第三章 宙にて群がる
第14話 剣と杖、今と昔
「え? セリアちゃんじゃなくてルーちゃんの方がいいの?」
「セリアは私の最初の名前だから……」
「となるとアタシはロージウムだから……」
こないだのデモナスとの戦闘に飛び入りして来た女の子とそんな会話をするくらいの仲にはなって、ロージーと呼ぶ事になった……やっぱりセリアって呼んでくれるのはエリーだけでいい……エリーだけがいい――
今日はロージーを連れてルタちゃんのいるいつもの部屋を目指す。
それにしてもロージーのあの戦闘が初戦同然だったなんて……魔石が出せるようになったのはつい最近だって聞いた時は驚いたなぁ。
ちなみにリオさんは今度編成されるデモナス対策部隊に参加するみたいで、あれからネット以外では会ってない。
あの戦闘って好き勝手に行動するより複数のマギアスで統制の取れた動きをした方が生存率高くなる事に気付かされる戦いだったし……。
「お主はまた然様な事を申すか!
「貴方は本当に昔から変わりませんね……まったく腹立たしい限りです……」
扉が開くとそんな喧騒が飛び交ってて、1人はルタちゃんでもう1人は……可愛い女の子という事しか判らない……あと私たちが入るや喧騒がピタリと止んだ。
「おぉ、ルーよ。よくぞ参った」
「切り替えはやっ!」
「他所様に見せるには申し訳が立たぬ他愛も無い光景じゃからのぉ……」
ルタちゃんとロージーがそんなやり取りをして……やがて席に着いて自己紹介が進み、ドレスだけじゃなくカチューシャと腕に巻いてるシュシュまでフリフリで、思わず抱き締めたくなるくらいのお人形さんオーラを放つ装いしてる女の子に私が言う。
「じゃあ、ルタちゃんのお友達と言うより……商売敵?」
「うむ、このリビ……此奴こそ我がレヴァンテイン・インダストリーに並ぶ造船技術及びその兵装開発に長けた大企業がトップ」
「ベヒーモス重工業のCEO、カリーナ・アストリア・ヴェスタリオです……リーナちゃんと呼んで頂けると喜びます」
ルタちゃんに続いて自己紹介したリーナちゃんは長いピンク髪をツーサイドアップにしてそれを結ぶ細いリボンは紫色……右目が金色で左目がオレンジ色のオッドアイで、しかもこの色ってルタちゃんの目と完全に同じ……左右逆だけど。
少し色白なものの肌の色は普通で、背は程よい高さのロージーより更にあるんだけど……胸まで上回ってるから大きさの印象が凄い出る……私たちが部屋に入った時から右手にずっとデザインが凄く凝った杖を持ってるんだけど……ロージーが聞く。
「ところでその杖ってもしかして……?」
「あぁ……これはリーナちゃんのレムナントです」
「じゃあリーナちゃんの前世って……」
「はい、大魔導士リビウスです」
ロージーもあの映画見たんだね……剣のマリウス、魔法のリビウス……2人の王は長い間、名勝負を繰り広げその度にドラマが生まれてたし、それが最後は当時悪政を横行してた皇帝を打倒する為に共闘してる最中にリビウスは戦死したけどそれが皇帝を倒す決め手に繋がってマリウスが大陸全土の王になったんだから、本当に熱い話。
マリウスとリビウスは共に男性だったけど……ここで私はこんな質問をした。
「あの……ルタちゃんとリーナちゃんの地球人時代の性別を聞いても……?」
「まだ何も解っておらぬ中学生の少年じゃったのぉ……」
「玉の輿狙って婚活する成人して間もない女性でしたが参加したパーティーのワインに毒が入っていたようで、それで死にました」
「この世界に転生し、その話を最初に聞いた時は驚いたものよのぉ……何故前の世界で男性に転生したのか聞かずとも解るわい」
「あー……女の世界に嫌気が差してた時期に転生した感じですか……」
「前世かぁ……」
私が感想を述べてるとロージーが物憂げな感じでそう呟いたので……聞いてみた。
「どうしたの、ロージー?」
「えっとね、アタシ前の世界の記憶が一切無くて……最初に転生する前は
「転生の際に記憶を全て支払ったみたいですね……リーナちゃんもお金持ちと結婚して毎日お洒落に困らない生活を送りたい……及び子供を産んだら着せ替え人形にしたいなどの気持ちと大切な思い出などの記憶以外は全て支払った上で魔法使いに転生した結果、素晴らしい魔力を手にしていました」
