第24話 お祝い。そして.......

試合後の夜、同じ日である火曜日の午後9:00時、聖メレディーツ女学園の寮内にて:


「「「「「「「「 乾杯ーーー!!!」」」」」」」」

ここは寮の一室である、俺の部屋だ。俺の勝利.......というか、皆の勝利だけど(さっきのフェルリーナとの最終試合は彼女の変貌姿によって失格したので、厳密には勝者は俺と正式に発表されたけど、フェルリーナの暴走を止めたのは会長だけじゃなくて、皆も一丸となって俺を援護した形だったので、正確にいえば、みんな全員の勝利で間違いなし)。


なので、今はその勝利を祝いするのに、俺、梨奈、エレン、遼二、有栖川さん、ネフィール、ローザやエリー全員は俺の部屋に集合して、円を囲むように床に座ってお祝いの最中にある。まあ、酒とかアルコールは俺ら地球組には厳禁だったので、日本にいた時の感覚や認識もそのままに心理に残っていて、それでオレンジジュースとミルクで乾杯することにした。夜食はさっき、食堂にて皆でお肉料理だの野菜料理だの豪華なの取ってきたので、今はただ軽食としてのケーキやチョコを堪能中。で、ここの世界での一週間も俺の元いた世界と変わらず、七日から構成されていて昨日は月曜日から、登校日が開始されていたので、今日という最終決戦日は火曜日になる。 この部屋は8人もいると狭いなあ、これ!お陰で俺の両脇には梨奈とエレンが近くにくっついてきて、マジで良い匂いがしたりやわらかく感じたりとかで、下半身のそれを押さえるのに苦労してるぜー!


ここにいる面子って、野郎である俺と遼二を除けば、全員は女子なので、なんかガールズトークの場で男二人が混じってる気分だぜ。そして、今はみんな私服を着ている。梨奈は髪の色と相まって可愛い赤色のワンピースを着てるけど、胸元はしっかりと隠れている。それに対して、我が学園一の金髪美少女であるエレンは白いワンピースを着ていて、清い印象を与えている(まあ、胸ものは制服と同じ感じで上半が開いてるため、ちょっとエッチな印象もあるが)。 ふと、遼二の奴を見てみれば、あいつも俺と同様に、両手に花って感じで有栖川さんとエリーに挟まれる形でなんか顔色赤くなってるぞーー。わかる!わかるよ、遼二!男としてつらいよね、あそこへ血流が流れていくのを阻止するのって。


「既に何回もいったけど、またも言わせてもらうね、ルー!勝利おめでとう!」

「あたしも言うわ。フェルリーナとの諍いも無事に解決したといっても同然だし、これからは本当の意味で、幕を開ける新しい学園ライフが始まるよね!」

「ふふふ.......そうですね、森川さん。正にその通りです。最初の登校日早々に早山君がお手洗いに行って、本来は女子の立ち入りが最近、禁じられてるそこを何の訳があって、フェルリーナさんが入っていってそして早山さんとぶつかったんですから、それでトラブルの連続で何度も彼女と決闘させられてるんですよね?」

「ええ。まったくだ!大変だったぜーー、あれ!」

そう。あの時、フェルリーナさえ入って来なければ、あるいは俺が出て行くのもっと早ければ、彼女と出くわさずに済んだかもしれないね。

「でも、もしルーイズさんが彼女とあんな事にならなければ、彼女の家での過去から現在に至るまでの実態や真相は知ることができませんでしたわよね?」

「はい!僕もそう思いますね、エレンさん!初めてあの子がルーにあんな容赦のない顔面掴みを見た瞬間に、「なんて無慈悲な女なんだろう」と思ってたけど、まさか彼女の母親と家の環境があんなに凄惨なものだったとは..........」

「そうですね...........」

「..........」

急に場の雰囲気が暗くなって、誰もがしゅんとして声を出せずにいる。その中で、

「でも、早山君が彼女の手に触れられた瞬間に全てが見えるようになったんだよねー?ね、早山くん?」

重苦しい沈黙を破ってそう尋ねてきたのは、他でもない、グルプ内のムードメーカである、エレン王族直属部隊の一員にして同じ2年B組のネフィールである。

「ああ.........そうだな。彼女は昔から今まで続いて受けてきた、母親からの虐待を確かに、脳内ではっきりと映像として映し出されてたよ。苛烈で、辛い人生を送ってきたのを見たその時で、なんか自分も堪えられなくなりまるで自分に起こったかのように深い悲しみ、同情や絶望さを感じて、それで思わず彼女を抱きしめてやったんだ。」

「......普段のあたしなら、もしルーくんが理由もなく親しくもない女の子にそれをやってるのを見たらセクハラ疑惑が真っ先に浮かぶけど、ルーくんとフェルリーナがあんなに一緒になって泣き咽びだしてたんだから、きっと何かを<見た>と考えられるのは懸命なのよ。<神の聖騎士>として選ばれたあたし達だから、きっとそれ関連で人の過去とか実情とか覗き見することもできるかなと思って.......」

