第11話 エピローグ
私は、気持ちい海風に吹かれて歩いている。すっかり変身にも慣れ、すらっと背の高い美しい女性だ。アクアリウムから出て、もう300年は経っているはず。
お母さんの正体がわかってから、ミイロとお母さんと3人で暮らした。何かを探しながら。お母さんの件で私は何かを忘れてしまったのだ。探していることだけは覚えているけど。
初めて、ミイロと人間に変身して、アクアリウムに来た時とはすごく変わって
いた。人魚ゾーンだったはずの所は水槽が無くなって、ちょっとした博物館みた
いになっている。浜辺には、ロボットがたくさんいて人魚を探している。海から、
町の方へ行くには、岩場の方のロボットが来ないところからなのだ。
今日は、久しぶりにアクアリウムに入ってみる。べつに、目的はない『はず』だけど。でも、あった。目的があった。
私の目がおかしくなければ、そこにいるのだ。
ねぇ、ほんとだよね。あなたは、懐かしい面影がある。
「かいるっ!!」
振り向いた人は確かにかいるだった。
「ん?」
最初は、だれ?みたいな顔をしていたけれど、すぐ顔は輝いた。
前に、お母さんに教えてもらったのだ。前に会ったことがある人は、忘れてもまた見れば、思い出せるという事だ。前世に会った人なら思い出せるが、あった人の子孫は思い出せないらしい。
その人の前世は、かいるだ。もう、かいると言おう。かいるは私に駆け寄る。私も抱き着く。
「かいる…。また、会えたね。」
「ああ、懐かしい。」
確かに、声も全然違う。でも、いい。気持ちが合えばそれでいい。
「元気だったの?」
まだ若いから、そんなことを聞いても絶対に答られないかなと思ったけどかいるは『かいる』だ。ちゃんと答えられた。
「うん。とっても元気だったよ。」
私は、背が高くなっている。まだ、かいるは高校生だ。ちょっと小さくてかわいい。
また、会えてうれしい。そんな思いはかいるもきっと同じ。2人でアクアリウムを出た時に空にはハート形の雲があった。
「かわいい。」
「な。」
一緒に空を見上げて、くすりと笑った。
(終わり)
アクアリウムの都市伝説 灯夜海月 @109yuko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます