第一説 出会いは薄味 4

「え?どゆこと?」

 無線に疑問を投げかけた男の声が流れたことで二人の老成した男女が反応する。

「突然どうした?」

「聞かなくていいよ、仕事に集中しな」

 音程から二人とも呆れているのがわかる。

「いやーそれが何か言われた気がしてねー?」

 男はわざとらしく首を傾げる。

「大丈夫、それは気のせいじゃない。どうせ声の正体は怒声か唸り声か悲鳴だ」

「え〜何で断定できるの〜?」

 男の発言を聞いて二人は大きなため息をついた。

「お前さんの右手に持っているものと、足元にあるは一体何だい?」

 男はとりあえず下を向いた。

「えーと…肉塊になりそびれた哀れな中年男性の上半身と、バラバラになった大腸と小腸があるね。あ!膵臓の破片もあるよ!」

「丁寧に言わなくていい…」

「で、お前さんの目の前にあるのは何だ?」

 男は前を向く。

「完全武装でぇ、僕に武器を突きつけてぇ、能力を発動させようとしているぅ、かわいいウサギさんたち!」

「かわいい…のか?」」

「まぁ遊び甲斐のあるという意味では、かわいいのかもね…」

「ううん、違うよ。かわいいウサギみたいに調理しがいのある人たち、って意味だよ?」

「あーはいはい。ちゃっちゃっと仕事終わらせようぜ、早く帰りたいしな」

「?なんで?」

「なんでってそりゃ…」

 老成した男は急な質問にたじろいでいると、

「仕事にうつつを抜かしてぇ、自宅では奥さんを顧みずぅ、アホみたいに家庭菜園に力を入れるようなぁ、脳味噌スッカラカンのくせにぃ、早く帰りたいのぉ!?」

 男は鼻につくような口調で言った。とても腹の立つ言い方だった。

「…お前後で」

「確かに、それは一理あるねぇ」

「ちょ…なんで!?」

「先週結婚記念日で皆祝ってくれたのに、夫であるアンタは、な・ぜ・か、何もしてくれなかったよね…?」

「アハハ…それは…」

「奥さん、心中お察しいたします。帰ってからじっくり、お話しされてはいかがでしょうか?」

「そうするよ。アンタ、わかってるね?」

「も…もちろんさ…」

 男は声を出さないように

「とりあえず、目の前の敵をさっさと全滅させな。引き続き援護するよ」

「は〜い。…さて」

 男は再び目の前の敵を見据える。恐怖で彩られた戦場に緊張感が走る。

「君たちはスパっ!がいい?それともザク!の方がいい?もしかして…


グチャ!ってなりたいのかな!」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る