第五十九話 聖戦舞祭:決着後の仲直り2

「有栖川姫子選手、対戦相手の反撃により気絶した様子だ!カウントダウン始めるぞ! 1--!」


舞台上に落ちてきてうつ伏せで倒れ伏してそれっきり動かなくなった有栖川さんなので、気絶してるだろうと思いカウントダウンを始めるローズバーグ会長である。


「そ.....それにしても.....森川梨奈さん.....いつの間にそれを習得してんのー?あの....なんだっけ?」

「<敵撃受身瀕死後五倍反撃術式(ゲンドロッス・エイビアーズ)>ですわ、春介さん。さっきの森川さんが起き上がろうとする瞬間に、彼女の胸の辺りが数秒間で光っていて円形の術式模様がぴかぴかしてましたでしょう?それが術式が発動中の証でしたの。その現神術を身につけるためには、まず訓練時にいくつかの段階をクリアーしていく必要がありますの。最初からは自分の体内に流れている<神使力>を肺に集める感じにし、5秒も経ったら、肺に集積させた<神使力>を心臓あたりに移動させてそれから胸部全体に広げていきながら胸のところが若干痛みを感じる程な静電が満たされるように痺れたり熱く光っていくようになるイメージを思い浮かべなければなりませんのよ。殆どのヴァルキューロアはその繊細で精密なまでの感覚を掴むのが難しくて例えそれを試しても円形の術式模様が胸部に出現しないものとなっていますけれど、森川さんがそれが出来るということは(ゲンドロッス・エイビアーズ)を使うのに適性がありますわよ。それも、十分以上に。」


遼二の問いにそう答えたエレンだけど、

「にしし~~。梨奈ちゃんは本当に天才なんだよね~。<神の聖騎士>だけじゃなくてそれ以外の普通のヴァルキューロアでも<ゲンドロッス・エイビアーズ>が習得可能な技なんだけど、それは極一部の適性あり者にしか身につけられないような超~~特別な現神術なんだから、誰もかれもが使える技じゃないってことだよ。で、わたしが梨奈ちゃんと手合わせしていくと、なんか梨奈ちゃんの身体や忍耐力がちょう頑丈に見えるから<ゲンドロッス・エイビアーズ>を習うように薦めたって訳だよーん。で、殆どのヴァルキューロアがそれの習得に尽力しようと頑張っても一向に技の発動前兆であるあの胸の輝きと文様が現れずに済んだんだけど、梨奈ちゃんはたった2週間だけでそれをやってみせたんで偉いぞーー!にしし....」


ネフィールのいう通りだ。梨奈はさっき、回転していた有栖川さんからあの致命的な3斬の強烈な攻撃を受ける前の直立した体勢にまさに<ゲンドロッス・エイビアーズ>を発動するのにその必須とされる(胸のイメージのあれ)の一連の段階をやっていた最中だったから、結果として見事に効果が出て5倍威力の<赤色中燃炎球(ダリスターズ)>が出たって訳。


「そうだな。で、わずか2週間以内だけで、毎日は昼から真夜中までの過酷な訓練の末に、やっと手に入れたんだー。俺も梨奈の成長速度があんなに恐ろしいものだとは思わなかったよ。」

「そうかーー。ん?し、しかし、さっきのエレン姫の説明だと、<敵撃受身瀕死後五倍反撃術式(ゲンドロッス・エイビアーズ)>っていうのは術者が瀕死状態になる条件が必要だったんだよねーー!?で、この試合は会長の<リンガ>により物理的被害が出なかったからどんな強力な必殺技を受けても気絶するだけで死ぬ直前になるってことはないはず!なのに、なんでリアルな傷も出ず、瀕死状態にもならなかった森川さんがそれを発動できるんだよー!訳わからなすぎて頭が痛くなるよー。」


遼の疑問に対して、

「それは、普通に戦っていた場合にさっきの有栖川さんの攻撃を受けると瀕死状態になってたところでしたからですわよ。(ゲンドロッス・エイビアーズ)の優れたところは例え実際に現実的な傷としてリアルな瀕死状態にならずとも、それに近い効果の攻撃を相手から受けていても発動できるんですのよ。つまり、疑似体験に近い感じの<瀕死状態>であっても必ず条件が揃って発動するのに支障がありませんわ。」


「成るほど。便利なものですね、エレン姫。」

と感心してる遼二に、


「じゃ、これでまたもうちのチームの勝利に終わったな、遼!」

「ぐぬぬぬ........そうみたい......だな..。」

「春介隊長........気にしないで頂いてもいいでござますよ。次ぐに有栖川様が勝てればいいだけの話でございますね。なにせ、<聖戦舞際>はあくまで、ヴァルキューロア同士が聖メレディーツ女学園でお互いが訓練用として参加しておられる対戦大会に過ぎぬでございますから。」


遼の悔し顔にそうフォローを入れたローザさんであるが、

「10---!!!勝者あり!森川梨奈選手がこの試合に勝ち、またも2ポイントが<第4学女鬼殺隊>に配られるぞ!」


10まで数えても一向に起き上がらない有栖川さんなので、会長の審判が下され梨奈がその試合の覇者であると認定されたー!やったーーー!


