第3話 例え喰らわれるもので在ろうとも
「結構入ったかな……?」
そんな呟きが出そうなくらいの手応えはあったし、大型デバウアーの体表には傷が入り、水色の体液がそこから若干溢れ出た……。
所々にある棘が少し邪魔だけどそこまで問題じゃない……まぁ与えた傷は再生能力ですぐ塞がるんだけどね。
発電所に被害が出ないように戦って、素早い動きには結構翻弄され……やがて猪デバウアーが近場の建物の屋上に着地して……。
「目標のデバウアーに高エネルギー反応!」
ユズがそう言った通り、明らかにこれからブレスを吐きますって動作してる。
さっきの狼たちは炎で済んだけど、あの巨体に蓄えられたエネルギーから察するにプラズマクラスの水色ブレスが放たれる感じかな……だったら防御しよう。
「レッドコード……マゼンタバリア!」
維持するほどエネルギー喰うものの、目の前に展開したマゼンタのエネルギー防壁の防御力は信頼出来る……程なく放たれた水色に輝くプラズマブレスはマゼンタ越しじゃ白っぽくなるけど凄い輝きだなぁ……。
そんな風に見惚れてる間にブレスは収まり、これで再生能力は低下したはず……そう思った瞬間――
「今じゃ! 撃てぇーい!」
どこからか可愛い幼女ボイスが聞こえて来て、猪デバウアーの巨体にレールガン式機銃と思われる実弾が次々と注がれ、再生能力が低下した事もあり、水色の血の噴き出す具合が軽傷では無い事を物語ってる。
気が付けば皆同じデザインの黄土色の人型機体がデバウアーを包囲してた……これはマギアスじゃなくて企業製の人工機体……そう思ってると更なる幼女ボイス。
「このオルハマーク2は遠隔操作対応……全機無人じゃ! 気にせず戦えぇい!」
それなら他のデバウアーに襲われてても助けなくていい……侵食される前にありったけの火力を浴びせる人海戦術ってところかな。
その後は掛け声がしたと思ったら攻撃が止み、私が斬り付ける事を再開すると再び一斉攻撃する合図があったので一旦下がって……そんな感じで、猪デバウアーの再生力を上回るダメージを与え続け、遂にその胴体を前後に分断するまでに至った。
「目標のデバウアーが水色に発光……コアが出現するよ!」
ユズがそう言ったけど、やっぱりコア持ちだった。
デバウアーのコアは最初から体内にあるんじゃなくて一定以上のダメージを与えると水色の結晶体に変化し、その水色コアはレッドコードでこうしないとダメージを与えられない……未だにマゼンタの光を纏い刀身が輝くガンソードに対し、私はコードを重ねる。
「レッドコード――ファイアウェポン」
猪は突如現れた幼女の部隊により大幅にダメージを与えたから未だに動きが沈黙。
一定ダメージギリギリ過ぎるとそのまま全身が水色に発光して、この特殊な炎状態の武器じゃないとダメージを与えられなくなるのにデバウアー側は一方的に物理攻撃して来る事態に陥るし、このコアも放っておけば本体を修復して活動を再開する……だから一気に仕留めよう。
「娘ぇ! 決めるのじゃあ!」
ガンソードの刀身は特殊な炎状態になったけど水色の結晶はかなり大きい……ぶった斬るならもっと大きな剣が欲しいけど……一撃である必要は無い――
「
レイピア片手にこの技を放ってた頃を思い出しながら、眼前の特大コアを滅多刺しにし続ける……技名格好よくて見た目も絵になるけど……威力の低い武器で幾ら突き刺しても大したダメージにはならないんだよね……悲しい。
今回は威力がある武器でやったので水色の結晶はヒビだらけになって今、砕け散った……それと同時に発電所に蔓延りオルハたちを侵食してたデバウアー細胞も一瞬にして水色の炎となって消えた。
この時の炎にはエネルギーが無いって話だけど……エフェクトの類なのかなと思ってしまう。
「
そんな風に幼女ちゃんから話し掛けられて少しは会話して連絡先まで交換して……私は今スカイカーに乗って、さっきまで管制室のある建物に向かってる。
マギアスは任意で解除出来るんだけど、その際はマギアスがいた場所を起点に近くの足場にパイロットが着地してくれるから普通に便利。
解除の際は出現時同様に機体全体が赤い光に包まれるんだけど、時間経過でエネルギーが溜まればまた呼び出せる。
自分のマギアスのエネルギー状況は手の平に魔石を出して、その赤い結晶体がどこまで完全状態に近いかで判断出来る……この回復速度にも個人差があって、私は容量が少ないけど早い方らしい……。
さて、さっきの戦闘終了から30分くらい経ったかな――
「全員のエネルギー状況。マルスさん82%、エレスタさん81%、マルティーさん74%、ヴェネットさん69%」
私は持ち場である管制室に戻り、そう報告していた。
リオーヌさんはエネルギー切れで送還が決定……皆の消耗を率先して抑えてくれたから、こんなに温存出来てるけど……問題はここから。
「見えたぜ! あれが……」
「マザーに侵食された」
「建造途中だった大型スペースコロニー……」
エリー以外がそう発言した。
何だかんだでこの世界もゲームみたいな所があって……前の世界が魔王を倒せる程の冒険者を生む為のモンスターとダンジョンに溢れた世界だったのに対し、この世界は発達した科学技術を運用して行くのに欠かせない資源が豊富な惑星を目指して宇宙開拓して行く世界……今その障害となってるのがデバウアー。
マザーのコアを破壊すれば全てのデバウアーが消滅する……2つの意味でそう都合よく行くのか……そんな疑念が渦巻く中、サンディが言った。
「4時方向と7時方向、更に11時方向に敵影多数……一番距離が近いのは4時方向です!」
とりあえず帰って来たらエリーに「おかえり」って言おう……この気持ちが本当にそうだって私は判ってるけど……エリーはどうなんだろう?
いつか直接、確かめよう――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます