第二章(聖戦舞祭編) プロローグ

早山ルーイズがフェルリーナとの最終決戦に臨んだ日から、5日前遡る..............。 ディグラン平野にて:


「で、ここの座標だな?エレン姫殿下が命をお助けになる年寄りの女性というのは。」

「はい。女王陛下から承った情報が間違いないのであれば、確かにここですね。」

二人の位の高いらしき女性二人がそう会話を交わしながら、周囲にいる数人の部下と思われる20代の女性達と何やら周辺の地面にある草木を調べている最中である。その質問を投げかけたのは全身を白い布とケープで覆っている女性で、顔が白い仮面によって隠れていて、銀髪セミロングを風に靡かされている。両手も白い手袋を着ているので、いっそう潔白と潔癖を好む印象が強く醸し出されているかっこうとなった。で、それを聞かれて返事をしたのは胴体と両腕と両脚を鎧で包まれている、またも銀髪な女性だけどそれを後ろへと一くくりと束ねている、所謂ポニーテールな髪型をしている騎士らしき見た目の20代の女性。どうやら、この二人は別々の部隊に所属しているようで、それぞれの部下を従えてここに臨んでいる様子である。


「殿下のお話によれば、その女性は気絶しているように見えて、服が数箇所破かれていて裂傷で血まみれになってたのをこの辺りでお発見になったとのことです。で、殿下がお引き連れになっていた隊員に、初級治癒系の現神術である<小聖白息レーシア>をその老人にかけるようお命じることになったと聞きましたが、まったく効かずにいるから焦りが募って究極級の治癒系の現神術、<大聖白神風アラナントス>を得意とする隊員であるオスハイート嬢にかけてもらおうとご命令を下そうとする瞬間に.........」

「透けて蒸発していったとおしゃっていたよね?」

「.......はい.......その通りです。」

「なので、やることはもう決まっているよ。その謎を突き止めるのにはまず、ここの座標で殿下がお抱きかかえになっていたその老人の神使力の痕跡を辿ろう!このリルナという世界は生きているものすべてに多少問わずになんらかの量の神使力が体内に宿されてるから、例え蒸発したとしても、身体ごと消えるのではなくて、死したその瞬間には魂が別次元へ、身体は抜け殻の屍となり、そして生前の身に宿る神使力はなくなったその場からなにかしらの微々たる粒子が半径1メートルで漂っているはずだ。なので、そこの<神使力量測定機器ハベーシュを寄越せ!きちんと探し尽くそうぞ、この辺りを! <終わりの饗宴>は近いのでその前に見落としがないように万全な態勢を整いたい!いいなーーー!」

「「「了解、メラニス様!!」」」


メラニスと呼ばれる全身が真っ白な布に覆われてる仮面の女性はそう号令して、なんらかの機器を部下に手渡された。

「なぜ身体ごと蒸発したか原因が突き止めればいいんですけれど......」

そう小声で呟きながら、メラニスの機器を操作している様子を眺めている、その身体を鎧に包まれた女騎士、宮廷のヴァルキューロアの精鋭部隊、<6英騎士レギナ>が一人、ニシェーである。


_________________________

フェルリーナとの最終決戦日、その翌日の聖メレディーツ女学園の学生寮の寮内にて、水曜日の朝の午前6:30時:


「ルーくん、起きて!」

ん?梨奈の呼びかけてくる声が聞こえてるよ、もう朝か?

「.......ようーーー。おはよう、梨奈。」

「おはよう!ちゃんと起きれてラッキね、あんた。もし次に二回だけ呼んで起きられなかったら、腹パンしちゃうかも。」

またそれかっーー!あははは..........この世界にきても梨奈はあいかわらず梨奈で、なんか安心するな、はは!

「んんんん........神使力ってお陰なんだろう?この世界へ<神の聖騎士>として召喚された瞬間から、既に大母神様から少量だけど授けてもらって、今の俺達の体内に流れてる不思議なオーラってのがあるんで、それで体力も上がってきたから、睡眠時間も減ってもいいようにしてくれるものなんじゃないかな?」

「推測は当たってると考えていいよ、ルーくん!そう思い至ったのって、自然だからわよね。じゃ、まだ朝早いし、食堂へ行って朝食を取りに行こうーー?」

「うん!」

なんか照れてる感じの梨奈が俺に微笑んでからそう誘ったので元気よく了承した。

そう答えた俺は機嫌よさそうな梨奈に見守られながら部屋に備え付けられてる流し台で毎日、昼時に供給されているお水で顔を洗ったり歯磨きをしてから、梨奈と共に寮の自室を出ていった。制服にも着替えてきたけど、それをやる前には梨奈を部屋から出てもらった。「誰があんたの裸なんて見たいと思ってんのよーー!?」とつんつん言われたけど。


「よおーーー!ルー!おはよう!元気そうで何よりだ!」

「お早う、早山さん、森川さん。」

廊下を突き進んでいく俺達に、遼二と有栖川というリア充カップルと出くわした(まあ、本人達は絶対にそれを認めてないけどな)。どうやら、彼らもさっき起きてきたばかりで、朝食に誘うために俺の部屋へと向かっている最中のようだな。先には梨奈の部屋もあるけど、そこからいなくなったからノックしても返事が返ってこないと見て俺の部屋へと急行中のようだな。俺達の部屋の配置って、野郎である俺と遼二はさっきの突き当たりで指定されたけど、遼二がここで有栖川さんと一緒にいるなら、きっと前から起きて彼女と会いに、あるいは起こしに行くために部屋を訪れたんだろうね。


「おはようさん、二人とも!昨夜はよく眠れたの?」

「「~~~~!!?!~~~~」」

俺の問いに対して、何やら顔を真っ赤にさせてる二人だけど、どうしたの?俺、何か変なことでも聞いちゃったのかな?

「いってーー!」

と、そんな疑問を浮かべると、梨奈の奴に脇腹を小付かれた!

「(しゅううううーー!ルーくん!その質問って地雷だったのよーー!)」

ん?ふむ?んんん..........ああ!!そう!そんな意味で聞いたってわけじゃないのに、どうやら誤解されたらしい。

「悪い、二人とも!そんな意味で聞いたんじゃないよ!単に睡眠はちゃんと取れてたのかなって意味でたずねただけだ!」

「あははは........まあ、別にいいんじゃない?というか、僕達は単なる長い付き合いのある友人同士であって、そんな関係ってわけじゃないから、絶対にないよ、それ!」

「(私としてはそんなことになってもいいと思いますけどね.........一緒の部屋だったら、いっぱい責められますし.........うふふふふふ.........)」

そんなことを言ってた遼二だけど、なんか隣にいる有栖川さんがしゅんとして俯いてから、急に照れてるようになって何かぶつぶつこっそりと小声で笑ってるように見えたけど、どうしちゃったんだろう.....?


「ああ!皆さん!お早うございます!待っていましたわよ~。」

寮内の食堂に着いた俺たち4人に透き通るような声で元気よく挨拶してきたのは我が学園一の金髪美少女、エレンである。自分の部隊に所属してるネフィール、ローザとエリーと一緒の細長い木製のテーブルで腰をかけている途中だけど、俺たちが入ってくるのを見た瞬間、笑顔を浮かべながらそういってから、席を立って、俺たちの方へと優雅に歩を進めてくる。というか、エレンってお姫様だから、最初通ってた日ってお城から学園へと通ってきたんだよね?なんで、こんな朝早くに寮内の食堂に?


「わざわざ俺たちを待っていてくれてありがとうな、エレン。あそこのテーブルを見る限り、まだ皿とか並べられてないけど、朝食はまだなのか?」

「はい。ルーイズさん達と一緒に朝食を取りたいので、そこの3人と一緒に待っていましたわ!」

にっこりとした笑みを見せる彼女は大胆にも俺の手を握ってきて、こう続いた、

「さあ、登校時間も近いですし、さっそく簡単なもので済ませましょう、ですわ。後、森川さん達もおいで下さいまし。」

ほんわかした雰囲気を感じさせるエレンの動作一つ一つに手を引かれながら歩いていくが、なんか直ぐ後ろにいる梨奈にじと目されてるような視線を感じるぞ。

テーブルに着席した俺達4人の席順はこう:

俺の右隣には梨奈で左隣はエレン。

梨奈の右側には俺と梨奈と同じクラスのネフィールが座っている。


で、その向かい側に、俺と正面向き合っているのは親友である春介遼二で、その両側には有栖川さんとエリーゼって子がいる。

有栖川さんの逆側にはローザさんが腰を降ろしてる。

ふむ。バランスのよい席順だな。

と、その後は俺達は厨房の手前にある、窓口があって注文を受け付けている最中だ。

そこにいるメイドらしき衣装の30代の女性に注文を終えると、先に座れと言われたので、俺は梨奈とエレンに挟まれながら席に戻った。ちなみに、遼二達は別の窓口へ注文をしに行って、まだ決めかねているようだね。早くしないと遅刻だぞ!で、ネフィールのものは俺達3人が代わりに注文しに行くとさっき言ったので彼女は席から離れなくて済むように。それに、一人だけテーブルに残ってガードする必要もあるしな。実は、俺はみんなの分も一人で頼みに行けたけど、それを提案したら、

「駄目ですわ、ルーイズさん。わたくしも一緒に行きたいですわよ。」

「あたしもね。伊達に8年間幼馴染やってこないんだもん!」

と、きっぱり二人に言われたので、はいはいと答えてつれていくことにした。


で、10分も経って、それぞれの注文した食べ物もテーブルに着いたな。登校する時間は?えっと、そこの木製時計に視線を移すと、午前6:52時みたいだから、最初の授業が始まるのは7:30時だから、たっぷり、じっくり、ゆっくりと食う時間があるようだな。俺達はここの学生になったその手続きの日から、ネネサ女王陛下から生活費の全般に使うお金を手渡された。ぷっくりとした羊毛製の袋をもらった俺達地球組もとい、<神の聖騎士>は中身を確認したら、100個以上の硬貨があった。80個が銀色で、20個が金色で出来ている。女王に聞いてみたら、この世界の貨幣と金銭事情はこうだ:学生寮の食堂の料理は大抵、ひとつにつき銀貨1個か2個で買えるけど、街中の服屋とかへ服を買いに行く場合、特に気をつけるべきポイントは大抵の男性用および女性用の一般服の価格は銀貨5個か8個にまで至るものもあるようだ。更に、裕福層がよく着そうな高級のものだと、銀貨40個か80個までもあると聞かされた。で、この20個の金貨は一個ごとに銀貨40個までの価値があるそうだから、当分の間はお金には困らなさそうね。ちなみに寮長に金貨一個を食事費用に支払えば、一ヶ月間強分の食事をこの寮で取れるとのことらしい。で、この硬貨の該当する貨幣のことだけど、<イザール>と呼ばれていて、このゼンダル王国だけじゃなくて、周辺国である7カ国が共通して使用している貨幣のようだ。なので、代わりに1個の銀貨は1イザールとも呼べて、金貨1個は40イザールとも呼べるということらしい。


「はわああーーーー!!遼二っちのハムトースト美味しそう~~~~~~!!エリーも一口だけ食べちゃっていいの~~~~~~~??ね、遼二っち~~~~~?」

「それは間接キスになりますので、駄目ですよ、エリーゼさん。」

「~~~~~~えええーー!??いいでしょ~~~~、姫子っち?けっちしないでよ~~!エリーもハムトースト食べ~~たい~~~。」

そのぶりっ子(みたいな口調をする、はい!)である茶髪三つ編みのエリーと漫才をしているのは有栖川さんで、どうやら遼二のハムトーストを巡っての口争いみたいなもんだな。というか、エリーの朝食、そのフレンチトーストも上手そうに見えるのに、なんでわざわざ遼二のを欲しがるんだ?子供じゃあるまいし、友人としての付き合いも最近始めたような関係なので、彼と4年間も付き合いのある有栖川さんに張り合ってどうするんだ?因みに、有栖川さんのビーフシチューも超美味そうだな!


「駄目なものは駄目なんですよ、エ・リ・ゼ・さ・ん。」

またその不敵な笑みを浮かべた有栖川さんはエリーに敵愾心むき出しの怖い作り笑いで凝視した。エリーも負けずに食い下がった、両者との間にまたも昨日みたような火花が散るような場面を目にしてしまった。

「はむはむ.......はむはむ.......」

で、二人のいがみ合いを無視して、ハムトーストを齧っていく遼二に苦笑してから、左腕に柔らかい感触を感じた!

「ルーイズさん、わたくしのジャムトースト、食べてみませんの?」

にっこり顔のエレンは優しい声色で俺に密着し、手に持つジャムトーストを俺の口に近づけてくるようだ。ってか、俺に直接お手で食べさせようとするのーーー!??は、恥ずかしいじゃんー!こんな大勢の前でーーー!?


