第9話 ち〇こと、お〇ぱい

 しかし、だ。


「でもそうか……ここまでの話をまとめると、俺がエリカを召喚したのか……ってことは、つまり俺は世界の枠すら飛び越える世界超越級の召喚術師! なんと、なんという甘美な響きか……!」


 よくよく考えたら俺、すごくね?


 俺すげー

 ↓

 俺日本人

 ↓

 俺すげー!


 あれ? なんかいつもとルートが違うな?

 まぁいいや。


 つまり何が言いたいかって言うと、今さらになってめちゃくちゃテンション上がってキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!


「まぁ実際はただの冴えない無職童貞なんですけどね。深夜に召喚魔法ごっこするような。深夜に召喚魔法ごっこするような」


「……なんで2回言ったの? ねぇなんで? あと今まで散々持ち上げに持ち上げた挙句に、話がまとまった途端にブラックマンデーもビックリなくらいの直滑降急降下するのやめてくれない!? 女の子は笑顔の裏で陰キャ男子を嘲笑してるっていうネットの怖い話を思い出してマジ泣きそうなんだけど!?」


「おや、泣きたいのならどうぞ泣きたいだけ泣いてください、わたしのこのおっぱいで」


「え、なにそれ!? マジで言ってるの!?」


 お、思わず喰いついちゃったよ?


 だって俺も男の子だもん!


「マジですよ、マジ。ほらー、ボクちゃん、泣きやみましょうねー。ママのおっぱいでちゅよー」


「……お前、実は俺のこと馬鹿にしてるだろ? 30過ぎの無職童貞だと思って間違いなく馬鹿にしてるだろ?」


「えっ!?」


「なにを『さも心外です』みたいな顔してんだよ」


「そりゃもちろん意外にも思いますよ。まさかおっぱいしたくないんですか? なーんだ残念。ちんこついてるんですか?」


「ナチュラルにディスってんじゃねぇ。ちゃんとついてるわ! っていうか女の子がさらっとちんことか言うなよな、はしたない」


「じゃあなんて言えばいいんですか?」


「え? いやその、だから、えっと……」


「なんて言えばいいんですか? なんて言ったらはしたなくないんですか? ねぇねぇトール、わたしがなんて言えばトールは満足するんですか?」


「いや、だから、それは……」


「この際はっきり言ってください、トールはわたしになんて言わせたいんですか? さぁさぁ言ってみて下さい!」


「ぐっ、分かったよ、俺が悪かった。この話はもう終了な!」


 圧倒的な戦況の不利を感じ取った俺はすごすごと敗北を認めた。


 っていうかこれ絶対にわざと下ネタを振って、女の子に免疫がない30過ぎ無職童貞の俺のピュアな心をからかって遊んでただろ?


「分かりました。この話はもうしません。トールに嫌われては元も子もありませんからね……でも残念でした、トールの甘えるところが見られなくて。赤子のように甘えるトールも見てみたかったんですけど」


「え? 残念だったの? おっぱいされなくて? え、マジで?」


 そして俺はやはりその言葉にどうしようもなく反応してしまうのであった。


 いくら俺が30年以上汚れを知らないピュアな身体の持ち主であっても、避けては通れない悲しい男のサガだった。


「いやー意外と硬派なんですね、トールは。ちょっとだけ見直しました。ちょっとですけどね。ちょっと」


「だから何度も言わなくていいんだよ。それより、別にその、お、おっぱいしないとは言っていないだろう? その、させてくれるなら、その、全然、やぶさかではないって言うか……」


「いえ、別に結構です」

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