第20話 決戦
次の日、最終決戦の当日。
「では、ホームルーム、終了。解散していい」
昼休みは教室で、梨奈が用意してくれた弁当をと、最後の授業の後には担任先生のシーラ先生が数日後のクラスについての伝達事項を伝え終えたら、直ぐにチャイムが鳴った。
放課後になった。いよいよ、あの残虐な行為を平然とやる女、あのフェルリーナとの最終決戦だなー。今度は物理による勝負ではなく、現神戦武装を通して行われる試合。武器を使っての初戦闘なので、なんか緊張してくるなー。確かに、ローズバーグ会長が<リンガ>という現神術を発動したら、武器からの攻撃を受けても実際にリアルでダメージを被ることは一切なくなるので、精神的なダメージで先に気絶した方が負け。つまり、学戦舞祭<バトルエンタメー>と同じような条件で、勝負をする。
で、試合が行われる<聖メレディーツ・コロシアム>へと行くために2年B組の教室を出て行った俺、梨奈とネフィールはこの学園の正面の玄関から出て、校門をくぐった後に、学園の敷地内ともっと離れてるところに建設されたその舞台へと足を運んでいく。その前にエレン姫と遼二たちとも合流したかったけど、遼二のいる2年E組教室へ出迎えに行ってきたら、どうやら、先に行ったとクラスメイトの子に言われた。その子によると、エレン姫と生徒会の皆が見渡しのいい席を用意してくれてるから、エリーがその案内役としてここへ遼二たちを迎えにやってきたと。先生からの情報によると、その<聖メレディーツ・コロシアム>という舞台は学園側が運営する開催地で、ここから400メートルの距離にある。屋外のステージとなっていて観客席はその中央の舞台から斜め上から下へ向かっての配置で、舞台より空間がもっと離れているらしい。それだけでなく、舞台の選手から発せられた遠距離射撃による流れ弾みたいな物から守られるように、別の結界系の現神術が張られている。
「なんか、緊張してきちゃったね」
「ルーくん、大丈夫? すごい汗出てきちゃったけど、少しあそこのベンチで座らない?」
「いや、いらないよ。もう大丈夫だ。心配かけてごめん。じゃあ、行くぜー!」
「そうー?ああ、待って、ルーくん!そんなに急がなくていいじゃないー!」
と、俺と梨奈がさんな会話してるのを見ると、右隣にいるネフィールも少しだけ心配した顔になり、俺の顔に自分のと近づかせて、言う、
「早山君ー!大丈夫だよー!わたしも森川さんも観客席で応援してあげるから、絶対に負けないでよねー!君、<神の聖騎士>様の一人なんだぜ!」
と、語尾は少し男口調を強調し力強く言い放ったと同時に、至近距離でウインクしながら人差し指を頬のところへくっつかせてる。やばいー!なんかその動作、可愛いなあーー!!と、ネフィールに身体をくっつかれて鼻の下を伸ばしてる俺に、左脇に歩いていく梨奈から密かな鋭い肘つきを脇腹で食らったー!痛いー!でも気持ちいいー!やっぱ、こういうのが梨奈らしくて、悪くないねー!
と、両手に花でゆっくりしたペースで歩いていくと、いよいよ着いたぞ!
玄関のような高くて豪華な門をくぐってみたら、内の制服を着てるたくさんの女子生徒で溢れかえっているのがはっきりと見えた。大勢のがここの一本道の道路を突き進んでその奥にある、観客席へと向かっていく途中のようだ。でも、俺たち3人を見た途端、何人かの女子生徒が興奮した表情になり、こっちへと近づいてきた!
「早山君.....ですよねー?その<奇跡の子>の内の一人?フェルリーナ嬢と現神戦武装で試合をすると聞きましたけど、頑張ってくださいねー!あんなんに負けないで!」
「そうよ!あの女、一年も前から、態度がデカイし、自分に媚を売らなかった子も何人か取り巻きに苛められたとかも聞いたし、絶対に勝ってみせてね、早山君ー!」
「......あの......私も応援してあげるから.......なので.....頑張って.....」
と口々に応援の言葉を送られた俺。嬉しい!なんか嬉しすぎて涙が出ちゃいそうよー!
