第三十話 聖戦舞祭:幕開け
4日間後、
1200神援暦1月、金曜日の31日、週最後の平日、学園の放課後から午後5:00時である。
ざわざわーーーざわざわーーー
<聖メレディーツ・コロシアム>にて、大勢に集まってきてる観客がいて、ほとんどが学園生ばかりだけど、家族をつれてきた生徒もいるので、ちらほらと見受けられる若い男の子や老人、おっさん、おじちゃん、おばちゃんまでいるようだ。まあ、まったく知らない俺たちの試合をどうしても生身で直接その目で見に行きたいと思ってる奇特な方々はあまりいないので、わざわざ足を運んでまて応援しにきた人が少ないんだけど...........。
「じゃ、学戦舞祭<バトルエンタメー>のルールに則って、聖戦舞祭を始めようとするんじゃが.....一つ目の試合の前に、まずは......ローズバーグ生徒会長、御主の出番じゃな。」
「承りました、ゼンダル王国の女王よ。」
そこ観客席の列の中心部分で、ボックス状の特等席が複数あるところに、生徒会の主要な面子と一緒に同席しているのは、他の誰でもなく、この王国のネネサ女王だ。で、ネネサ女王の指示に従って、会長が.....
「<防衛対象完全守護(デジョズ)>ー!」
と唱える会長は観客席すべてを覆い尽くす透明な障壁が出来上がった。
そして、間髪いれずに、またも、
「<物理被害の精神削痛変換(リンガ)>ー!」
フェルリーナとの最終決戦で戦った時と同じく、会長がまたもその二つの2種類の現神術を観客席へと参加者である俺たち8人へとかけてくる。
今、この舞台上に立っているのは俺と隊員メンバーである第4学女鬼殺隊の仲間たちや遼二率いる第5学女鬼殺隊の面々である。会長があのリンガを発動した時は前に経験したことみたいに、ぶっとい緑色の糸が会長の手から伸びて俺らの全身を包んできた。
これにて、俺たちが互いに攻撃し合っても、物理的なダメージを負わずに傷つくこともなく戦えるが、その代わり精神ダメージとして変換されそれで脳内の痛覚だけ感じるようになり気絶することもある。
なので、そうなったら選手の中に誰かが気を失ったり倒れたりしても10まで数えてもらってそれでも起き上がれずにいるのだとしたら負けと認定されちゃうんだよねー。でも、この前のフェルリーナ戦と違って、9位である彼女の実力より、現在は異世界組みの俺たちの神使力の方が何倍もつよくなってきたし、なにより<ナムバーズ>3位、4位、6位や7位までもが俺たちの隊員に属してるので、たとえ観客への被害があの障壁によって皆無になったんだとしてもこの舞台自体がこの<物理被害の精神削痛変換(リンガ)>の影響下にないんだっけー?
だって、あくまでそれの効力が発揮されるのは対象である俺たち8人だけだから.....それに、その現神術には人間や思考ある者にのみ効果があって、思考力や意識が一切ないここの物理的な物である石製の舞台には影響を及ぼさない。
なので、何が言いたいのかというと、もし俺たちの強烈な現神術や武器による攻撃で舞台が破壊されたら、どうやって戦っていくのかってことなんだけど、それに関してー
「神使力反発物質強化(ミルゼイーシ)」
そんなこと考え込んでると、またも会長からの声が響いてきた。
ふと視線をボックス状の特等席にいる会長に向ければ、彼女の手からは今度、柔らかくて穏やかな印象が醸し出される青白い波動が発生され、あれが俺たち8人の身体に浴びせられてきた。見る見る内、この光が徐々に広がっていき、やがてこの舞台全体を覆いつくす。
「ルー、なにこれー暖かいねーー!?」
「ルーくん、じゃなくて、ルー隊長ーー!ちょっとだけ気持ちいいのよね、この光ー!」
「ほっかりしてる気分になりますし、会長の放ってきたこれって何か陽性的な効果がありますかー?」
仲間3人からそんな声が聞こえてきたけれど、元々この世界の住民であるエレン、ネフイール、ローザやエリーゼは大して気にならないらしく、勝手知ったる顔でこの光に包まれるのを黙って受け入れるだけで、あまり反応が薄いように見えるけど、なんかネフイールやエリーゼを見てみれば、ニコニコ顔だったりとか気持ちよさそうに頬を綻ばせたりと反応豊かで面白いー!