それもそうか。ラノベによく読んできたんだから、チートとかもっと便利な能力とか努力なしの万能なものが最初から大母神様からもらえてもいいと思うけど、人の過去を覗き見できるのってそれでも充分チートなものだとも思えなくもないな。


「で、彼女も泣き出したのは少々ショックだったよ。俺への憎しみでいっぱいだったのに、まさかいきなり俺の抱擁に対してああも簡単に信念?みたいなもんを曲げただなんて.........」

「案外、精神が脆いもので出来てるみたいでありますね、彼女。」

「エリーも~~~そう思いーーます~~~。」

俺の心理的推理に対して同意を示したローざとエリーであるが、

「で、その後は急に疲れ果てたかのように意識をなくしちゃったんだっけ?」

「ああ。ぐっすりと深い眠りに落ちたかのように見えたぞ。」

遼二に問いに対して、肯定した俺。

「意識なしの彼女を生徒会が預かると会長がいって、運ばれていったけど大丈夫なのかな........」

「きっと、大丈夫ですわ。会長によると、事情聴取のため、そしてなんで<あの姿>になったのか取り調べていく必要がありますから、まずは彼女から聞いてもらって、そしてどんな処遇を最終的に施すのか検討していくとおしゃっていたそうですわよ。」

「そうか........まあ、あの姿になった理由は俺も気になるし、すごく興味あるけど、少し心配もあるよ、主に彼女の精神的問題とその原因である昔から過ごしてきた自分の実家とその主たる、彼女の母親だ。」

「ああ.........僕もちょっと可哀想に思えてきたね。ルーと違って、直接に彼女の過去を脳内で見たことないけど、なんとなく想像できちゃうよね、その過酷な環境が......」

「ですので、なるべくフェルリーナさんをあの家から引き取るなり、保護するなりで遠ざからせてやりたいと思いますよね、早山さん?」

「そうだな。それがベストだと思うけど、最終的に決めるのは彼女の方なんじゃないーー?出来れば、自分の為にもっとも最適な決断を下してほしいんだけど、どうだろうか?上手くいけると思う?」

皆にそういうことを聞くと、

「まずは精神面から直していくのがいいと思うんだよ。」

ほう。ネフィールもたまに賢い提案もするんだな。以外だけど、きっとそういう面も元々兼ね備えてるんだろう。

「そのために、我が国では精神病療養施設、アスクラムがありますわよ。」

ふむ。初めて聞いたな。

「それなら、安心ですね。もし、フェルリーナが家から出たいというなら、そこの施設で療養を受けてから、第二の人生をスタートするのも一つの選択肢でもありますね。早山君の見た通りの過去であれば、彼女の母親は確かに悪影響を与えるしかありませんし、幸せを手に入れるためにはまずそこから抜き出した方げ懸命かと思われます。」

「そうですわね........まあ、その決断を下すのは彼女自身ですから、わたくし達は口を挟むべきではない問題とも思いますわね。」

それもそうか。確かに彼女の実家での待遇には同情するばかりだが、変わろうとする意思を彼女が示さなければ、他人から力添えをもらっても碌な結果にはならないな。なので、待つからな、フェルリーナ!お前が新しい道へと踏み出す勇気を!

「それにしても、まさか彼女が<ミスダン族>と同様な姿に変貌するとは......」

ローザの呟きに対して、遼二が真っ先に反応した。

「<ミスダン族>ってあれだろう!最初は饗宴場で詳しく聞かせてもらったんだっけ?で、その種族は耳が尖っていて、肌色は青いから赤いまでの個体がいるんだよねーー?」

「はい。そうですわ。わたくしも授業で何度も聞いたことがありますし、フェルリーナのああいう変貌を見れば、明白ですわよね。間違いなく、<ミスダン族>そのものになってしまいましたわよ。」

ん?なんかもう一つの詳細な外見特徴が欠けていたとも思うが、なんだろう........ふむ........ああー!思い出した!

「でも、<ミスダン族>って、確かに額には小さな角みたいなもんが付いてると女王が言ってたんだよねー?あの時のフェルリーナを見る限りそういうのなかったんだぞ!?」

「エリーも、はむはむ.......それが気になるよ.........はむはむ.........なんで耳とか皮膚の色が変化したというのに..........はむはむ.........角だけ生えてないの?」

俺の述べた疑問に遼二の左隣に座ってるエリーが反応した。というか、ケーキを頬張りながら、喋るな!女の子としてお行儀悪いぜ!

「それはわたくしも分かりませんわ。きっと、完璧な<ミスダン族>としての身体には変容できないと推測するのが無難かと..........」

「つまり、神使力も彼の種族とは同程度にならなかったんだよね?」

「そう考えるのも自然かと思われますわよね、ルーイズさん.......」

俺の問いに対して、なんか複雑そうな表情を浮かべるエレンだけど、きっと賛成するのにも腑に落ちない点がいくつかもあると感じるんだろうなあ.........