両脇にいる梨奈とネフィールを見たら、二人も周りの女子生徒からの声援と熱気に感動や胸に響くものを感じたらしくて、生暖かい笑みを浮かべて俺へと向き直る、
「頑張ってね、ルーくん!あの女に絶対に負けないでよねー!」
「わたしも観客席から君の戦いぶりを見させてもらうから、あんな奴、ぶっ飛びにいけよねー!!」
梨奈とネフィールにも声援を貰っている俺は頷くと、二人が付き添ってるままに舞台へと出る為の門に向かって、道路を真っ直ぐに突き進んでいったが、手前にエレン姫、遼二、有栖川さんも席から立って、俺の方へと歩いてきた。
「ようーー!ルーーー!相変わらず、元気なツラしてるっすよねーー!これなら、1分以内か、いえ、30秒以内で勝てるんじゃねー?なあ、有栖川!?」
「私にもそう思えてきますね。今の早山君、なんか活気に満ち溢れてるって感じを出していますし。」
「早山さん。わたくしも見ていますから、どうか無事に勝利を勝ち取りに行ってきて下さいませ。信じていますわ、早山さん!」
と、真剣で、それでいて暢気な表情をしている仲間3人からの心強い励みの言葉をもらった俺であるけど、なんかエレン姫だけ顔を赤らみながら至近距離まできて両手で俺の右手を握ってきてるんだけど、なんでー!? エレン姫の行動に対して湯気が出ちゃいそうなほどドキドキしてる俺は射さすような視線を感じた!たぶん、隣にいる梨奈からだ。なんで、怒ってんだよー? エレン姫はただ親しみをこめて応援のつもりでやってるだけじゃん、梨奈よー! で、皆の応援に対して、嬉しくなった俺は心温まるような思いのまま微笑みしながらこう返す、
「ありがとうよ、皆ー!俺、勝利を手に必ず帰ってくるので最後まで見ていてくれよなー!」
「「うん!「にししー!「おうー!「ええ!「 はいー!」」
門を潜った俺は直ぐ舞台上へと足を踏み入れた。やっぱり学園のより、数倍デカイね、これー!確かに<リンガ>という現神術を生徒会長さんが発動させて、それで攻撃を受けた際には精神的なダメージのみが発揮されるようになるとか言っててっけ?ふと、視線を遥か上階の観客席の犇いているところへ移すと、どうやらボックス状の特等席?みたいなところに、会長、学園長、とエレン姫以外の生徒会の主要な役員もいるようだ。
「もうお祈りを済んだのかしら、そこの真っ黒い駄犬さん?」
と、侮蔑の言葉が耳に届いてきたので視線を前のフェルリーナへと移動した。
両手を両側の腰に置いて、大股で立っている不機嫌な表情を浮かべるそれは俺を睨みながら、そう聞いてきた。
「お祈りというのは何のことでしょうか、お嬢さんー?」
皮肉のこもった慇懃無礼な返答で返した。
「随分と生意気な口の利き方を覚えるようになったわね、黒犬さん?まあ、今度は二度とその口が開かないように負かして、そしたら奴隷になったあんたを調教し尽くして、一生で私にそのような事がいえないようにしてやるわっー!」
「お嬢さんがそれができるとおっしゃるなら是非、拝見して頂きたいものですね。」
「ふふふ.......もうあんたの声も聞き飽きたし、いいでしょー。直ぐに見せてやるわよ、<マンドラム>さん!」
と、挑発し合う俺たち二人を見兼ねたか、そこのボックス状に腰を降ろしていたその銀髪ロングを風に靡かせているローズバーグ生徒会長が急に立ち上がったぞー!
「<デジョズ>」
その言葉を唱えた途端、広範囲に亘って円形にしてドーナツ型の透明な障壁が客席全体を覆って、展開される。さっき、授業で習った事があるような気がするが、確かにあの<デジョズ>って呼ばれてる現神術は障壁が展開される前の中に元々いる者はそこから出入りすることができるんだよね? それだけじゃなくて、外にいる人間も仲へと入れる。つまり、この結界が防ぐことになるのは偶発的か、または故意が伴われる外からの物理攻撃および現神術からの射撃と放出系の技である。何が言いたいかというと、それはもし俺かそこの女の発した攻撃用の現神術がお互いに命中せずに、客席へと偶発的に着弾しようとしても、その結界によって消滅させられる。なので、中にいる<防衛対象>である全ての観客は安心して試合を観覧することができる。そして、その結界も透明で出来ているために、中からでも外の様子が見やすいし。
それを唱え終えた会長は次に、手を俺たちのいる方向に向けて<リンガ>という言葉を唱えた。会長の手からは緑色のぶっとい糸がそこから伸びて俺らの身体に頭から足まで何回も円を描くように包んでくる。これもまたもの防御・結界系の現神術だな。これで、戦っている俺ら二人は武器からぶっぱなした何の技が相手に直撃しても、リアルなダメージとして現れずに精神面でのダメージだけに留まるね。まあ、その効果が発揮されるのは会長より神使力量の少ない者だけに限るけどな。そして、<リンガ>を使う本人は効果内の対象が誰になるか、何人までになるかは脳内で浮かべた思考によって自由に決められる。それが成された上で手から伸びてくる糸が対象に向かってその恩恵を齎すということらしい。お便利なこった! 授業でも習ってきたことだけど、これを使わずに普通に戦う場合、攻撃用の現神術がお互いの身体に着弾した後は普通に物理的な傷として発生されるけれど、どれぐらいのものか、どれ程の傷を負うか負わないかはその攻撃を受けた者の保有する神使力に限る。ふむ。難しい問題だね。で、「もし両者の神使力が同じぐらいか、近い感じにある?」と現神術学という授業を担当するシーラ先生に聞いてみたら、「その事例が前にも何度か起きて確認されたので、はっきりとこれだけはいえるわ:着弾した現神術がどの級であるかによって傷が小さかったり、大怪我だったりするよ。勿論、何発も食らったかにもよるわ。」それを教室で聞いた途端、「ドラ・・ボールかよー!?」と脳内でつっこみを入れたのを今でも覚えてるよ、ははは......。
で、試合のために二つの現神術の発動も完了させたローズバーグ会長はマイクみたいな拡声機を手で持つと、こう宣言した、
「では、この度は学戦舞祭<バトルエンタメー>のルールに則って、フェルリーナ・フォン・フェリィと早山ルーズによる最終決闘を開催しよう!では、開戦のカウントダウンを数える前に、まずは両者の勝利した時の敗者に対して呑ませる要求を聞こうではないか!」
「それはもうすでに決まっている、会長。こちらの呑ませる要求は<この学園から去って、金輪際俺たちの前に姿を現さないこと>、です!」
と、即刻にきっぱりと述べた俺に続いて、
「私の要求は簡単だわ、会長!あの黒犬が負けたら、<一生は私の奴隷として過ごすことになる>というものにするわ。ふふふー!あの真っ黒で醜い犬が苦痛に耐えられず顔を歪ませて泣き叫ぶ顔....早く連れて帰って見下ろしてみたいわねー!ふふ....あはははー!」
と、元気いっぱいに言い放ちやがったー!おいおいおい、それはもう既にドSを取り越して、ただの頭おかしい女に見えてくるようなイカレタ発言だけじゃーん!
「!!!」
と、なんだ!?この強烈な殺気はーー??
と、それの発生源を辿って見ると、
「なんですってー!ルーくんにあんなような下種なことをしようというのー!!?させないわ!あたしが生きてる限り、絶対にあんたの好きにはさせない!」
「まあ、まあ!落ち着いて、森川さん。試合はまだ始まってないんだし、早山も負けるはずがないって。だから、まずは座って、ねー?」
どうやら、梨奈の奴、凄い目で立ちながらそこの女を睨んでいるけど、ネフィールによって宥められてるようだ。
「では、両者の決定によって、勝者の権利もお互い確認できたし、次はそれぞれの使うことになる<現神戦武装>を取り出して見せてくれ!」
「ローズバーグ会長、それなら、わたくしが<ニスファル>を使用して、早山さんのお所有になっている<現神戦武装>を携帯型から普段型へと戻しますわね?」
「あああ.....そうしてくれ、シェールベット。」
と、ポケットから取り出した、俺の持つ<現神戦武装>はエレン姫の唱えた<ニスファル>によって、元の形へと戻される。そう。この禍々しくて、不気味な形をしている大鎌に.....。
「あら、あら.....<ニスファル>もまだ自分で使えないとは.....本当あんたってどうしようもない犬わね、そこの醜い真っ黒い<マンドラム>はー!」
と、何かが吠えてきたのが聞こえたけど、無視、無視。ああいうのはスールするに限るねーうん。
「ん....<ニスファル>!」
と、フェルリーナもさっきのエレン姫と同様に、その言葉を発した途端、胸の谷間から取り出した彼女の携帯型だった<現神戦武装>が手の中にみるみる内に大きくなって元の形に戻ったみたい。どうやら、そっちはレイピアみたいな形をしているらしくて、紅色と白色という混合で彩られているようだ。性格悪い癖に顔と武器だけ綺麗だとかマジで皮肉だな、はは..... で、ちなみに俺らが今試合に臨むために着てるものは学園の制服そのまま。どうやら、<ランキング戦>とか<聖戦舞祭チーム対決>などという大エベントが行われる際は試合に参加する者は特殊な衣装とか着る必要があったけれど、今は個人の諍いから開催される試合なのでその必要はないとのことらしい。
「では、両者の<現神戦武装>も確認できたし、3まで数えたら試合開始だぞー!いいな!」
会長の宣言に頷いた俺らであった。
「1...2...3!開始!」
会長が数え終わったと同時に、すかさずにレイピアを右手に腕ごと俺に向けて体の向きを横側にして構えたフェルリーナは体中に流れてる現神術を体外へ向けて膨らませた!青白い光を帯びるようになった彼女は手にあるレイピアにまで到達して、光り輝くその武器が点滅しだした!