「ミルゼイーシだ!新入生4人の諸君へ。それにて、きみたちから発生された神使力はその舞台を傷つけなくなるんだ。この現神術の効果はまあ、壁とか建物とかが現神術等の影響で破壊されたり崩れないようにするための方法である。効果を付与したい物に向かってこれを浴びせるのだが、別に生き物には害がなく、一切の影響をきみたちの身体には及ぼさないので安心してくれ。ちなみに、発動したら効果は一週間も保つ超高度な現神術なのだーこのミルゼイーシはーー。」
なるほど。これでいくら暴れていても舞台が壊されることないんだなーー。
「じゃ、今年の学戦舞祭<バトルエンタメー>は本日の<聖戦舞祭>以外に、これからいくつかが開催される予定があるんじゃが、今年度、初の学戦舞祭にて出場されておる聖メレディーツ女学園の生徒の中に、<ナムバーズ>としてランキングされておる4人がおるんじゃ。彼女達は、3位でエレン・フォン・シェールベットで、4位であるローザ・フォン・ファイットレームで、6位であるエリーゼ・フォン・オスハイートで、最後は7位であるネフィール・フォン・セーラッスなのじゃ。で、この4人の中に、エレンは我が娘でもおるけれど、だからって特別扱いはせず、他の学生と同様に公平な判定だけが下されるんじゃよ。それはこの生徒会長もアイシャ王女も同じく、地位など関係なしにみんなが平等に扱われる一流な国際的学園なのであるんじゃ。ヴァルキューロアの育成機関としても重要な役割を担っておるからのうーーほほほ....... 」
少し間をおいてから、続く女王、
「で、今日の試合に、審判役を務めておるのは前回と同じく、ここのローズバーグ会長なのじゃよ。おっと、忘れちゃいかんので、観戦しにきた観客たちには既に知っていることじゃと思うんだが、無知な人の為に説明してやると、そこの場で出場しておる他の4人は今年度の新入生ではおるが、二人だけはこの世界で初の男性ヴァルキューロアであり、リリム聖虔白女から<奇跡の子>と名づけられたんじゃよ。凄いじゃろうーー?ほほほう.......。」
俺たちのことについてそう簡潔に紹介してくれたけど、なんで笑ってんのー?乗りがおじちゃんっぽいな女王様だな、おいー!まあ、いつものことなんだけれども.....。
「で、神滅鬼がここんところその出現頻度やその量・強さが増してきてるばかりなんで、精進してもらえるように、今日も頑張ってくれいーー!このゼンダル王国の女王として伝えたいことはこれだけじゃーー!会長さん、次は御主からのうーー。 」
「了解しました、ゼンダル女王。」
短くそれだけ返事した会長は銀髪を風に靡かされながら、真っ直ぐに視線を斜め下にある舞台上の俺らへと注がれる。
「では、くじびきで対戦相手を決めてもらう予定だったが、それだと強さレベルの差が明らかに離れてるもの同士が戦っても意味ないから、女王との話し合いの末に、決定されたことがあった。それは、実力の近い者同士のぶっつけ合いなんだー!」
そう宣言してきたローザバーグ会長なんだが、前から俺たちとの間でそれっぽいことになりそうだなって予想したんで、今更おどろきもしないねー?そうだろうー?お前らー?
で、それぞれの所属してる部隊に集合して並んでる俺らなんだけど、沈黙を保って真剣に会長の話に耳を傾けている最中の仲間の顔を窺ってみれば、彼らも俺と同様に同じことを思ったらしくて、驚いたりしない。
「最初の試合はーー第一試合はーー!リシェールくん、その公式書面を持ってきてくれー!」
「-!はーはひー!会長ーー....。」
急に名を呼ばれて後ろの席に座っていた会計職のリシェールがびくっと反応したけど、そういえば、彼女って確かに人見知りで内気っぽいんだっけー?
会長が彼女から手渡しを待っていると、俺も考える隙ができる。
ついに来たな、この日。
いよいよ遼二の第5学女鬼殺隊と戦う聖戦舞祭がようやく、幕を開けようとした!
なんか緊張してきたな.......遼二、有栖川さん、お前らもそうだろうー?
もしそうだとしたら、分からなくもない。
だって、この異世界へ召喚された一ヶ月近くが経ったけど、例え実戦であの怪物どもを実際に殺っちゃったことある俺、梨奈や地元民の仲間であるエレン、ネフイール、ローザやエリーゼであっても、リアルな武器を握って他の人間と戦うのって相当に気分が落ち着かない。それに、遼二や有栖川さんはこの2週間の間に、確実に訓練場で<現神戦武装>を使ってきたとはいえ、お互いに身内同士で別々のチームにいる俺らと手合わせをするのが今日が始めてになる。
なので、緊張しちゃって当たり前だろうー?
「うむ。持ってきてくれてありがとう。座ってくれ。では、一試合目は..........」
なんかわざと間を持たせている会長なんだけど、ドラマチックにせずに早くしてくれよなー!
こっちがドキドキしっぱなしで落ち着かないからー!
「なんか前置きが意図的に長い気がするけれど、あれって僕たちに対して嫌がらせ....というか、いじりすぎじゃないー?なあ、有栖川ー?」
「そうですね。君の言う通りですよ、春介君。まあ、我慢して待つより他ないですねー。」
「最初ー!ネフィール・フォン・セーラッスVSエリーゼ・フォン・オスハイートだー!両者、前へ並べーー!第4や第5に属している他の出場者はそこの裏の待合室にて、窓から観戦してくれー!」
よく響く声や落ち着いた表情してる会長からの指示が出たよー!
最初の試合が発表されたー。やっぱ、始めはネフィールだなー!
俺の左隣に立っている暢気な顔してるネフィールがいるが、ふとあっちに視線を向ければ、遼二のチームメイトであるエリーゼもニコニコ顔でなんか楽しそうにしてるけど、あれって性格が似てるもの同士の対決になりそうで、よかったな、<悪戯好き少女>よーー!
「にしし~~了解ですー!会長さん~~。」
明るくて元気な声でいう彼女は前へ足を踏み出していくのであった......。
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