第7話 うみ

「ララララ~、ランラッラ~。」

女の人(人魚)の歌声で目をさました。目を開けると小さな魚がちょろちょろと泳いでいる。水槽に魚なんていったっけ。

「あ、おはよ。メーリオ。」

「…おはよう。」

ミイロが顔をのぞいてきた。

「シショー。起きたよー!!」

「オ~ケ~。」

シショーとよばれた人(人魚)が奥からでてきた。そして少し驚いたような顔をしたけれど、笑顔になった。

「おはよ~。えっ~と…。」

「わたし、メリオです。」

ミイロから名前聞いてないのかな。

「そっか~。じゃ、メリちゃんやね。よろしく。」

「あ、よろしくお願いします。」

「うんうん。」

そう言いながら奥に消えていった。

「ねぇ、ミイロ。あの人…。」

「あぁ、シショーだよ。」

話すと長くなるけど、ミイロから聞いた大切なとこだけ言うと。

『かいるに逃がされた私たちを見つけて、家まで連れて行ってくれたらしい。本名はわからないけど、私たちが弟子で、あの人が師匠だから『シショー』って呼ぶらしい。』って感じ。

「ねえ、私たちどこにいるの?」

「あ~。」

わかるのかな。って思ったけど、そのあとの言葉が…。

「どこだろね。シショー!!ここどこーーー!!!」

そしたらシショーが出てきて。

「顔だしてみ。」

って言いながら指で上をさした。言われた通り顔を出すと、私たちが昨日までいた『アクアリウム』があった。水の中に入るとシショーがいて、

「知ってるとこやったやろ。」

と言っていた。知ってるとこって…。シショーの人柄が何となくわかった気がする。

「そだ。メリちゃんとミイちゃん、海、知らないんやろ?案内するからついてきな。」

そう言われてついて行った。するとそこにはぜんっぜん知らない世界が広がっている!!なんて想像していなかった。かいるは人間だからこんな世界知らないかなぁ? もし、知らなかったら…。教えてあげたい…。ううん。会いたい…。

そんなしてたら涙が出てきちゃった。

「メリちゃん…?だいじょぉぶ?つらいことあったんやったら何でも話してな。」

「…はい。平気です。」

海は行ったことがないのに、懐かしい感じがする。人魚の『ホンノウ』ってやつかな。私は海が好き。でもそれより、かいるが好き。かいるの代わりはいないんだ。って今更のことを思ってるわたし。

・      ・      ・

 シショーはいろいろ教えてくれる。例えば…、

「人魚の歌声は不思議な力を持っているんやよ。」

とか…。あとは…、

「人魚は嵐を呼べるんやよ。」

とか。まぁとにかくたくさん。

「あっ、忘れてた~。メリちゃん、ミイちゃんきて~。」

「ん、何~。」

「ミイロ、師匠なのにそういっちゃ。」

「いいんやよ。好きに話しかけ~。」

まったり人が多い海なのかな、って今思った。

「あのなぁ、昔に1回でもその人魚を見たことがある人は、もう1度見ればその時のことを思い出すんやよ。」

「えっ、でも人魚って何100年も生きるんでしょ。100年前に会ったとしたら、人が違くない??」

「んふふ。そういうのはいい質問やね~。子孫ならいいんやよ。」

「えっと、シショーさん。前世はどうなんですか。」

子孫と前世は同じようで違う。そんなイメージなんだけど…。

「前世はちがう。子孫だ~け。」

「ふーん。」

ミイロと声を合わせて言う。

「これだけやよ。かいさ~ん!!」

そのまんま私は立ち尽くしてしまった。シショーの言葉が心に少し引っかかっているのだ。それならいつか。

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