「<デバリン>ー!」
詠唱したやいなや、レイピアから紅色がした光線が放たれた!
早いー!!
「ふんー!」
それを身体を横に捻ってかわした俺だったが、すぐさま追撃のようなものがレイピアの先端から何発か続いて放たれてきた!
「ひゅん!ひゅん!ひゅん!ひゅん!ひゅん!ひゅん!ひゅん!ひゅん!ひゅん!」
また、彼女がレイピアを握っている右手を左右に振り乱してることも加えての連続攻撃なので、時おり跳躍を混じってそれを交わし続けるのも困難になって何発か俺に直撃した!痛い!けど、やはり、実際にリアルなダメージが入らずに精神的だけに感じる、<頭では痛みとして認識されたけれど、身体にはなんの影響も及ばない>という形となっている。前に覚醒したばかりの<神の聖騎士>だけが使用できる<ラニエル>の効果は相手から受けた直接の物理的攻撃だけを無効化できるもので、こういった遠距離からの射撃系および砲撃系な現神術には効かないようだ。 もちろん、俺に当たらずに流れ弾として観客席に直撃しそうになっても、前に会長の発動した<デジョズ>のお陰で無事にその結界によって消滅させられたのである。俺も自身の持つ、この大鎌の形をしてる現神戦武装で防御したり、切りつけて霧散させることもできたが、今は何故か、少しだけ彼女の手の内の最後まで出させてから本気になってみせるか、あるいはただ単に遊びたい気持ちになってるせいか、そうしなかったんだよね。
「ちょこまかとー!犬らしくて、敏捷性も相変わらずに持ち合わせてるわよねーそこの真っ黒い人型の神滅鬼一匹がー!ほらほらー!そこの真っ黒い手に持ってる大鎌はただのお飾りなのかしらー!??あはは!!」
と、そんな罵倒を飛ばしながら攻撃を続ける彼女であるが、言葉に耳を貸さずに回避行動にだけ専念することにした。何回も跳躍したりすることで、直撃も免れたしね。昨日と今日、授業で何種類かの現神術について学んできたが、どうやらその<デバリン>という技は剣の形をしている武器の先端から何十回かの紅色な光線を放つ効果を発揮するらしい。この技を発動するには一般の剣の形体をする現神戦武装を持って使うことだけができる、いわゆる、<武器限定の攻撃系技>と授業で習ったのを今でもはっきりと覚える。前の学校に通ってた時は確かに勉強は苦手だけど、こういうゲームみたいな授業なら、楽しく感じるので熱心に受けられるね!で、<デバリン>の使用に長けているものや<神使力量>の多い者はこれを持続して何百回か何千回にまでも放ち続けられるということらしいが、果たして彼女はどれほど持つのか、拝見させてもらおうじゃないかー!
「ちえー!大人しく受けなさいよー!この、見るに耐えない醜くて真っ黒い根性無しの臆病犬がー!!!」
と、そう叫んだあの頭おかしい女が取る次の行動は、それを放ち続けるままに俺の方に向かって、突進してくること!そう来たか!
「このーーー!!!!!!!!!くたばりなさい、そこの<マンドラム>ー!!!」
と、怒りに身を任せたまま突っ込んできたが、舞台を走り回りながら光線を回避してる俺は彼女に追われる形にして逃げ回っていくにも見えてくるな、これ!なんか、まるで小学生の頃に喧嘩の際に梨奈と追いかけっこした時に戻ったみたいで懐かしい。まあ、光線も何発か食らってしまったので、痛みはその時と違って感じるが。
「なら!....<ビギラン>!!!」
いきなりそう叫んだフェルリーナの動きが一段、いや、二段と早くなってそれで俺に肉薄してくるー!!やばい!これはマジでやばいんだ!!その剣からはまだ光線が放たれたままで、直撃が尋常じゃないほどに受けるようになった俺はちくちくとした痛みを堪えながら、逃げるのに必死になってきたぜ!
観客席にて.............
