第八話 早山ルーイズサイド:神滅鬼の襲撃4

軽く目配せを交わしたら、この壁の上から梨奈と共にあの平野、<サラドン平野>へと飛び降りた。まあ、俺と梨奈はまだ飛行系の現神術、<ロアンヌ>が使えないので普通に<神の聖騎士>として上がった身体能力で跳躍したけど。

ドッ!ドッ!

「グワオオオオオーーー!!!」

着地したと同時に、こっちへ素早い動きで向かってくる人型な爬虫類の姿をしている<神滅鬼>が10体もいる!牙がいっぱい口元から見えて、全身が緑色で彩られた凶暴な見た目をしている。


まあ、神滅鬼は自我がなく、人の言葉も喋れないから意思疎通は無駄だと授業で習ってきた。あれらの行動原理はただ一つ。それは、神使力を持つ生命体ーーつまり、人間全般の身体を貪ることのみ。そう。戦闘可能なものを持つか持たないかに限らず、だ。よって、高い神使力を有するヴァルキューロアと俺たちなら、真っ先に狙われるのが自然である。


「グワアアー!!!」

獰猛な動きと咆哮と共に10体は一斉に俺らのいる位置へ飛び掛ってきたけど、刹那の間に、閃光が走ったかのように見えたーー!

「はああっー!」

凛とした掛け声がしたら、10体は次々と切り伏せられていく。ある一体は首が胴体から切り飛ばされて、ある一体は胴体から下.....つまり両脚が切断され、ある一体は全身が縦横無尽な模様で不規則的に切り刻まれて血飛沫と共に、息絶えた。すげええな、ありゃ!視力、観察眼と目視能力も上がった俺でさえ半分以上ぐらいしか見えてないから、きっと梨奈も自身の振るった攻撃でも目で捉えきれないだろう.....。

「うわあーーー。やっぱり、グロイわね.....この<現神戦武装>って。選択に失敗しちゃったのかしら....?」


そう。あれらを全てやつけちゃったのは他でもない、俺の隣にかっこよく斜め立ちなポーズをしながら、金属性な重そうな細長い銀色な鞭を構えている我が幼馴染、森川梨奈がいる。

「<キルスカ>と呼ぶんだっけー?あれ?」

「そうね。なんとなく、そう名づけたいだけよ。....それにしても、切り心地がいいね、これ。相手が人間じゃないとはいえ、さすがにああもグロイなのが目の前にあると、こんな直接な攻撃を主とする武器より、放出系な武器であるロッドの方がいいかも........。」

赤髪ツインテールを風に揺らされながらそうぼやいた梨奈がいるようだけど、もう遅かったよ。今は戦いが目前にあるのだから、武器を替えにいく時間と余裕なんてないぞ。


「その鞭、金属性で出来て重そうだけど、やっぱり今の俺たちの体力と神使力で苦もなく振り回せたなあ?」

「うん!敵が数体、向かってきたから無意識に振っちゃったけど、やっぱ軽く感じちゃって手に持つ感覚が薄く感じたの。多分、神使力も少しだけこれに纏ってたってのもあると思うわ。」


「それに、さっきはすごかったよ、梨奈ー!さっきのあれ.....<ラピダス>だっけー?その....授業で習ったんだけど、あれは<グラチーサ級>で分類されて、神滅鬼の階級として、8番目強いんだろう?8番目でも、お前があれらをああも容易く倒しちゃうのって、やっぱ武器に注いでいる神使力量もあの時のエレンより上だろうねー? エレンの話によれば、過去では彼女が初陣であの化けもんと戦った時は9番目だったらしくて、あれが自動爆発して危うく命を落としそうになったけど、宮廷ヴァルキューロアの精鋭部隊の騎士に助けられたんだっけ?」


「うん。そう聞いたわね。なんか、あたしの最初の戦いでこうも簡単にあれより上の階級のものをやっつけっちゃうと、なんかチートしてるようで、エレンに悪いと思っちゃうわよねーー?」

ええ、それは俺も思う。というか、さっきのお前の戦いぶりからすれば、なんか俺より強くなってねー?あるいは、武器と相性がよさすぎるから?この世界にきて、<現神戦武装>を先に使って戦うの俺だったのに、初めて使うお前の方が強いってマジで半端ないね、俺の幼馴染って......。こりゃ、俺も負けてらんないぜー!


「まあ、俺たちって<神の聖騎士>なんだろう?無理やりに日本からここへ引っ張られてきたんだから、チートをもらっても然るべきことだと思うんだけどー?」

「はは.....今思えば、それも当然よね...。あたしもあれらが襲い掛かってきたから危機感が刺激されて無我夢中で<キルスカ>で振り回して迎え撃っちゃったけど、やはりいつの間にか全てを倒せて、今見てもびっくりしちゃうわね。」

「それもそうだな...。まあ、俺たちって、最近は身体能力も前とは比べられない程に上昇してきたし、それで腕力と瞬発力も上がって振り回す速度が雷のように早くなっても不思議じゃないだろう?」

「それもそうか..。あたしー」

「ワオオオオオーーー!!!」

また来やがったーー!

