第三十一話 聖戦舞祭:ネフィール対エリーゼ、開戦

「じゃ、ネフィールー!頑張れよー!」

「はい~~。早山隊長~~~。任せてよねー!あそこのエリーをコテンパンまでに叩きのめしてみせるから、そこの控え室で見ていてねーー!」


「ええーーー!?何いってるの、ネフィーっち~~~。エリーの方がランキングも上のはずだってこと知ってるよね~~?そんな挑発していていいのーー?負けたらかっこ悪いからそういうの控えた方がいいーーです~~。」


ネフィールーに勝利してほしくて、励みの言葉をかけてやりながらそこの待合室へと歩き出していく俺ら7人なんだが、あんなことを自信満々にいっちゃったから、鋭く反応したエリーゼがいる。


「もうー。セッラス、相手の方が強いから自分の士気を鼓舞するべくそんなことをいうのは勝手ですが、わたくしたち第4学女鬼殺隊の沽券にもかかりますから、そんなに調子に乗らないでくださいましー? いくらここ2週間の間に森川さんと激しく手合わせ訓練してきましたとはいえ、期間中のあっちも同じことやってるんですのよー?......ですから、試合中に彼女の行動や仕草を察して、どううまく先行して動きを読めるかが重要になってきますわ。それができれば、勝てないことではないと思いますわよー。」

「エレン様ー!はいー!そんなことわかってますよー。でも、なんとなく言ってみたかっただけですからね、にしし~~。最後の助言もありがとうねー!」


「......まあ、気をつけて挑んできてくださいまし。では、ルーイズ隊長、いきましょうー?」

「....うん。いこう、梨奈。負けるなよー!お前の実力、梨奈に衰えずむしろ上にあるから、信じるからなー!」

「はい、ルーくん。ネフィー、やる気満々なのは知ってたけど、自分の今の実力を過信せずに相手のこと侮らずに真剣に挑みなさいよねー?」

「もちろん~~早山隊長に森川ちゃんー!わたしの試合をそこでちゃんと見ていてね~~。第4の隊員として、この大会でチームのために初の勝利を収めてみせるよーー。」


色んな励ましのことばを彼女にかけた俺らは遼二の第5学女鬼殺隊と一緒にそこの待合室に入っていく。


で、その横であっちのチームの話し声が聞こえてきた、


「エリーゼ先輩、負けないで下さいねー?ただでさえチーム内で食いしん坊ばっかりやっているわ、遼二にべたべさしにいくわ、一年の教室で居眠りばかりして何年も留年してきてるわで怠惰な生徒として有名なあなたですから、これ以上、またも積み重ねて自分の顔に泥を塗らないでくださいねー。」


「まったくですなー!ワタシも有栖川殿の意見には賛成しかありませんー。エリーゼ殿、しっかりしなさいー!せっかく<奇跡の子>二人やその友である森川殿や有栖川殿まで編入してきた才能あふれる新入生が入ってきたばかりだから、年上として、先輩として見せ場がないままだと、彼らに対して示しがつきませんよー!」


「おいーエリー先輩ー!<ナムバーズ>6位であっちのより上にランキングされてるからって油断しないようになー!向こうも僕の親友がついてるチームだし、きっと彼女も著しい成長が見られるよー。 なあ、有栖川ー!?」

「春介君のいう通りですよー。早山君には悪いけど、第一試合では私達が先に勝利しますね。」


と、そんな会話がここまで聞こえてきた。おう、お前らのチームももっと頑張れよなー!じゃないと内のネフィーか他のが簡単に勝てば拍子抜けしちゃうからなー!


で、4人で先に入ってみればー

わあー!中もトイレと同じ作りで豪華だなー!あそこには窓が横長いデザインあって何個も並んで開いていて、舞台を難なく見渡せるようだ。これで試合をじっくりきっちりと観戦できるね。


で、この待合室の上には石の天井があるだけで、階とか何もないが、建築構造としてはあそこの舞台をぐるりと囲んでいる観客席と繋がっている建物のようなところにあるので、ここからでも会長の発動した<防衛対象完全守護(デジョズ)>の影響下にあるので、例えあの二人からぶっ放された現神術の流れ弾がやってきても消滅させてくれる便利な障壁であるな。


「では、第一試合を始める前にまずはこの<聖戦舞祭>についての伝統・歴史・知識について簡潔に説明する。試合開始前の義務みたいなものだからな。では、この<聖戦舞祭>はこの学園の各年に行われてきた伝統的な大会で、開催時期は年の4分の一の最初の期間である、一・二・三月、そのどれかの月に行われる。元々この大会は102年も前に.....つまり、1098年、神援暦の頃に起きたシュフリード打倒戦争の当時に、3月の下旬にメレディーツ聖女の勇敢なる活躍を祝うために創立されたヴァルキューロア同士による試合大会。」


授業で習ったので、もう既に知ってることだけど、会長も義務としてそれを説明しないといけないっぽいので、皆も真剣に会長の言葉に耳を傾けている。


「なので、各年の3月までの下旬に、ここ聖メレディーツ女学園だけじゃなくて、ジャスタールズ王国にある聖アシュードリン女学園やシェファイーアス王国にある聖レベッカ女学園にも開催されるんだよ。というわけで、この歴史ある伝統的な試合大会にて、出場者は各自、切磋琢磨、正々堂々と雌雄を決するんだー。いいなー!2人ともー!」


「はいーー、会長さん~~。この学園に入学して一年間が経ったけど、神滅鬼が2年前から世界中にまたも歴史上あらわれるようになって、それ以来は昔のようにおふざけ出来なくなったから、それでわたしはエリーちゃんとの試合ができなくなってるので久しぶりだから、なんかワクワクしたり懐かしいですー。」

「わかった~~~です~~。ネフィーっちとは小学校6年生の頃からのお付き合いがあるけど~~~ どっちがエレンっちに最も役に立つか張り合ったり競い合ったりばかりして、一騎打ちを何度も申しこまれたりもしてきたけど~~~何度も負かしてきてちょっと飽きちゃうかも~~~です!だから、この2週間であっちの方の<奇跡の子>との訓練にどれほど強くなったか見せて見せて~~~なんか急に楽しみになってきちゃったよエリー~~!」


ふむ。確かに、前にエレンに話によると、一年前、ネフィールがこの学園に編入してきて、もっと数年も前から在籍してきたエリーゼと再開した以来、エレンとかあの変人よほほ先輩と同様に他の<ナムバーズ>みたいに<ランキング戦>の試合等でエリーゼとの正式な試合を経てそのランク数字になってるのではなくて、単なる神使力量の測定によって獲得したランクなんだっけー?なので、あの二人がこの聖戦舞祭で戦うっていうのはすごく久しぶりらしいな。


「シェレーアツ様のご加護がきみたちにあらんことをー。では、カウントダウンするぞー!0まで数えたら試合開始だー!3--!」


「2-! 1-!」


もう始めるみたいね。頑張れー! ネフィール!


「0-!始めーー!」

「これでも食らえーー!<中破白烈雷薙波(ラゼリンーズ)>ーー!!」


試合開始の合図としてさっきから掲げた右手を振り下ろした会長の一連の動作が終わる途端、すかさずネフィールが右腕を横向きに薙ぎ払いながらあの雷系の現神術をエリーゼさんに打ち出した。前の体育室にて行われた現神術学の授業で一度みたことあるんだな、あれ。


横長い白い雷が猛烈なスピードで発生されてエリーゼさんに向かっていく。俺たちだから見えるけれど、大抵の<ナムバーズ>じゃない方の学園生ヴァルキューロアなら目で捉えるのが不可能のようだ。


「そうくると思ったよ~~~!<熊大口牙齧凄氷結砕刻(ネナルルーネグズ)ーー!!はあああああーー!! 」


一秒も満たない間にホルスターから<グラエンズ>という小型ロッドの形の<現神戦武装>を取り出したエリーゼ.....先輩?(さっき遼二の隊員からそう呼ばれていたのが聞こえたけど、彼女って確か、一年生だろうー?まあ、たぶん、留年か何かだろう....)が掛け声を上げながら、そのロッドの先端を目前まで迫ったネフィールの<中破白烈雷薙波(ラゼリンーズ)>に突きつけた。


ロッドの先端から周りの空気を一瞬で凍りつけるような超低気温な真っ白い霧みたいな神使力が吹き荒んで、一瞬で熊の頭みたいな形の固体ができあがって、その凄惨な牙が何本も並んでいる口腔を顎を下げることで露になり、向かってきたあの横長い白雷に食らいつき、霧散させたー!


「ルーくん!すごすぎるわよーー!あれー!」

「.....う....うん。素手で放ったから威力が落ちるとはいえ、ネフィールの<中破白烈雷薙波(ラゼリンーズ)>をあんなに容易く打ち消した恐ろしい氷った個体的な熊の頭部をしている現神術を放てるエリーゼさんってめっちゃくちゃすぎて、なんか振るえ出しそうになるー!」


「震えていて当然ですわよ。あれはオスハイートの得意とする上級な第4階梯として分類された氷結系の現神術で、必殺技クラスじゃないにしても十分な威力が出ますわよ。それに対して、セラッスの<中破白烈雷薙波(ラゼリンーズ)>は雷系の現神術の中には第3階梯として分類されましたから。 そして、この2年間でオスハイートのあれで屠ってきた神滅鬼第6位の階級<ラングル>級の数々は数え切れないほどですのよ。」

そうなのーエレンー!?やばいね、エリーゼってー!むしろあの怪物より彼女の方が真の化け物なんじゃないー?あははは...... 


で、確かに先生によると、前の現神術学の授業で俺と梨奈の放った赤色中燃炎球(ダリスターズ)は中級の技みたいだけど、正確な威力測定でいうなら、第2階梯の炎系の現神術であるみたいで、どうやら舞台上に戦っているあの二人の放ったものより弱いものだった。まあ、あの時の梨奈みたいに、使い手の神使力量によって威力の差も出るから、どんな技を使っても使用者によって結果が異なるな。ちなみに、授業で習ったんだけど、どうやら初級の現神術は第一階梯だけで分類されて、中級の技は第2・3階梯まで、上級の技は第4階梯以上だ。


「当たり前だよ、ルー!内のエリーゼ先輩がきみのチームメイトに負けるわけないじゃんー!なあ、有栖川ー!?」

「そうですね。<ナムバーズ>6位ですし、あっちのネフィールと昔からライバル同士だと聞きましたけれど、ずっと負けずに彼女との勝負を何度も勝ち抜いてきたエリーゼ先輩って本当に侮っちゃいけない方ですね。そんな調子なら、第一試合では私達の第5チームがさっきに一点もらえそうですね。」

「いいえ、油断大敵でございますよ、有栖川殿に春介殿。確かに、昔から今まで一度もネフィールが勝ったことがありませんが、それでもここ一年間で一切の勝負をしなくなるので、多分、何かしらかの成長があるかもしれません。」


「その通りですわよー、ファイットレーム。この2週間で、森川さんやセラッスがどれほど努力して訓練に勤しんできたか、直にセラッスから見せて差し上げる予定ですわよ。ね、ルーイズ隊長?」

「そうだね、エレン。確かにあの熊の頭の出るエリーゼ先輩の現神術はすごすぎてこっちまでビビッてきたけど、生憎と内のネフィールの実力は昔とは比べられないほどなものだとエレンが保証できるぜー?」

「そうなのよね。だから、有栖川さん、春介くん。あまり浮かれすぎないようにねーー?」


「「あはははは......わかったよー!(ふふふふ.....わかりましたよ。)


「<現神戦武装>なしでエリーに挑むとか正気です~~~~? やあああああーーーーー!!!」

あの熊の頭をしている氷った固体がまるで首を伸ばしにいくかのように、エリーゼ先輩の叫びと同時にネフィールに向かって齧りつかんばかりと猛烈な速度で伸びていくが、


「はあああーーー!!<(現神戦武装縮小兼元形変戻(ニスファル)ー!!>


そう叫んだネフィールの声がここまで聞こえてきたと同時に、彼女の眼前まで迫ったあの熊の頭を模した氷性固体が粉々に打ち砕かれていく。


現神術で発生された現象はそれと同程度で、かつ相応な神使力がないと打ち消したり、無力化したり、圧倒することができないと言われてるので、あれってー!


「にしし~~。エリーちゃんのその程度の現神術だけなら、今のわたしじゃわざわざ第4階梯の技を使って迎撃するまでもないんだよーー。にししし~~~。」


そこには、あの2本の短刀が鎖によって繋がっている現神戦武装、<ジェシー・クレファス>をそれぞれの柄の部分を握り持っているかっこいいポーズを取っているネフィールがいるのであった。なんか、別に攻撃とかかけてる最中じゃなくて自然体で立っているだけなのに、それでも彼女の全身が青白く光ってるから、それが何よりあの娘の今の神使力量の多さや質を明確に表している現象なのだな。


やっぱり、そうなると思ってたよー。


今のお前や梨奈の実力、この2週間の訓練期間で嫌というほどずっと見せられてきたからなーー!そんな調子で、初めてあのエリーゼ先輩に勝って戻ってくれよなーー!信じるからな!チームの隊長として。


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