「それに、破壊の粒子イストローフとかいってたっけ?何で彼女の身体から出てきたんだい?」

今度は遼二がそう聞いてきたけど、それに一瞬、はっと我に返ったかのような顔になったエレンは遼二に向き直って、こういった。

「それはわたくしも分かりませんわよ。なぜか不明な点が多すぎるのですから、会長が彼女の身柄を確保してそれについて取り調べていくのも納得できる話ですわよね。ルーイズさんもそう思うでしょうーー?」

今度は俺の身体に自分のとこすり付けてくるように顔を覗き込んでくるけど、近い!近い!エレンの金髪が俺の顔にまでかかってきそうだし、白い顔も直ぐ目と鼻の先にるのでなんかいい匂いはいっそ強くなってくるし、身体自体も柔らかすぎてなんかどきどきがとまらずに卒倒しちゃうぞ!

「ええ........ええ!俺もそう思うよ!」

とりあえず、平然さを装うように何事もないであるかのように振舞おうーー、うん!

「あたしもね。というか、ルーくん?顔色赤くなってるけど、どうしたのかしら~~~?」

今度は逆側にいる梨奈が何故か不満顔になり、肩を強くぶつかってきて俺に密着してくるエレンと自分をじと目で凝視してくるけど、なんで??俺からやった訳じゃないのに........しくしく.......まあ、取り敢えず、誤魔化そうっとーー!


「いや、なんでもない。ところで、遼二、お前のいたクラスってどう?有栖川さんと一緒だったけど、他に友達とかできた?」

「おう。できたよ!何人かの子とお知り合いにもなったし、お陰で俺と有栖川もみんなと溶け込めてありがたかったよーー!」

それはそれでいい話だね。というか、いきなり彼の隣に座ってるエリーに睨まれてる気がするけど、どうして?

「ああ!それに、別の教室にいるけどエレン姫の隊員の一人であるエリーとも仲良くなり始めてるよ。友達が増えて嬉しいよ。なあ、有栖川?」

「ふふふ........そうですね.......でもくれぐれも羽目を外しすぎないようにね、春・介・く・ん・?」

「遼二っちなら~~~大丈夫ですよ~~~~彼、気真面目だし、勉強も得意~~~そうなので問題~~~ないじゃいですか~~~~?」

完全にケーキを食べ終えたエリーと有栖川さんの間に何か火花が散らされる雰囲気が醸し出されるように見えるけど、なんでーーーーー???もう訳わからなくなってきちゃったぞ!!


と、遼二の両隣にいる有栖川さんとエリーとの間に何か不穏のいがみ合いが滲み出てるのを感じて、ふと俺の両隣にいる梨奈とエレンを見ると、梨奈からは不満そうな剥れてる顔が見えるが、エレンからは無邪気で俺に密着したまま照れてる顔で微笑んでるだけで、何の負の感情も感じない。まあ、真相はどうであれ、俺たち野郎の両脇に美少女二人に挟まれるのって超ラッキな気分になっちゃうよね、なあ、遼二?


「ところで、さっきのお前とその隣にいるお姫様、いいもん見せてくれたなあ!なあ、有栖川?エリー?」

「そうですね。お姫様はエレンさんであるというのに、お姫様だっこされてるのは彼女じゃなくて、早山君だったのがおかしく見え笑い出しちゃいそうにもなりますね、今思い浮かべたら......」

「エリーもそう思います~~~!かっこよかったよね、エレンっち!まさか白銀.....いや、黒銀の<神の聖騎士>を両手でだきかかえてるとか、大胆すぎて見入ってたよ~~~~~!!やっぱ、男子を口説きそうに見えて超ドキドキしちゃったよ~~~!ね~~~、遼二っち~~~?」

「そうっすよーー!ルーも綺麗なお姫様にああいうのしてもらって顔色が真っ赤かになってたのも今はっきり確認できたし!君も見ただろう、森川さんーー!」

と、その問いを梨奈に向けた遼二だったが、いかんーーー!!それは地雷だったぞ、友よーーー!!!!


「ルーくん............」

と、今度は顔を近づけてくる我が赤髪ツインテール幼馴染である森川梨奈であるが、なんか笑顔を浮かべてる途中なのに、目がまったく笑ってないよ、それーーーー!

「翌朝、ちょっとだけ一対一の話があるわ。いい~~?後、拒否権なしよー。」

そう。この世界に来ても、俺は幼馴染である梨奈のいうことに従う以外、選択肢は皆無である..............しくしく.................。


でも、なんでだろう、この世界にきて、あのムカデから逃げ回ってて、フェルリーナという残酷な行為もし兼ねない女の子とも死闘に近い決闘を2度もさせられてるけど、こうして仲間..........気の置けない友達が増えるのは..........心が生暖かい気持ちに包まれるのは、とっても尊いなものに感じて、そして、何事にも置き換えられないような大切なものでもあると、実感させられてこの一週間強のこと。あああ..........やっぱり、俺はたくさんのいい友達に囲まれて、とても感謝の気持ちでいっぱいだよ、神様........いや、<大母神シェレアーツ様>。これからも、この大切な仲間と共に、新しい人生をここの世界で、過ごしていきたいと思う、うん!


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