第三十二話 聖戦舞祭:氷災の舞い

「それーー!サカラスと戦った時も見せてもらったけど~~~改めて見ればすごいよね~~~ネフィーっちのジェシー・クレファス。」


自分の発動した第4階梯の氷結系の現神術、<熊大口牙齧凄氷結砕刻(ネナルルーネグズ)を現神戦舞装だけで打ち砕いたネフィールを見て興奮したのか、キラキラした目になり関心してるエリーゼがいる。が、


「でも~~~。今度はもっとすごいのを見舞いしちゃうかな~~~~なんちゃって~~えへへへ~~」

悪戯っ子のような顔になったエリーゼは今度、ネフィールに向けて、その小型ロッド、<グラエンズ>を突きつける。


「じゃ!いっくよ~~~。はあああーーー!!大氷ー」

「させないよーー!」

シュウウウーーーーーーーーー!

唱え終える前にジェシー・クレファスの右手に持っている右側の短刀をエリーゼ目がけて投擲してやったネフィールが見えた。


早いー!


その短刀に繋がっている鎖が伸びていくの早すぎて、音速を超えるんじゃないかって思えちゃうよねー!神使力が纏われるその鎖と一本の短刀は青白い光を帯びてエリーゼに貫こうと目前まで迫ったがーー


カチャアアアーーーーーン!!

けたたましい衝突音が鳴り響き、一瞬の間、舞台上が眩く青白く光り輝いて、数秒間その熾烈な輝きによって舞台全体の様子が見えなくなったが、今はー。


「えへへへ~~~。どう、ネフイーっち?この詠唱破棄の<大反発防御障壁(イエクトス)>はー?」


「ルーくん、見てー!大きいわー!」

「あれですわよー!あれー!」


そう。ネフイールの片方の刃が弾かれたみたいで、宙に何回も旋回を繰り返しながら、それで手元へと繰り戻したネフイールが見えた。それもそのはず、今、エリーゼ先輩の全身を360度から覆っているのは淡い緑色の円状型な障壁が展開された。ぱっと見だけで、なんか全高10メートル、直径20メートルの広大な範囲がする障壁だなーマジでーー!っていうか、大きすぎないのか、あれー!だって、教えてもらった通りにあの広い舞台の直径が90メートルだとすれば、障壁の範囲って4分の一割強の全長があって、本当にめちゃくちゃすぎだろうー!


サカラスと遭遇した時にユリンさんの発動したあの真っ白い障壁だって、直径10メートルだったし、あれって2倍も上の大きいさだな、おいー!


「<イエクトス>ですわよ、ルーイズ隊長。あれはセラッスの得意とした上級の防御系の現神術で、複数人を防衛するためにもっとも強力な障壁ですの。この前のサカラス戦でユリンさんの使った中級の<中反発防御障壁(イエクト)>より上の頑丈さを誇る第4階梯の技ですのよ。」

舞台の光景を見てぶっくりな面して絶句してる俺に気づいて、親切に解説してくれたエレンである。


「しかも、それを詠唱破棄で発動してみせたものですから、かなり熟練した特技でありますな。普通は第4階梯の現神術を無詠唱で発動とか難しいはずでございます。まあ、かなり巨大な神使力量の持ち主でなければ、ですが.....。例えば、姫殿下とか会長とか......後、ワタシもー。」


ローザが遼二達と何か話してる最中だが、ここまで聞こえてきたよ。


「<大反発防御障壁(イエクトス)>を無詠唱で発動したぐらいで調子に乗らないでよね、エリー!無詠唱だから本来の威力が半分も落ちるはず! なので、今からいいもん見せてあげるねーー!」

視線を舞台に戻すと、神使力を膨れ上がらせているネフイールはさっきより眩しく青白く光りながら、今度は左手に握り持っているもう片方の短刀をエリーゼ先輩に向かって投擲した。


カチャアアアーーーン!

「無駄だよ~~~~。ネフイーっちのジェシー・クレファスだけじゃこれを突破するの無理よ無理よ~~~。えへへーー。」

またも弾かれた、あの短刀。まるで硬質な鋼鉄の壁に阻まれたかのように、大したダメージを与えられずに無傷の障壁が依然として健在のままである。


カチャアアアーーーン!カチャアアアーーーーン!カチャアアーーーン!カチャアアーーーン!!

連続で繰り出されたネフイールの右手や左手による交互な投擲が始まった。


カチャアアーーン!カチャアアアーーーン!!

片方の手で握り持っている一本の短刀を投擲しては弾かれて、休まずに体を捻りながらもう反対側の手で別の短刀を投擲しても弾かれて、その繰り返しである。それにしても、マジで頑丈すぎるな、あの<大反発防御障壁(イエクトス)>は。

第4階梯の防御系現神術に相応しいほどの阻力だな......。

難攻不落とはそういうものなのかな......。


カチャアーーーーン!!カチャアアーーーン!!

「だから~~~何度いってわかるのーー!?いくらネフイーっちの神使力量が訓練によって上がってきたとはいえ、この<大反発防御障壁(イエクトス)>は第4階梯の防御系現神術なのですよ~~~。さっさと同程度の技を使っちゃいなよ、エリーが待ってあげるからさ~~~。......と、いうと思う~~?」


えー?


「氷結系の現神術、<大凍烈滅千本氷柱(ニラ・フォルーナレア)>。はあああーーー!!」


それを唱えるエリーゼ先輩はあの障壁が発動中なのにも関わらず、別の現神術を同時進行に放とうとするみたいで、小型ロッドの先端にある宝石みたいな丸いもんから次々と湧き出ていって止まらずに大量......というか、夥しいほどの氷の柱を生み出していってあれがすべてエリーゼ先輩の張った障壁を超えて、遥か上の宙まで浮き上がって、綺麗な陣形を形成しながら直下にある舞台を高みの見物から睥睨しているかのようだ。


今、見上げてる限りから、おいおいおい、多すぎるよあれーー!!

数え切れないほどの氷柱が浮いていて、今でもネフィールに雨あられと猛烈なスピードで降り注がれようとする直前のようだ。


「異なる種類の現神術を同時に発動可能なセラッスですが、他の<ナムバーズ>5位以上もできることですのよ、ルーイズ隊長。それに、<大凍烈滅千本氷柱(ニラ・フォルーナレア)>は第4階梯の技で、前のサカラス戦で使った、<中凍烈滅百本氷柱(ニラ・フォルーナ)>より一階梯も上ですわ。当然、威力も何倍以上で、強力なものですわよ。サカラスを一瞬で消滅できるくらいに、ですわ。」

「ルーくん!ネフィーの今の実力って、あれを凌げると思うー?それとも、何個か食らって精神ダメージとして傷つくことになるの?」

エレンや梨奈が話しかけてくるが、俺もあることを思いついた!


そちらがあれを全部、食らわそうとするならー!


「ネフィール!彼女の障壁を狙っても無意味だから、先に上のあれが動き出す前に叩き落せーー!」

「にしー!言われなくてもー」


直ぐに目の前の危機に対応すべく、右手の方の短刀の柄から手を離して、代わりにその近くの鎖の部分を握って、手首の絶え間ないひねり動作によって回転させはじめる!


回転があまりにも早すぎて、目で追いきれないほどにモーションブラーが起きて。回転が続くにつれて、徐徐に鎖の長さも伸ばされていき、遥か上の空に浮いているあの千本にも及ぶであろう氷柱を全部たたき落とさんばかりの勢いで、投擲に至るまでの瞬間に向けて力を溜めているようだ。


その一連の動作はものの5秒にも満たない間だが、先に動いたのはエリーゼ先輩である。


「させないよ、ネフィーっちー!やああああああーーーーーー!!!!」


そう。千本の氷柱が電光石火のごとく、凄まじい速度で豪雨みたいな勢いで降り注いでいく、それもネフィールの方向へーー


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