第10話 夢と現実
その夜、私はお母さんのことを考えた。どんな人だったんだろう。シショーみたいな明るい人かな。ちょっとクールな人かな。そうやって考えていたら、シショーがやってきた。
「なに考えてるんか。メリちゃん。」
「あ、ちょっと…。言ってもいいか…。」
だって、記憶がなくなるほどのことなんだもん。
「なんでもいいんやよ。1人で悩まないで。」
…シショー。それなら…。
「お母さん、のこと…!!」
あっ、とシショー。そして、ちょっと笑顔になり、
「そういうお年頃か…。」
と、去っていった。
・ ・ ・
あれ、なんだろう。この感覚。起きていない、でも寝ているように目を閉じていない。『夢』だ。ここは海で、小さな金髪の子をオレンジのロングの髪の人がせっせとあやしている。そこに、赤ちゃんの泣き声。声の方を見ると、わかめのような髪の色の人魚の赤ちゃんが流れていた。金髪の子と同じくらいの年だ。なんか、見たことがあるような。
『あら、あの子。迷子やね。』
懐かしい関西弁。やっぱり聞いたことがある気がするけど、ちょっと違う。
わかめの髪の子の顔がみえた。前髪の横がちょっと長い…。
あっ
ミイロだ。だから見たことがあるのだ。と、いう事は。金髪の子が…、やっぱり。メリオ、そう私だ。
え、もしかして。何の感情だかわからない気持ちが、心を揺さぶる。ああ、目的を果たしたのだ、この気持ちは。私をあやしている、オレンジの髪の関西弁の人が。シショーだ。シショーがお母さんだったなんて。で、ミイロは迷子で流れ着いた子。シショーがいなければ、ミイロと私は出会ってないのだ。
そう分かったところで、目が覚めた。
・ ・ ・
明るい光のカーテンはもう慣れた。最初はどこだと思ったけれど。
私は言うと決めた。シショーと、ミイロに。お母さんのことを。
「ミイロ。私シショーに言いたいことがあるの。一緒に来てくれる?」
「もちろんっ!」
思った通りのコメント。私はシショーのもとへと足を速めた。
「シショー、昨日聞いた謎解けたよ。お母さんのこと。」
「あ~!」
ミイロが驚く。シショーは笑顔を崩さないで私を見ている。
「私…。シショーの子だったんだね。で、ミイロが迷子の子。シショー、ううん。お母さん。私、今日からお母さんって呼ぶよ。」
思い切って、言った。お母さんははぁと息を吐くと、小さく拍手をした。
「どうやって、思い出せたん。まぁ、そこはいいんやけど。正解やな。」
やっぱり、あの夢は空想じゃなかったんだ。
「メリちゃんとミイちゃん、そんな名前ついたんやって思ったよ。ミイちゃんを見つけてすぐ、2人は人間にとられちゃったんや。名前もまだつけてなかったんやよ。悲しくってね。だから、なるべく2人には楽しんでほしかったんやけど。そんなこと気にしないよなとか思ってたんちゃうかな。もう大人やな。」
お母さんの目から涙が出てる。だから、アイちゃんのこと言ったときに思い出したのかな。
よかった、本当に。お母さんを見つけた。私の目的達成は、夢の力を借りて現実にできた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます