第七話 早山ルーイズサイド:神滅鬼の襲撃3

「「ゼンダル王国の為に、ここ通させはせぬ!ゼンダル王国万歳!ネネサ女王陛下万歳ーーー!!」」

「「「「ゼンダル王国万歳!ネネサ女王陛下万歳ーーー!!」」」」

その展望台にいる20代半ばの計10人のヴァルキューロアは気丈にも気合を高めながら<エジュドッド>という防御系な現神術を展開してるけど、あの蜘蛛の姿をしている<レガース>が放とうとする砲撃には到底適うような代物じゃないのは彼女達も理解できるはず。


それに、聖メレディーツ女学園から卒業した彼女達ではあるが、在籍生だった頃も誰一人として、<ナムバージ>にカウントされずに実力は昔でも現在でもフェルリーナ以下である。つまり、例えばの話なんだけどその10人が今の早山ルーイズに一斉に攻撃をしかけてきても、大した結果にならないのは誰から考えても明白である。そんな彼女達だから、あの<レガース>から放たれた砲撃を4門も凌げるはずがないのである。 それでも、敵の前に毅然とした態度を崩さないのも、立派な軍人所以でもある。


ゴオオオオオオオオーーーーーーーーーーツ!!!!!!

轟音と共にその<レガース>の胴体の中心部分から天高く聳え立っている塔から4門の<極紅雷閃(アスダファール)>が放たれて、莫大な破壊力を誇ると言われているその漆黒な線は彼女達のいる防壁の上へ恐ろしい速度で向かっていく。間違いなく、この中型規模な町にあれが全て着弾したら、半分近くの範囲で町が破壊されてもおかしくない。なので、<エジュドッド>という中級的な防御系の現神術だけを使える彼女達では 視を覚悟した彼女達だったが、


「<横一線豪炎滅斬出(ロン・ファールン)> はあああーーーー!!!」

その時に、そんな勇ましい掛け声が聞こえたと同時に、向かってきた四つの<極紅雷閃(アスダファール)>をオレンジ色をしている横一線の炎の形で出来ている高密度な神使力の本流が容易く全てを呑み込んで消滅させた。それだけじゃなくて、4門のアスダファールを打ち消した後でもなお勢いが止まらずに、遥か前方の空へと飛んでいった。もしかしたら、その放出された横長い炎の斬撃が下にいる大量な神滅鬼の軍団に向かっていったら、確実に何十体か、100体、200体近くは殲滅することもできたのであろう。

「「!?このお声はーー?」」

そう。あれほどの莫大な神使力の消費が必要な現神術、(ロン・ファールン)を使えるゼンダル王国のヴァルキューロアは現在、一人しかいない。


「ふうう........間に合ってよかったですわーー! 皆さん、ご無事でしたの?」

「ああ.......ああ!ありがとうございましたーー!!エレン姫殿下!!!」

「ワタシ達めの救援に向かって頂いて、誠に有り難うございました、殿下!さっきは本当に死んでおられるかと思っておりましたよ。」

そう。彼女こそがこのゼンダル王国の第一王女にして、将来の女王様となる人物でもあり、今年度の聖メレディーツ女学園の<ナムバーズ>3位でもある。


「エレン!どうだった!?」

「はい!ルーイズ隊長ーー!シェレアーツ様のお計らいの御蔭か、無事に間に合いましたわ!」

そして、今はこの世界の未来の命運を握っている、<神の聖騎士>の一人である地球人から召喚された、早山ルーイズが率いる第4学女鬼殺隊に所属している部下の一人でもある。

「ルー隊長、エレン!状況はどうなの!?」

梨奈に問われたので、<アサネ>の棒の部分を肩に乗せている俺はこう答える、

「エレンの迅速な対応で、さっきあのデカイ蜘蛛にある塔から発射されたあれをすべて難なく消し去ったみたいだよ。」

「ふっ.......。さっきは危なかったよね、エレン様、早山隊長!あれらが直撃してきたら、大爆発が巻き起こるとこだったーー。」

「ええ。そうですわね。君たち、第10分隊と第11分隊の隊長達ですよね?」

「「はいっ!その通りで御座います、殿下!」」

「町の住民は全員、避難させてやりましたの?」

「大半はすでに避難させて参りましたけれど、どうしても町に残りたいという老人と中年男と数人のカップルらしく男女達が50人までいて、避難の忠告に従いませんでした。」

ふむ。そんな頑固な輩もいるようだな、ここの町って。というか、ここは地域首都であるといってたっけ?ここの下にある周りの家屋とか見渡していれば、なんか簡素なデザインが多くて、王都であるフォルールナと比べれば、随分と見劣りするな、ここって。

「では、今の彼らはどこにいるか知ってるんですの?」


「はっ!せめて避難所として使われてる地下基地にでもいろと促したら、物分りよく聞いてくれましたよ。」

「宜しい。では、貴女達のお名前って、確かに第10の隊長はミラで第11はヨハネスというんですのね?」

「「はいっ!」」

「よくやってくれましたわ!確かにさっきの攻撃では貴女達だけではどうしようもなかったけれど、早い段階でたくさんの住民を別の町へ避難できた事はこの国の未来の指導者であるわたくしとしても嬉しく思いますわ。では、ここはわたくしの.....えっと....ここの我が国が将来として、潜在的な戦力となり得るかもしれない、最先端な切り札である<奇跡の子>の一人、早山ルーイズ隊長が率いる第4学女鬼殺鬼に任せて下さっていいですわ!」

「し....しかし...いくらお強い殿下とはいえ.......そこの....早山隊長さんと少数であの化け物の大群と戦おうとするのは、その......臣下の一人として心苦しいといいますか......とにかく、憚れますよーー!」

「いいえ、わたくしはいいといってるんですのよ?わたくしのいう事が聞けないのかしらー?」

「いや、いや!滅相も御座いません!殿下がそうおっしゃるなら、喜んでご命令に従わせていただきます故、どうかさっきの私の無礼で出過ぎた不躾な進言をお許しになって頂けないでしょうか?エレン姫殿下!?この通りですー!」

慌てて自分の失言に後悔してるのか、急にそこで土下座を始めてるよー?おい、おい、そんな長ったらしい建前はもういいから、まずはこっちへと急行進中であるあれらをどうにかしてからでいいんじゃないの、それ?


「ああもうー!わかったからー早くここから下がりなさい!邪魔ですわ!」

「「は!はひー!申し訳ございましぇんー!エレン姫殿下!おおい、貴様等、殿下のご命令ですぞー!早くここから離れるんだーー!」」

「「「「「はいー!さっきの隊長達の件で、済みませんでした、エレン姫殿下様!」」」」

エレンに怒られてびくっとなった彼女達は慌しく部下と共に、俺のすぐ隣を突き抜けて跳躍して、そこの街中へと飛び降りていくのである。

「では、ルーイズ隊長、ご命令はー?」

「ルー隊長、あたしも戦闘に参加するので、どこで何の防御すべき箇所と範囲を担当すればいいの?」

「にしー!こんなに暴れられるのは滅多にない機会だったから、わたしもたくさん殺りたいねー!だから、早山くんー、じゃなくて、早山隊長!あの2体の大型蜘蛛の姿をしてる<ラングル級>である<レガース>じゃ今の隊長には荷が重過ぎるから、あれらを私がやっちゃっていいー?」

「なら、ルー隊長!他のしん.....神滅鬼をあたしに任せてくれないのかしら?初の戦いだから、早く経験を積みたいの!」

ふむ。ネフイールと梨奈は物凄くやる気になってるし、好きにさせてやるのもいいけど、やはりこの場で唯一な男性である俺も何かしなきゃいけないようだなーー。


「まずは敵軍の戦力がどれほどのものか、分析する必要がある!エレン、頼める?」

「わかりましたわ。さっきの分隊隊長のヨハネスさんの目測報告によると、800体までの神滅鬼が向かってきて、指令級なモノはやはり、そこの平野にいる大群の中から、一番強くて後ろにいる、両翼にいる2体の<レガース>ですわ。」

「<レガース>は確かに召喚された初日の<サカラス>と同程度の強さを持ってんな?では、それ以下だと、どれほどの数がいる?」

「こっちから見る限りでは正確に判断できなくて分かりませんけれど、少なくとも、あの<ナムバーズ>9位であるフェルリーナの必殺技を凌げた隊長なら、森川さんとツーマンセルを組んで戦ってみてはベストかと思いますわ。今のルーイズ隊長の実力とさっき森川さんの選んでもらいました<現神戦武装>なら、きっと上手くいくと思いますわよ。」

なるほど。梨奈と目配せしてから、こう命令してみた、


「じゃ、そうしてくれるといいよ!エレンはここで待機して、予備軍として必要時は援軍しにきてもらったり、遊動で自由に動き回って敵の陣形をあっちこっち撹乱しにいけ!ネフィールはあの<レガース>2体を倒せ! 梨奈!信じてるからな!」

「うん!」

「にししー!任せてー!早山隊長!」

「じゃ、梨奈、行こう?」

「わかったわ!」

そう元気よく梨奈は緊張した顔のまま、俺と共にあの化けもんの群れへと向かうために、この壁からあの平野へと飛び降りていったのだった。


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