年寄りの家ばかりを狙って

空き巣をくり返す

最低な男だ。


何度か警察にも逮捕されている。


ある日の午後

盗みに入ったアパートには

目ぼしいものがなく


持ち去れるものは

数千円の現金と

仏壇に置いてあったペンダントだけであった。


ペンダントトップには

宝石がはめ込まれていたが

どうみても安ものだった。


盗んだ金で

ワンカップとつまみを

買って部屋に戻ると、


収獲のしょぼさにため息をついた。


その夜、

室内で

人の息づかいが聞こえた。


それどころか

セキ払いなども聞こえる。


あわてて身を起こすと


そこには見知らぬじいさんが

立っていた。


「あ、あんた、

 だれだよッ!」


おびえながら問いただすが


じいさんは

こちらをにらみつけている。


Zは怖くなって部屋を飛び出し、


そのまま夜の街をうろついた。


すると

いつのまにか

見知った場所に立っていた。


今日の午後、

空き巣に入ったアパートの前だ。


その周囲に

ベタベタと貼り紙がしてある。


さっきはなかったはずだ。


そこには

こう書かれてある。



――泥棒さんへ。

 

 お金はあきらめますので

 仏壇にあった

 ペンダントは

 お返しください。


 あれは主人の遺骨で作った

 

 この世で

 たったひとつの

 大切なものです。

 

 どうか

 どうか

 お願いいたします。



その文面から、

部屋に出たじいさんの正体がわかった。


Zは朝を待って部屋に戻ると

すぐにペンダントを返しにいったという。



「まさか

 人間様の遺骨を

 加工して

 宝石にするなんてな。

 

 気持ち悪くて仕方ねぇよ。

 

 今度はすぐに

 売っぱらわなきゃダメだな」


Zは

悪びれずに

笑った。

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