勤め先が倒産して無職になった30過ぎ童貞、朝5時にピンポン連打する異世界押しかけ妻により、実は異世界を救った勇者だったことが発覚する。「ところで君、誰・・・?」「だから妻ですよ♪」
第7話 異世界から召喚した美少女と結婚を前提にお付き合いすることになった?
第7話 異世界から召喚した美少女と結婚を前提にお付き合いすることになった?
「……は?」
「それはもちろん夫婦ですから」
「え? なんだって?」
聞き間違いかな?
別に真似しようと思ったわけじゃないんだけど、昔の超有名ラノベ主人公のセリフがナチュラルに出ちゃったよ。
「それはもちろん夫婦ですから」
「夫婦? 誰と、誰が?」
「わたしと勇者様が、です。あ、そうだ、トールと呼んでも構いませんか?」
「え、あ、うん、えっと、いいけど」
エリカにさらっと名前で呼ばれてしまって、ドギマギしてどもってしまう俺。
もちろん女の子から名前で呼び捨てにされる経験もこれが初めてだった。
「ありがとうございますトール」
そんな俺に、エリカはニコリとほほ笑んでぺこりと頭を下げる。
「そんなことより、夫婦ってなに? え、俺とエリカが?」
「はい。わたしと、トールが、夫婦、です」
エリカは分かりやすく一言一言区切って言ってくれたのだが、俺が今言いたいのはそういうことではないんだな。
「えーと、なんで? 俺たちまさに今この瞬間に会ったばかりだよな?」
「理由は簡単です。召喚された者は、召喚主に対して身も心も捧げよ! というのが我らが異世界召喚の女神さまが定めた異世界召喚の一丁目一番地ですから。身も心も捧げる、つまり結婚するのが女神さまの教えなのです」
「そんな、女神さまの教えが理由だなんて……」
「基幹世界『ディ・マリア』の住人にとって女神さまの教えは絶対。士道不覚悟はハラキリですから」
「いやエリカは武士じゃなくて巫女なんだから、士道じゃないしハラキリもないだろ? っていうか日本文化詳しいな。士道不覚悟で切腹って新撰組じゃないんだからさ」
「それぐらいの強い覚悟をわたしは持っているということです。あと司馬遼太郎先生の『燃えよ剣』は愛著です!」
「なんで異世界で司馬遼太郎の本が読めるんだよ?」
「基幹世界『ディ・マリア』では古い日本文化の教材として、翻訳されて広く読まれているんですよ」
「海外どころか異世界でも読まれてるとか、司馬遼太郎マジすっげぇな!?」
「先生の他の本もぜひ読んでみたいですね」
ま、まぁ異世界転移にも色々決まりごとがあるのは分かった。
だがちょっと待ってほしい。
「えーとさ? 急に結婚とか言われても、青天の霹靂っていうか俺困るんだけど……」
「わたしは困りません」
「あ、そう……」
ピシャリと断言されてしまい、俺は言葉に詰まってしまった。
「ふむ、つまり年齢的な問題でしょうか」
「それもあるな。エリカは20歳くらいだろ?」
「今年で21歳になります」
「だろ? 逆に俺は30過ぎで10歳以上離れているわけじゃん? しかもその、今はなんていうか無職なんだ。勤めてた会社がコロナ禍で倒産しちゃってさ。だからいきなり結婚とか言われるとちょっとハードルが高いかなって……」
ぶっちゃけ誰かと一緒に生活するだけのお金はありません。
「それならば婚約という形でも構いません。とりあえず婚約の証として、はい、これに判子を押して下さいな」
そう言ってエリカが取り出したのは、
「なんだこれ……婚姻届? 婚・姻・届ぇっ!?」
「これさえあれば、何年かしてタイミングがやってきたら、いつでもすぐに結婚できるようになりますので」
「いやいやそう言う話じゃなくてだな」
っていうかどこで手に入れたんだ
実は異世界転移してから俺のところに来る前に、区役所にでも行ってきたのか!?
「ふむ。では年齢以外といいますと、例えばどういう話なのでしょうか」
「ほら、その、こういうのってお互いの気持ちとかが大事なわけじゃん? そんな異世界召喚されたから結婚しないといけないって、それじゃまるで無理矢理っぽいし、そこにエリカの意思はないわけだろ?」
「わたしなら問題ありません。トールの外見は好みですし、話してみてヘタレ――おっと、誠実そうな性格的には好感が持てました」
「今ヘタレって言ったよな?」
「そうでしたっけ? うふふ。つまりノープロブレム、結婚オッケーです。ちょっとえっちなのが気にかかりますけど、夫婦ならそれも普通ですしね」
俺のツッコミをさらっとスルーすると、グッ!と親指を立ててウインクをするエリカ。
その茶目っ気に溢れた様子は、それはそれは可愛かった。
「エリカはそうでも、俺は急に言われても心の準備ができていないというか」
しかしなおも渋る俺。
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