第9話 目的

アイちゃんのこと、シショーにも言った。

「…。その子なら、信じられるかもやな。」

何か、過去を思い出しているようだった。とても、悲しそうな感じの。その顔の意味は、あとに知ることになった。でも、シショーは笑顔で、

「ま、楽しんでな~。」と。シショーなら、いつでも大丈夫なはず。

      ・      ・      ・

 アイちゃんとの、お出かけの日。シショーがまたコートなどを用意してくれている。

「じゃ、浜辺行こ!」

「さ、いっきましょ~!!」

やけに張り切った、シショーを先頭に波辺に行った。

 私たちが、変身するとこの前は、すぐに出れる状態だったけど、今日は…。

「わっ、ぐっしょり。」

「あっ、ごめ~ん。忘れてたわ~。」

忘れてたって、何を…。で、シショーが指をくるくるすると洋服は乾いた。

「待ち合わせ、水族館でしょ。行ってら。」

「はーい!!」

・      ・      ・

 アクアリウムに着くと、アイちゃんとロイちゃんがもういた。きょうは、アイちゃんたちにかわいいお店とか色々教えてもらうことに。

 途中で、お話しをしているとこんな話題になった。

「ねぇ、メリオちゃんとミイロちゃんは、逃げちゃったんじゃないんだね。」

と、アイちゃん。

「あ、うん。そうだよ。」

「じゃあ、何しに来たの?ほら、目的とか?」

と、アイちゃんが言うと。

「こらっ、ちょっと失礼でしょ。」

と、ロイちゃん。

「あ、いいんだよ。知りたいことは、何でも言って。」

ミイロ。そのとおりだ、と私もうなずく。何しに…。目的。そうだ、前から知りたかったことを知るためと、もう一回かいるに会うためにここに来たんだ。前から知りたかったこと…。あ。

「お母さんを探すためと、かいるに会うためだよ。」

『お母さん』。久しぶりにこれを人に話す。

「…お母さん。」

「私、ずーっと小さいころにアクアリウムに来たんだ。小さすぎて、全然覚えてないけどね。それで、家族を知らなくって、でお母さんが最初に思いついたんだよね。」

アイちゃんたちが、だまって聞いてる。みんな真剣な話だって分かるのかな。

「人魚はね、どうしてもつらいことは頭から勝手に離れちゃうんだ。きっと、お母さんとの別れがつら過ぎて覚えてないんだと私は思うわけよ。でも、どうしても知りたくて。」

「…、そっか。なんかすごいな。大人だね、2人は。」

憧れる、とアイちゃんは付け足した。

「ありがと。」

憧れる人が目の前にいるのってどんな気分だろう。さっきからアイちゃんもロイちゃんも、私たちをがん見してる。ちょっと、かわいい。

「お母さんを探すの私応援するよ。だって、メリオちゃんとミイロちゃんは私の願いたくさん叶えてくれたもん。」

「え、願い…?」

私はアイちゃんから願いは一度も聞いたことはない。なのに。

「うん!願い。メリオちゃんとミイロちゃんを見に行ったあとは、いいことがいっぱい起きるの!!だから、願いがあるときは、見に行ったんだ。」

そっか。知らないうちに願いたくさん叶えてたんだ。

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