「リビウスよ……お主は聡明であるのに何故その話になると残念な者に成り果てるのじゃ……」
「この世界に転生する際にお金持ちの家の娘になりたいと願っていた中、ベヒーモス重工業は絶好の条件……後継ぎ教育をこなして行く内に流れるようにCEOになり、これで可愛い服を好きなだけ買えるだけのお金は手に入ったと満足していたところにアリウス……貴方ですよ」
「お主の会社がもう一息で業界トップというところで余が立ち上げた会社が一気に追い抜いたからのぉ……余は優秀な社員に恵まれただけだというのに」
「にしてもさー」
ここでロージーが唐突に発言し、こう続ける。
「互い違いだけど目の色が同じ女の子2人が賑やかに話してるの見てるとさ……姉妹みたいだよねー」
そう発言した次の瞬間、ほぼ同時に似たような言葉が大きな声で繰り出された。
「何を申しておる!」
「何を仰いますか!」
こんな感じの時もあったけど人型人工機体オルハマーク3を開発中の企業と大型の兵器開発に優れた企業のトップが揃ってるわけで……真面目な話もこの後したよ。
「……バハムート?」
「リーナちゃんの会社で開発し、かつ世界最高峰の火力を得た兵器をそう呼びます」
「遠隔ではクリエイトウェポンが使えぬ以上、転送装置に頼る他あるまい……幸いにもデモナスと絡む戦闘の際は細かい事を気にせず使えるような法案が現在急ピッチで審議中じゃ……さすればバハムートなどの大型兵器の戦場への持ち込みも容易となるであろう」
「転送装置って確か……転送対象の処理量と距離で値段がヤバくなる、あの……」
最後にロージーがそう言った転送装置って離れた2つの装置の片方に移動させたいものを乗せ、もう片方の装置がある場所へ転送する技術……やってる事をすごく乱暴に言えばステーキをサイコロ状にして、そのサイコロを1個ずつ向こうに送って行って最終的に最初にあった形のステーキ通りにする事で転送を実現……そんな感じ。
物品ならまだいいんだけど人間でやると転送途中で事故が起きた場合、始点と終点の装置両方に半端な転送状態の人体が取り残される事に……そのリスクを避け精度を犠牲に高速化しても、さっきのステーキの例えに戻せば中身が穴だらけの状態で転送され、それが兵器で起きればとても使い物にならない……。
実際、転生者AIをこれで遠方に転送しようとして事故が起きて、それで転生者が死んだ例もある……以上の事から、転送にはかなりの時間と精密さが要求される。
あと、この会話の最後の方ではこんなやり取りも……ロージーが言う。
「それにしてもリーナちゃんは丁寧で落ち着いた口調だなぁ……何か大人っぽい」
「あぁ……これですか。リビウスだった頃の口調から抜け出そうとしたのですがなかなか上手く行かず……一人称をリーナちゃんにして誤魔化す方向で女の子に戻ろうとしています」
「一人称を我にすれば完全にリビウスじゃのぉ……何者に対してもその丁寧な口調を崩さぬ姿勢、感心していたぞ」
「貴方は口調も全くそのままでしょうが……忌々しいマリウス」
リーナちゃんは時折、語気が強まるけどそれはルタちゃん絡みの時だけ……その後も色々と話して今日は解散と言う時に、ロージーがこんな事を提案。
「ルタちゃん、リーナちゃん……最後にあれやって欲しいんですが……ほら、2人でレムナントを出して……」
「おぉ」
「あれですか……」
するとルタちゃんとリーナちゃんは互いにレムナントを出した。
どちらも私の背丈よりも長い大振りの実体化した武器なので剣と杖は見事に交差するや、カツンという音が僅かに響いて……2人の王の言葉が厳かに続いた。
「この
「えぇ、そう致しましょう……マリウス」
映画でもあったリビウスとマリウスが共闘する事が決まった直後に交わしたのが、この言葉と剣と杖……当時もこんな感じだったのかなぁって私はぼんやり眺めてた。
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