今度はさっきの<ラピダス>なのが8体で、中型な猿の姿をしてるけど、毛皮が赤い色で出来て、腕が4本まで有する神滅鬼が30体まで襲い掛かってきたけど、あれは確かに9番目の<アングラン>級だな!


「じゃ、梨奈。誰がより多くを先に倒しちゃうのか、競争しようぜー?」

「望むところだわー!あたしもそういうと思ってたのよ!」

笑いあった俺たちはお互いにウインクと拳付きをしてから、真っ直ぐにあの化け物の集団へと駆け出したいく!横目で、梨奈の胸元の白い肌が見えたエッチな制服のスカートがひらひらと風に揺られてパンツが見えちゃいそうになったけど、っていかんー!敵が目の前にいるのに、集中しないと!


「はああっ!へっー!」

「やあああーー!えいーー!!」

ザクー!ズバッー!ズシャー!ピシャー!グチャー!

スバッー!ザクー!グチャー!

次々へと一体、一体を神使力の纏われた<アサネ>と<キリスカ>を光輝かせながら屠っていく俺たち<神の聖騎士>二人である。俺の大鎌な形をしている<アサネ>を獰猛な刃のごとく、振り回して、突き出して、袈裟切りして、回転して切り乱していって、縦横微塵な軌道を描きながら、あの怪物の群れを容赦なく殲滅していく。梨奈も同様に、不規則的な軌道で以ってその鞭を振り乱して、まるで戦乙女のごとく、戦場で暴れまわっている華麗なる乱舞をしているようだ。容姿は美少女で、動きもああじゃ、なんか惚れちゃいそうにはなるけど、俺はお前のことをただの血の繋がってない姉か妹のように思ってきたので、今更そんな感情も沸かないっていうか.....。まあ、でも<大切な人>であると思うのは当然そうなのだけど、どうしても<恋愛対象>として見れないというか.......。


ああ!横目で見ちゃうけれど、スカートの下にある形の整っているお尻とそれを覆っている赤い色のパンツをちらちら見せてくる梨奈って、超エッチだなーー!なんか、あそこも滾っちゃいそうになって、それにつられるかのようにいっそうこの化けもんどもを切り落とす勢いが増していくばかりだ。


ある一体は斜め上に切り裂かれ、綺麗さっぱり2両断されて、ある一体は何分まで切り刻まれて地面へと飛び散らされて息絶えると同時に身体が蒸発していった。

神滅鬼は俺たちの持つ、<神使力>と反対な力、<反神力>を持っていると授業で知らされたので、どれほどの<反神力>を保有してヴァルキューロアと<神の聖騎士>である俺たちの攻撃を凌げて、やり過ごせるかはその10の階級で分類されてるそれぞれの種類によって違ってくる。つまり、<反神力>が高ければ高いほど、上位に分類され易いということだ。


<ナムバーズ>7位としてのネフィールは単独で6番目強い<ラングル級>と分類されたあの2体の大型蜘蛛に挑もうと駆けていったんだから、これらの8番目と9番目なる神滅鬼の群れをこともなげに倒せた俺と梨奈の実力は既に9位だったフェルリーナ以上の神使力を持つんだな。たった一日が経っただけなのに、こんな急ピッチな成長になったのは......さすがに<神の聖騎士>所以のチート補正がかかるなあーー。


「10体、11対....」

「はあーー!9体....10体....11対...12体!」

「おおうう!梨奈、やるじゃないか!俺の戦果を越えやがったなあ、お前!」

「当たりまえなのーー!ずっとルーくんの側にいるあたしじゃないー!いつまでもあんたの面倒を見てきたあたしだから、こんなことでも負けないわよー!」

相変わらず元気にしてるなあーお前!流石、付き合いの長い我が美少女な幼馴染だけあって、よく張り合いのいい競争で俺をこうも熱くさせるとはなー。なんか、言い方悪いかもしれないけど、まるでテレビゲームかパソコンのFPSか・國無双で梨奈と遊んでるような感覚だ。まあ、ゲームはこんなにグロイじゃないけどね、あははは......。


倒してきた神滅鬼の数を述べていく俺とそこに優雅な演舞のごとく動き回りながら鞭を振り乱している梨奈がいるけど、いつの間にか追い越されたな、ありゃ!エッチな制服に、美少女な見た目に相まって、戦い方も華麗すぎてなんか目が奪われちゃいそうになるんだけどーーー?


ゴドー!ゴドー!ゴドー!ゴドー!

ん?遠くからもの凄い大きな反響で物音が聞こえてきたんだけど、何あれ?

遥か斜め左前方へと視線を移動させてみれば、ゆっくりとしたペースで向かってくる2体の大型蜘蛛の姿をしている<レガース>の一体だけが胴体から天高く聳え立ったその塔に備え付けられた4問の砲門を動かしながら調整して、俺たちのいるこの方向へと照準を合わせてきたけど、もしかして、俺達って今、ピンチなのー??というか、あの緑色なショット髪な小悪魔的な少女、ネフィールのやつ、まだ一体も倒してないのかよーー!?


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