「梨奈ちゃんーー!やっぱり勝てるものだと思ってたんだよ、わたし!にししー!」

「ふふふ....嬉しいですわね。森川さんがどれほど頑張ってきましたか、わたくしも見てきたんですからなんか胸の奥からほっこりとしちゃいますわよね.....ふふ。」


と、そういうエレンはその巨乳を揺らしながら右手の平をそこに当てている。マシュマロのように押し上げられたそのモチモチの肉球は見る者を一瞬でメロメロにできる魔性の魅力を醸し出す魔法の部位みたいだ! やばい!すごくエッチだ!たぶん無自覚でやっちゃったんだけど、男の俺には刺激が強すぎて全身の血液がある一か所に集中し......


「ルイーズ隊長ー?いきなりなんなんですの? 顔真っ赤ですわ。具合でも悪いんですの?保健室でも行ってきてはどうですの?」

「い...いや、ちょっとだけ梨奈が勝利を収めたもんだからそれで感動しすぎてそれで高揚した気分になったので身体が熱く感じてきただけよ。別に病気とか異状が出てるわけじゃないし気にしなくていいいよ。」


俺が若干前かがみの姿勢になってるのを不思議がったかそう聞いてきたエレンなんで、そう誤魔化した。


で、10分も経つと、

「ううぅぅ........ん?」

「有栖川さん!身体の具合はどうなのー!さっきのあたしの五倍も威力が高まった<赤色中燃炎球(ダリスターズ)>を受けたんだけどもう平気ー?後遺症とかないのー!?」


と、目を覚まして横たわっていた有栖川さんがふらふらながらも起き上がろうとすると、なんかものすごい心配してる様子の梨奈が口早く色んなことを聞いていく。おい、もっとゆっくりにしてよね!まどろみから起きたばかりのふわふわ脳の彼女はそんなに一気に質問されても返事のしようがないんだよなぁ....。


「わ、私......さっきは物凄い赤い閃光が走ったかと思えば、灼熱のような激痛を感じると同時にそれっきりで意識が途切れましたけど、もしかしてー!?」

「ええ、あんたは負けたわよ。あたしの5倍も威力が高くなった赤色中燃炎球(ダリスターズ)で。」


それから、梨奈の説明が終わった2分後に:


「成る程ですね。<敵撃受身瀕死後五倍反撃術式(ゲンドロッス・エイビアーズ)>を使ったから私の<有栖川流、高速乱舞の刀遊一型>を受けても反撃できたんですよね、それも威力が5倍化された<赤色中燃炎球(ダリスターズ)>で。」

「そうよ。でもあんたのその必殺技.....めっちゃ痛かったわ。まさか同じ世界からやってきた日本人で友達同士だと思ってた相手からそんな容赦ない攻撃がくるとは.....異能力を手に入れたあんたもいいご身分にはなったものなのよね~。」


「あ、あははは.....。まあ、元々ローズバーグ会長の<リンガ>も我々にその恩恵が齎されると知ってますし、多少は少しだけの乱暴で派手なのを持ち出しても森川さんなら平気で受け止めてくれるだろうと踏みましたし、結局は貴女も大事にはならずに回復できましたよね?それどころか、私の取っておいた奥義よりも強力な反撃で以て見事に勝ち抜いてきましたから、結果オーライってところでいいんでしょう?」

「まあ......確かにその通りなんだけど.......少しは友達に対して加減というものを心がけてもいいんじゃないかしらー?本当に強烈な痛みだったんだからねー!」


有栖川さんの弁解....というか言い訳に対してぶぶと不機嫌そうに頬を膨らませてる梨奈に、

「まあ、貴女がそう感じるならお詫びしますね。本当にすみませんでした。実は....これからはもっと強い上級な<神滅鬼>と戦うことに備えるつもりで一も早く実戦に慣れようという私の意気込みもあったものでしたから、それで実戦に近い形のつもりで貴女に対してなるべく手加減なしに挑んだだけのことですが、結局は貴女との事前の知らせもなしで貴女の気持ちも考慮せずに自分の身勝手で強引な価値観の押し付けになっちゃって有栖川家の人間として恥じるべきことをしてしまいました。今度はもうしないから、許してもらえないでしょうか?」


「...........はああ~~。仕方ないわねー。あんたがそこまで謝罪するなら、友達として許すしかないじゃない。ねえ、ルーくん?」

「う、うん。まあ、お互い気合も入って前の2週間の訓練で手に入れた力を試そうという意志もあったんだから、それで色んな無茶をしちまってもしょうがないしね。そうだろう、遼?」


「はは.....そうだね。そんなところかな。なにせ、二人ともは気合の入れすぎで挑発でもっと相手の力を引き出してやりたい一心からか、お互いもヒートアップで罵倒し合ってたし、どっちもどっちでよっぽど勝ちたい意欲が健在で微笑ましいぐらいだ。」

「でも、その罵り合いの時は少々幼稚だと思えたのはわたくしだけなのでしょうか?まるで躾のなってない猫ちゃんが喧嘩してるところに見えましたわよ、ふふ。」

遼の発言にそう突っ込んできたエレンだったが、


「あたしは猫ちゃんじゃないのー!「私は猫じゃないです!」」

顔真っ赤になって見事に息ぴったりで反論してきたお二人さんである。


これなら、もう仲直りも済んだようだな。俺たちは元々日本からの4人仲間なんだからそうでないと、だな!


___________________________________________












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る