4話 死の果てに──ベッドの上で
時は現在────自室のベッドの上。
俺の両脇には可愛らしい寝顔で抱きついてきている完全無防備な美少女たちがいる。
ここに至るまでの経緯を思い返していると、ある疑問に行き着いた。
「あれ、俺死んだよな?」
そう、確かに俺はあの時死んだのだ。
全身から湧き出す力と共に溢れ出した蒼い炎に焼かれて。
「おいっ、起きろよっ」
左側で寝ていた茶髪の少女の体を揺する。
「……ん?あ〜、おはよ」
茶髪の少女は寝ぼけているのか、それが当たり前のように寝覚めの挨拶をしてきた。
「お、おう。おはよう…………じゃなくて、なんでお前たちがここにいるんだよ!」
顔だけこちらに向けて大きなあくびをしている。そして少女が起き上がろうとした時───。
「なっ、なんで私たちの服がないのよ!」
慌てて布団で身体を隠しながら叫ぶ。
「………もしかしてあれのことか?」
床に見える乱雑に脱ぎ捨てられていた着物を指差す。
少女は急いでそれを取ろうと手を伸ばす。するとハッとして、俺を睨みつけた。
「あっち向いてて!変態!」
俺は顔を赤くしながら反対側を向いた。
はっきりと裸を見てしまったが、不可抗力じゃないのだろうか。
そうだ。これは不可抗力。ラッキースケベだ。
すると藍色の髪の少女も目を覚ました。
「ふぁ〜……おはようございます…儀式は無事に成功したみたいですね」
同じようなあくびをしながら起き上がる。
彼女はいたって冷静に、またしても当然のように脱ぎ捨てられていた着物を取って着始める。
「え、なに言って……」
できるだけ少女の着替えを見ないように尋ねた。
「だって奏太さん、昨日神社で紅羽に喰われて死んじゃったじゃないですか」
言葉が出なかった。ていうか紅羽って誰だ?
「本当よ!どれだけ大変だったと思ってんのよ?」
もう一人の少女が口を膨らませながら言う。
それに対して、
「お姉ちゃん!奏太さんは私たちのことを助けてくれたんだからそんな風に言ったら失礼だよ」
と、なだめるように言う少女。
「……ごめん」
頭から生える耳がしょんぼりと小さく垂れる。
俺はそんな二人のやりとりに対して口を挟む。
「いやいや、悪いんだけど状況が理解できない」
はっきり言ってサッパリだ。
「俺はやっぱりあの時死んだんだよな?それに儀式って?」
「あれ?あんた、自分の状態がわかってないの?」
二人はきょとんと首を傾げている。
まるで何もわかっていない俺がおかしいみたいだ。
「奏太さん。頭!頭!」
俺の頭を指差す二人。
なんかついているのか?
どうせ寝癖くらいだろ…………ん?
手を伸ばすと背筋が凍ったような感覚がした。
頭の異物に触れた瞬間、身体中に電気が通ったような刺激が走る。
「うわっ!なんだ?」
ベッドから飛び出して机の上に置いてある鏡を覗く。
「なんだこれっ!?」
鏡に映る俺の頭には彼女たちと同じように狐の耳が生えていた。
まさかと思い慌てて腰に手を当てると思った通り。ふさふさの長い尾が伸びていた。
「あー、その……ね?」
茶髪の方の少女が苦笑気味に言う。
「あんな状況だったし……あんたを生き返らせようとしたら……まさかの妖狐として蘇らせちゃったみたいなの」
てへっと舌を出してウインクしていた。
あの日、蒼い炎で焼かれて死んでしまった瞬間から俺は人間ではなくなった………らしい。
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