第6話 『サイゴ』

明るい光で目をさました。

「キノウ、ナニシテタッケ。」

全然思い出せない…。足元にミイロがぐーぐー寝てる。

「今日で、サ・イ・ゴか…。」

言いたくない言葉なのに、勝手に口が動く。さっきから人の声が聞こえないなぁ。そのまんま私はまた寝てしまった。

・      ・      ・

「メリオ!!…メーリーオ!!おーきーてーよぉー。」

ミイロがよんでるなぁ。そんなかんじで目を開けないまま寝たふりをしていたら。

バシッ!!!

「いったいぃ~~!!」

「もう!!起きないんだもん。」

「なんでよ。いつも起こさないじゃん。」

「…いや~、気が向いたからさ。ちょっとね。」

「…サイゴ、だから…?」

心の中で『サイゴ』という言葉がぐるぐるしている。『サイゴ』、『サイゴ』

「ちーがーう!!何??サイゴって何??」

「…ごめん。」

外を見ると、人がちらほら見えている。もう、開店したんだ。

「メリオ!ミイロ!ごはんだよ。」

やった。かいるがくれるおいしいごはん。

「う~ん!おいしーい!!」

ミイロがなぜか言う。

「いつもそんなに言わないじゃん。」

「え~、おいしいよぉ。」

なんで。ミイロがいつもと違う。これも『サイゴ』だから…?

「かいるにもらう、サイゴのごはんだ…か…ら…?」

「もう、何!!サイゴ、サイゴって。『サイゴ』じゃないよっ!!」

『サイゴじゃない…』か。ミイロだってわかってるはずなのに。だからいつも言わないこと言っているくせに。

『あ、人魚さんごはん食べてる!!』

この声は…。『アイ』ちゃんだ。振り返って手を振ってみる。ちょっと仲良くなったのだ。

『わ~。メリオちゃんが手振ってくれた!!。』

…すごい喜んでくれてる。なかなかこんなに喜ぶ子はいないと思う。

「あの子。いつもプレゼントくれてる子じゃない??」

「うん、そうだよ。『アイ』ちゃん。」

「そっか~。挨拶したいね。」

あれ、ミイロがそんなこというの珍しすぎない??もしかして…

「きょうでバイバイだねって伝えたいの…??サイゴだから。」

「ねえぇ、『サイゴ』じゃないって言ってるでしょぉ。」

「あっ、そうだね…。」

『サイゴじゃない』。『サイゴじゃない』。いっくら言われても『サイゴ』って言葉は頭から離れない。

 そのまんま一日が終わってしまった。

・      ・      ・

夜、最後にメリオたちに会う時間になった。やっぱり悲しくって涙が出てきた。

「ごめんね。俺がちゃんとしていれば…。」

今日は、メリオ『サイゴ』、『サイゴ』と言っていて、気になっていたみたい。悲しいんだ。ほんっとにごめん…。そんな思いで俺はメリオとミイロを海に返した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る