Chapter2 豪華な朝食
翌朝、ミツルは三人の兵士と一緒に現れた。癖なのか昨夜のようにへらへら笑っている。三人の兵士は、都並を無事に派遣先まで送り届けるための護衛だと言った。
「ツナミ、さあ、早く着替えてくれ。食事をしたら出発するから」
ミツルの案内で、本部テントの横にある食堂に入る。長いテーブルが何台も並び、多くの兵士が賑やかに朝食を取っていた。カウンターからアルミの皿を四角い盆の上に乗せ、他の兵士と共に列に並ぶ、様々な料理が大皿や鍋に入って置かれていた。都並は、山盛りになったフランスパンとソーセージ・ベーコンそれに卵料理を皿に盛った。
「朝から凄い料理だと思わないか?」
「確かに朝食としては贅沢な料理だな」
「なぜだか判るか?」
「そりゃ、暑い過酷な仕事だからじゃないのか?」
「違うよ」
「じゃあ、何だ?」
「今、ここで笑ってるやつらも、今夜再び帰ってくるとは限らないからさ」
―― そうか、ここは戦場なんだ
「ツナミ? コーヒーでいいか?」
先を歩いているでミツルが笑顔で言う。
「ああ」
長いテーブルを都並とミツルそれに三人の兵士が占領して朝食を食べ始めた。兵士たちは誰もが都並の三倍はあろうかと思われる量を瞬く間に平らげる。
食後のコーヒーを飲み始めると、ミツルがこれからの予定を話し始めた。
「まず、トラックで南へ二時間ほど移動する。その後車を変え、東へ三時間ほど移動したところがツナミの目的地だ。彼ら三人は、我々の護衛だが、君の国のように持っている武器は飾りじゃないからな。少しでも危険と感じたら、容赦なく発砲するからそのつもりでいろよ。大切なのは、自分の身は自分で守れ。逃げるのが一番いい」
都並は、生唾を飲み込み、兵士たちを見た。
「判った」
「じゃ、そろそろ集合の時間だ。行くぞツナミ」
カップに残ったコーヒーを飲み干し、五人は席を立った。
集合場所には、トラックが数台と戦闘走行車両、戦車とジープがそれぞれ二台あった。今回の移動は物資の輸送が目的で、そのトラックに同乗させてもらうことになっていた。
どこからとも無く、戦闘ヘリが飛来し、先頭を走る戦車が動き出した。都並たちは、最後尾から三台目、ジープの前のトラックに乗り込んだ。
多少の遅れはあったものの、最初の目的地には何事も無く到着した。一時間ほど休憩を挟み、次の目的地に向かう。他の車両は別の目的地に向かうため少し早く移動した。
都並たちの乗る車両は大型のジープになり、その運転手が一人加わり、総勢六人となった。
前席に運転手と兵士が一人、二列目の席に都並とミツル、後方の席に兵士の二人が座った。
この辺りは反政府勢力の勢力圏でもあり、過激派が多数隠れている。先ほどまでののんびりとした行軍ではなく、まるで高速道路のように猛スピードで大型ジープは走った。砂煙を巻き上げレースさながらであった。
「のんびり走っていると、ロケットランチャーで狙い撃ちされるからね」
ミツルは涼しい顔で話す。整備されていない道は、高速で走るのには適している訳ではない。都並はほんの数分で車酔いに襲われた。
それでも、高速走行のおかげで、予定より随分早く目的地の近隣までやってくることができた。
「都並、もう直ぐだ。ほら、見えるだろ? あの山の麓の町が、君が一年間暮らす所だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます