アナザー・バッド・ルート(Nero)

 ◇もうひとつの、あったかもしれない世界線のお話◇

 ※「桔梗の花言葉は」「不幸な少年」「来世で、また会おう。」「自由の翼」のifストーリー







 その昔、白い天使は神界を追われ、不幸にも悪魔に堕ちてしまったそうだ。


 ああ、なんて可哀想!


 心優しい神様はこう考えた。


「彼が幸せに暮らせる物語を考えてみよう!」


 そうだな、物語の書き出しはこんな感じ。


『あるところに、白い天使が幸せに暮らしていました』





 §





 あるところに、白い天使が幸せに暮らしていました。

 彼は愛する神様と神様の子ども達のもとで、忙しいながらも不満を持つことなく、平穏な日々を送っています。


 一方その頃人間界エルデでは──


 ある一人の不幸な少年兵は嘆きます。


「僕の人生は何一つ報われなかった」

「やはりこの世に神はいないのか」


 ある一人の自由が欲しい少女は泣き叫びます。


「パパ、ママ、わたしをころさないで!」

「愛してくれてるって、信じてたのに……」


 ある憐れな双子は苦しみもがきます。


「いやだ、やっぱり死ぬのは怖い、リリー……!」

「リコリスを犠牲に生き延びてしまうだなんて! 愛していたのに、愛しているのに……!」


 そうして彼らは失意の中で、ある者は自ら命を絶ち、あるものは望まぬ形で命を奪われてしまったのでした。


 めでたし、めでたし。





 §




 あーあ、せっかく幸せにしてあげたのに、結局誰かは不幸になっちゃう。

 ま、こんなもんだよね。

 世界は誰かの犠牲で出来ているんだもの。


 悪いけど幸せな天使には消えてもらおうかな。

 今の物語の方が楽しいし。


 じゃあね、幸せな白い天使『ハク』

 キミのことも確かに愛していたよ。






 ────神様はもう一つの物語を書いたページを破り捨てたしましたとさ。


 これで本当に、めでたし、めでたし!

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