第3話 聞いてる

私とミイロは水の中で舞っている。ガラスの外でお客さんがニコニコ見ている。でも、私はお客さんのために舞っているわけじゃない…。外で話している近所の人とかいるを見るためにいる。最近いつも、かいるは話している。いつもこの時間はかいると話すのは私なのにっ!!お客さんはガラスの中の声は聞こえないけど、私たちにはガラスの外の声が聞こえる。近所の人とかいるはこーんな話をしてる…。

―人魚は海に返した方がいいですよ!-

『そう言われましても…、彼女たちは…』

―ここは不自由過ぎます!!自由な海が一番いいですよ!!-

『ですから…、勝手に海に返したら他のお客様が困ってしまうので…。』

―そろそろ時間だから、また明日!-

『あっ、ありがとうございました…。』

私たちをここから追い出そうとしているようにしか聞こえない!!人魚が嫌いなのかなぁ…。私たちに聞こえてるなんて知らないで、あんなひどいこと言って!!あの人たちが一番嫌い!!あんな話聞きたくないよ…。

「ミイロ、さっきの話のことだけど…。」

「えっ、さっきの 話って??」

えっ!!ちょっとミイロっ!!何言ってんのよっ!!

「だから、近所の人とかいるの話だよ。」

「あぁ、あの話かぁ。うん、それでどうした?」

「あの人たち、私たちのこと追い出そうとしてるんじゃないかって。」

「えっ!!かいる君がぁ!?」

もう、何言ってるんだ、ミイロ。ちゃんと人の話を聞いてよ。

「かいるじゃなくて、近所の人だよっ!!ミ・イ・ロ!!」

「あ~!!そっか!!」

ミイロはまたお客さんの前に行ってかわいい踊りをしてる。すごくのんき。まぁ、いいや。ミイロを見ながらそう、思った。

 次の日も、その次の日も、そのまた次の日も。かいるは忙しいのに近所の人と話す…。土管の部屋から私は、ずっとそれを見ていた。…。あの時、私たちの生まれた所を教えてくれなかったのは、私を悲しませないようにしたかったからなのかな。でも、私そんなにバ・カじゃないよ。

 かいるはどうしても私を悲しませたくないみたい。次の日、朝起きたら水槽の所にカゴが置いてあった。なんだろうと思って、かいるに聞いてみたら

「最近メリオたちのファンが増えて、プレゼントを渡したい人がたくさんいたんだ。だから、あのカゴにいれてもらうんだよ。貝がらとか、ビー玉とかくれるらしいよ。」

って、言ってた。そうなんだ。で、その夜カゴを見てみたら、貝がらとかがいっぱい入ってた。その中でも、丁寧に封筒に入れている子もいた。『メリオちゃんへ』と『ミイロちゃんへ』に分けてあって、『アイ』って子がくれているらしい。

きっと、お客さんは『この水族館面白いな。』って、思ってると思う。それで、貰ったプレゼントは土管の部屋に飾ってみたの。キラキラでいい部屋になってくれたわ。ミイロも飾ってたけど、気に入らなかったらしく何個か、私にくれた。これで、落ち込んだ時に部屋に入れば、ちょっと笑顔になれる。でも…。

部屋から出れば近所の人とかいるが話してる。最悪…。

―で、人魚の件ですけどー

『彼女たちはここが好きだという事ですので、そろそろ…』

―だから、あいつらがどう思っているかは、どうでもいいの。俺らがあいつらのことを可哀想だと思っているかが重要なんだよ。―

『可哀想なら、勝手なことはやめて彼女たちが自由にできればいいのではないですか??』

うん、そうだよ。私たちの場所は私たちが決めたいよ。私はここにずっといたいのに…。

―そういうのじゃねーの。もういいさ。また、明日!!-

『あっ、はぁ…。また、お越しください。』

なんで、毎日あれを続けるの??ねぇ、なんで??教えてよっ!!

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