首参り(まこさん)
「──たしかに受け取った」
「毎度どーも♪」
彼の目はいつ見ても見惚れる程に美しい。
「ねぇ、その眼球一つ売ってくれない? 五百万でどう?」
「生憎、そういう要望は受け付けてないんで」
呆れたように溜息をつき、用は済んだと言わんばかりに彼は受領書を僕に押し付け洋館の中へと姿を消す。
「あーあ、フラれちゃったか〜」
「追いかけて始末しますか?」
僕のお気に入りの
リグルと違って血の気の多い奴だ。
「やめときなって、お前じゃあの子に傷一つ付けられないさ」
「……かしこまりました」
銃をしまわせ車に乗り込む。
「それよりこのあとの予定は?」
「
「却下」
僕の父親で、咲良組の組長。
「お母様の墓参りならこの前行ったじゃん」
「墓参りではなく首参りです」
「一緒でしょ。あの人頭オカシイから会いたくないんだよね」
「……若」
「はいはい、もう、面倒だなぁ」
さっきの彼みたいに溜息を吐く。
車は自宅へ向けて発進した。
§
『首参り』だなんて狂っているとしか思えない。
目の前で美しいまま安らかな顔で眠る亡き母の顔を見て思う。
母が亡くなったあと、悲しんだ父は彼女の首だけ切り落とし剥製にした。
墓で眠っているのは身体だけだ。
「壊れた玩具になんの意味があるんだろう」
代わりの
どうして組長さんは
本当に狂ってる。
僕は首の入ったショーケースを撫でた。
──今ここでこのゴミをグシャグシャに潰してしまえば、組長さんはどんな顔をするんだろう。
「でも、やるのはこの組を全部僕のモノにしてからにしよう」
身体の中を暴れ回る好奇心を押さえつけ、僕は彼女の首に青薔薇を手向けた。
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