「ね、ね、見てーー?エレン姫殿下が席を共にしている<奇跡の子>の一人にトーストを食べさせようとするんだよーー!」

「わーー本当だ!ね、ね、その子って、早山ルーイズとか言ってたっけ?フェルリーナ嬢との最終決戦の時、かっこよかったよねーー?」

「うん、うん!最後はフェルリーナ嬢が<ミスダン族>と同様の姿に変貌してたから失格となったけれど、その前は善戦していて、本当に見入っちゃってたよーー!ね、レッティー?」

「ええ!その後、手足が捕まって動けない彼をお助けになるのはエレン姫殿下でしたよね?それもすごい光景でしたね?」

「うん、うん!凛々しくて、神々しくて、男子一人の危機に颯爽と駆けつけてそのお腕にお持ちになってる大剣で邪なる魔の手からお助けになるとは...........超憧れちゃうわーーー!!はわああ~~~~~~~。」

「そうですね。エレン姫殿下のご活躍は滅多に拝見できませんから、そういうのが見れて感涙ですね。」

「ところでさあーーその黒い方の<奇跡の子>って何者なの~~?なんで内の国と学園一の王女様にあんなに親しくにしてるの~~?」

「まあ、まあ、前代未聞の<奇跡の子>だし?きっとエレン様も何かしらの好意をお抱きになると考えても宜しいのではなくて?」

「私もそう思いますね。男性が<戦闘可能な神使力>を持っているだなんて、歴史上、初めてなんですよ!なので、その所以で我が国の王女様となにかしらのきっかけで仲良くなっても充分な資格をお持ちなる方だと思いますよ。」

「でもそうなると、あたしがお姫様に勝てないじゃんーー。ずるい~~!あたしも早山さんと仲良くなりたい~~なりたいよ~~!」


と、何か騒がしいな、後ろのテーブルが。数人の女子の話し声が聞こえてきたので、振り返ってみたら、俺の顔を直視した途端、顔を赤らめたりしゅんとしたりする子が何人かいたので、前に向き直る。やばい!可愛い子がいっぱいで、目と合ったら、なんか羞恥を覚えそう。俺ってシャイボーイって柄じゃないのになーーー。というか、隣にいる弾力性マックスのエレンの肢体も心地よいやら、気持ちよいやらで顔が熱くなりそう!頼むよ、エレン!少しは慎みってものをーー!じゃないと、俺の下半身がやばいことになっていくよ!ううううぅぅぅぅ........................


「でも、そのジャムトーストってエレンのだろうーー?駄目よ、お姫様の朝食を奪ってちゃーー。お姫様なんだから、もっと自分のお身体を大事ー」

「もう、ルーイズさんったらーー。そんな他人行儀な口調はお止めになりませんの?わたくし達って友達同士なんでしょうーー?」

「ええ、そうだけど、人の大勢いる場所でそれやったら恥ずかしいよ。それに、そういうことしていいのが恋人同士と自分の元いた世界の常識があって、無理やりに食べさせ合いっこをしてたら、ここにいる周りの面子に誤解されちゃうよ。」

「まあ、ルーイズさんがそういうなら、引っ込んであげますけれど、そこの森川さんならどうですの?」

と、そう言ったエレンなので、梨奈の方に向けたら、

「ルーくん、あたしの卵サンドイッチ食べてくれない?」

今度は頬を膨らませて、なんか怒っているように見える梨奈が俺の口元にその手に持つ卵サンドイッチを食べさせようとする。


もうー!

もう、お前達、いい加減にしろよーー!ここ、公共の場ですぞーーー!

たくさんの女子生徒がこっちを見入るような興味たっぷりな目で見てくるですぞーーー!ああもう、注目されて恥ずかしいじゃんー。見世物になってるよ、俺達..............うううううぅぅぅぅ...............(羞恥心マックスである俺)

というか、エレン、梨奈、有栖川さん、エリーゼさん、少しはそこで黙々と食事を取っていくローザに見習えよ!後、そこにいるネフィールも........え?いない?


ぽよんーー!

と、今度は俺の頭になんか柔らかい膨らみが乗っかてる感じだけど、これってーーーー!!!???

「にしし!早山君!わたしのパン、食べてみない?」

もうーー!


「いい加減にしろよーーお前らーーー!!!」

カオス状態になってる俺らのテーブルが周囲にいる全員の女子生徒の集中視線に堪えられない俺は頭に感じる気持ちよい物の感触の誘惑に抗いながら、それを振り切って席を立ってそう叫んだのであった。


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