勤め先が倒産して無職になった30過ぎ童貞、朝5時にピンポン連打する異世界押しかけ妻により、実は異世界を救った勇者だったことが発覚する。「ところで君、誰・・・?」「だから妻ですよ♪」
第8話 女の子は変わり身が早いって言うけどさ……。
第8話 女の子は変わり身が早いって言うけどさ……。
「わたしはトールの好みではないでしょうか? わたしが元いた基幹世界『ディ・マリア』では、少なくとも外見に関しては可愛いとは言われていたのですが……」
言いながら上目づかいで俺を見つつ、前髪を整えるようなあざと可愛らしい動作をするエリカ。
これは明らかに自分が可愛く見える角度とかしぐさを研究していますね。
俺ほどになれば見れば分かります。
「そりゃ好みか好みでないかって聞かれたら、その……可愛いくて好みかなとは思うんだけど」
あ、すみません、今俺は見栄をはりました。
エリカの外見は超好みです。
控えめに言って、好み過ぎて堪りません。
俺は陰キャ気味のアニオタだけど別に性的不能というわけではなくて、単に女性と仲良くなるスキルが絶望的に皆無なだけなんで、リアルな可愛い女の子はもちろん大好きなんです。
可愛くて優しくて笑顔が可愛い三次元の女の子とお付き合いとかしてみたいんです。
「なら問題ありませんね。晴れて相思相愛です。では結婚しましょう」
「いやほら、さっきも言ったけど、急に結婚とか言われてもだな? さすがにそれは困るっていうか」
「あ、もしかして彼女さんがいたりですか? それだと困りますけど、九分九厘いませんよね?」
「確かにいないんだけど……エリカが今、俺に彼女がいないと思った理由を良かったら聞かせてくれないかな?」
だって今のはほぼ断言したに等しいよね?
いったい何を基準に断言することができたのか、後学のために教えて欲しいなぁ?
「良くないので聞かせない方向でお願いします」
「あ、うん、そう言われると俺としてはこれ以上は聞けないんだけど……でもなぁ、何て言ったらいいのかなぁ」
「ふむ。察するに、まずは手つなぎデートから初めて、腕を組んだり1つのマフラーを共有したりと一歩ずつステップアップしながら、じっくり心の距離を詰めていきたいというわけですね?」
「うんまぁ、そういうこと、なのかな……?」
結婚はあまりに踏み込み過ぎだし、段階を踏みたいという意味では間違ってはいないんだけど、別に俺はそこまでじっくりゆっくりしたいわけでもない……かな?
「なら仕方ありませんね。古来より急いては事を仕損じると申します。婚姻届を作成するのはまた後日にしましょう」
「ああうん、ありがとう……?」
この件に関して俺が感謝する筋合いは全くない気がしないでもないけど、なんとなく流れで俺は一応感謝の言葉を添えておいた。
感謝の言葉は世の中を回すための潤滑油であり、人間関係の維持にも欠かせない心の清涼剤だからね。
「いえいえどういしたしまして。当然の事をしたまでです」
そしてやたらとご満悦なエリカだった。
いやまぁ別にいいんだけど。
というわけで。
なんかだかよく分からないんだけど、とりあえず現状そう言う話に落ち着いたみたいです。
何の変哲もないアニオタ無職 (失業手当受給中)だった俺は、ある日突然異世界を救った勇者になり。
さらには異世界から召喚してしまった10歳以上年下の美少女巫女のエリカと、結婚を前提にお付き合いすることになったのだ。
(なんだこれ、マジで意味が分からん……)
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