信仰(時計草)

◇時計草くんのお話◇




 チク、タク、チク、タク……


 時計の秒針が規則正しく時を刻む。

 窓から淡い月光が降り注ぐ。

 光を受けた桔梗の花が闇に白く咲いている。


 白基調の小さな礼拝堂。

 ここで日々、神への祈りをささげることが私の日課だ。


 神──桔梗様と私が『家族』になってから八百年余り。

 正確には八二四年と六ヶ月十二日、七時間四十二分五秒、六秒、七秒……。


 が、私にとって桔梗様の『家族』として過ごした時間は何よりも尊い。

 一秒、また一秒と時を刻むのが愛おしい。


 あのお方桔梗様のことを化け物だとか悪魔だとかのたまう者もいるようだが、それは間違っている。



 ──少なくとも私にとっては。




 桔梗様は私の全てで、

 桔梗様は私の神で、

 桔梗様は私にとって誰よりも尊い。


 私たち『家族』を皆平等に、愛と平穏で満たしてくれる父なのだ。

 私はそんな桔梗様の愛に応え、これからも祈り崇拝していくだろう。


 なんて幸福な日々!


「あ、時計くん。やっぱりここにいたんだね。今日もわたしに祈ってくれていたのかい」

「──!? ききききき、桔梗様!?」

「時計くんは本当に勤勉ないい子だね。今日は時間もあるし、わたしが直接祈りを聞いてあげようか」

「あああ、神が、ぼぼ僕、いや私を褒めて……!!そのうえ今日は神に直接祈りを聞いていただけるなんて……!!」


 バターンッ!!


「え、時計くん!?」


 ああ、なんて幸福な日!

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