第8話 元の家

今日は、シショーの人魚講座がある。昨日、

「明日、教えることがあるんやけど、集まれるかな。」

と言われた。

 なにすんのかな。って思いながら言われた時間に集まってみた。

「おっ、きたなあ~。」

「シショー!!今日は何をするの?」

気が早いな。ミイロ。

「うふふ。興味あるんやね。」

「はいっ。興味あるっ!!」

はぁ。もう、シショーに敬語を使わないのも慣れてしまったかもしれない。

「今日は人間に変身する方法を教えてあげようと思っているんやよ~。ちょっと大変かもしれんけどな~。」

人間に変身か…。出来たらかいるのとこに行けるかな。

「じゃ、浜辺でやるからきてなぁ~。先行ってるから~。」

「はーい!!」

2人で声をそろえる。

 浜辺について、顔を出すと。

「あ、きた~?」

と言う美しい女性が立っていた。

「えっ!?シショー??」

えっ、あの人シショーなの!?言ったら失礼だから言わなかったけど、本気で思った。すると、ポンッと人魚に戻ってすぐ横にいた。

「こんな感じで、慣れると簡単やよ~。」

ニコニコしてる…。

「じゃ、教えるけど~。」

・      ・      ・

何時間たっただろうか。夕日がきれいな時間になって、私たちは変身の練習を終わらせた。

「えいっ、あっ…。でっきターーー!!!ヤッタ――!!」

ミイロはやっとできた。でもまた、戻るのにも一苦労。私はちょっと練習すると、すぐできたけど…。まぁ、大変だったわよ…。

「上手やな~。メリちゃん。ミイちゃんもがんばれな~。」

そういえば、練習に夢中で忘れてたけど…。

「あの、これで人前にも出れるんですか。」

「うん、そうやけど…。人魚にある力は人間を傷つけることもあるから、いろんなとこを隠さなあかんよ。」

「そうなんですか。あの明日、元の家に戻りたいんですけど。いいですか。」

「えっ、行くの!?私も!!」

「いいんじゃな~い?2人で行ってきな。あ、そうだ。いいもんあるから明日あげるよ。」

いいもの?なんだろ。

・      ・      ・

 朝になって、シショーがいいものをくれるらしい時間になった。

「えっと~、あ、あったあった。メリちゃーん、ミイちゃーん。」

「なんですか。」

「ん、なーに。」

タンスの中から顔を出したシショーはたくさんの物を持っていた。

「これ、あ~、あとこれ。ま、いろいろあるから。」

「お~。」

私たちが、目を通していると、シショーが説明してくれた。

「これが、マフラーね。外寒いから。で、これが眼鏡。瞳に不思議な力があるから、隠さんといけんよ。あとここらのガラクタは自由に売りんさい。『リサイクルショップ』があるからな。」

その他にも、コートやブーツなど寒さ対策の物や、力を隠すための物などいろいろあった。

「浜辺まで一緒に行くからな~。」

そうやって、浜辺まで行った。

「じゃ、気つけんさ~い。」

「はーい!」

せーので、人間に変身し、シショーに貰った服などを身に着けた。

「行ってきまーす!!」

「うふふ、行ってら~。」

・      ・      ・

 まずは、『リサイクルショップ』に行く。

「いらっしゃいませ~。」

たくさんのガラクタを高値で買い取ってくれるいいところだった。とにかくいっぱい売ったから1200円くらいだった。あんなガラクタ貰ってうれしいのかしら。つぎは、『アクアリウム』!チケットを買うらしいんだけどお金いれて『ポチッ』ってするだけで簡単ってシショーは言ってた。ま、その通りだった。

 眼鏡をしてヘッドホン付けてる怪し~い雰囲気の美女が入ってきたらみんなびっくりしてた。まっすぐ向かう先は『人魚ゾーン』!!…だ・け・ど。入口からどうやって行くのかぜんっぜんわからないよ…。

「あの~、人魚のいた…じゃなくている?場所ってどこですか。」

近くにいた人にミイロが聞いてみた。

「あ、人魚の場所はこっちだと思いますよ。」

優しくってよかった~。

『人魚ゾーン』についた。おっと、あれは…。か・い・る!!でも忙しそうだから、話しかけられない…。残念。

 あれ、誰もいないはずの水槽に人が集まっている。なんだろう。私たちも、のぞくことにした。すると、たくさんの私たちの写真やかいるたちのメッセージなどが貼ってあった。

「すごい…。」

「うん、すごいね。」

そこには、たくさんのプレゼントをくれたアイちゃんのメッセージもあった。

『かわいい人魚さんたちを見るとアイもかわいくなれます!だから、人魚さんたち早く戻ってきてほしいです。』

他にも、近所の人からも、

『こんなにたくさんの人があいつらのことが好きだったなんて、知らなかったから。ゴメンナサイ。』

そして…。

『どこにいるか分かった人は、お知らせください。』

と、かいるから。

「私たちを探してるんだね。」

うん、とミイロがうなずく。すると…、

「えっ、あれっ。ちょっとお姉ちゃん、来て。ほーら、はやく~。」

ん、なんだ。と思っている間にその声の子が現れた。

「あの、ちょっといいですか…。あなたたちって…。」

その子の声をさえぎるように、後から来た人が、

「すみませんっ。ちょっと、アイっ。あの、アイがほんとにすみません。」

「あ、いや。いいんですけど。」

『アイ』って言ってたから、きっとあの『アイ』ちゃんだ。

「あの、ちょっと来てもらってもいいですか。」

「えっ!?アイ!?えっ~、いいですか。」

私たちに興味津々な子と、その子を止めようとしているお姉さん。

「私たちは、いいですよ~。」

私も、と言うようにミイロも「うんっ」と言った。

・      ・      ・

 水槽の影の端で話をしている私たち。

「あ…の…、あなたたち! メリオちゃんとミイロちゃんですよねっ。」

あ、わかっちゃったんだ。人間に変身したっていっても顔とかは変わらないもんね。

「え~と、はい…。そういうことだけど…。」

「あ~、やっぱり!!お姉ちゃん!!だよだよ!!」

かわいい。

「あの、わたしはアイです。」

「うん、いつもプレゼントありがとうね。あ、メリオだよ。呼び方は自由でいいよ。」

「そっか~。敬語じゃなくていいよ。」

「え~、人魚の2人と友達になれるなんて~!!」

と、アイちゃん。すると、お姉さんが、

「わたし、ロイです。」

と、挨拶してくれた。

ニコニコ話していると、アイちゃんが。

「来週、遊べるかな。2人は。」

「え、うん。いいよ。」

と、遊ぶ約束をした。

 わたしの里帰り?はこんなだった。

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