第12話 『よく喰う客』

男性はある日、


熱帯魚の水槽に流木を入れ

オブジェのようにしよう

と思い立って海岸を歩いた。


すると手ごろな

流木が打ち寄せられているのを見つけた。


うれしくなって

拾って帰ると


よく洗い、

早速

水槽の底に置いた。


魚たちも

気に入ったようで


すぐに木の陰に

身を隠した。


そのようすが

とても微笑ましい。


しかし

その日の夜。


水槽から

バシャバシャと

騒がしい水音が聞こえた。


何だろうと

近づいてようすを見ると


水槽の中には

一匹の魚も

見当たらない。


ただ

水面が

激しく波うっているだけだ。


なにか気味が悪くなって

流木を取り出すと

近くの空き地に

放り投げた。


その数日後、


今度は

流木を捨てたあたりに

たむろしていた


ノラ猫たちが一匹もいないことに気づいた。


虫の声も聞こえない。



「あれが

 いったいなんだったのか

 今もわかりません……。


 でも、

もしあのまま

 流木を捨てずにいたら


 ボクは

 どうなっていたのかと思うと

 ゾッとするんですよ……」


男性は

そう言いながら、

両腕の鳥肌をさすった。

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