「ルーくん.......大丈夫なのかしら.....?」
「森川さん、心配しないで!あれは早山君がまだ本気になってないだけだよ!」
そうぽつりと呟いたけれどネフィールがあたしを安心させるためか、そう言ってくれた。気遣い、本当にありがとうね、ネフィー!
「それにしても、ルーの奴、遊びすぎだろうー!早くその鎌で向かってくるあの光線全てをぶった切れよなー、なあ、有栖川?」
「まあ、これは早山君の初の現神戦武装を用いての試合ですし、きっと長く楽しみたいですしね。だって、男の子ってこういうゲームと同じ感覚の武器を通しての戦いって憧れるものなんでしょう?」
「まあ、それは僕も否定し兼ねるな。なにせ、僕も男の子だしね。」
「ふふふ......なら分かりますよね?早山君はまだその舞台にいる熱気的な雰囲気に当てられてるままなんですから、直ぐには終わらせたくないに違いありません。君もそう思うでしょう、森川さん?」
と、有栖川さんに訊ねられたので、あたしも彼女の方に振り向いて、迷うなくこう返す、
「そうね!考察ありがとうね、有栖川さん!正にその通りなの!」
そう、あたしにも分かるよ。ルーくんって大のゲーム好きでバトル系漫画とラノベも嗜んでる男子なんだから、こういう武器を使っての真剣勝負って昔憧れてたのよねーー。なので、もう心配する必要が何もないわね。今はただここで、皆と一緒にルーくんの勝利する瞬間を待つだけ。ところで、エレン姫は既にあそこのVIP用らしきボックス上の特等席へと戻っていったわよね。確かにあそこで。金髪ロングはこの学園では少数派だから、あそこに座ってると目立つわよね、ここから見渡してみても。彼女と近くにいる他の生徒会の連中も真剣に下の舞台に集中してるようで、嬉しいね。じゃ、皆も一体になって、ルーくんの勝利を疑わずに期待してる感じだし、あたしも負けてらんないわねーー!そう、信じるよ、ルーくん!あんたがあの酷い子をぼこぼこにして、勝つのって。
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光線を何十発も受けた俺の近くにまで駆けてきた彼女は今度、嗜虐的な笑みを受けベて、
「これで、あんたは私の奴隷になったわよ!!感謝なさい!この私が何の役にも立たない醜い黒犬であるあんたをこの私の手で可愛がってあげることになるのだから、構ってもらえるだけでありがたいと思いなさい!」
と、何かわけのわからないことを口走ったフェルリーナだけど、無視だな、あれは!頭のネジが何本も外れた女のいう言葉を一々真剣に受け取る必要は皆無!
「もらったー!」
勝利を確信した彼女だったが、もういい。これくらいにするね。いつも狂人と遊んではいられないし。
「いや。貰ってませんよ!......お嬢さん!」
そう言い放った俺は奔って逃げるのを止めて右手に握っている大鎌を目の前にまで迫って来るフェルリーナに向かって、右斜め上に振りあげた!
「はあっ!!」
「!!!」
オレンジ色の髪を風に揺らされてギリギリでバク 転でかわしたフェルリーナだったが、すかさずに追撃を加えるべく、前へと出る。
「はあー!!」
今度は風が起こされるぐらいに疾風のごとく中断に振り下げた!
「があっーーー!!」
当たったな。着地した彼女はなす術もなく、俺の振った大鎌によって後ろへと吹き飛んだ。
「ぐつー!こほ、こほっ!このー!!よくもこの私に傷をつけてくれたわね!そこの<マンドラー」
「黙れ!」
「え?」
「だから、黙れって言ってんだよ、お嬢さんよ。」
「ん?ふ!ふふ!ふふ....ふふふ!あはははーー!!!ようやく、鳴りを潜めていたその乱雑な口の利き方をまたもこの高貴なる私の耳に聞かせようとするわよね、そこのみにくー」
「うるせえー!」
もうそんな罵倒を聞き飽きた俺は我慢ならないとばかりに、一瞬にして距離を縮めて大鎌で彼女を下から上に向けて振りつけてやった!
「ぎゃああーーー!!!!」
女の子らしくない悲鳴を上げなら、激痛を感じながら後ろへと吹き飛ばされたあの口の悪い女である。
後方へと背中から落ちた彼女はよろよろと立ち上がろうとするが、あまりの痛みにそうも上手くいかず、膝を震わせながら切り付けられた箇所であるお腹を片手で押さえている様子だ。様みろー!
「言わせておけばさっきから、<マンドラム>とか<黒犬>とか一々、五月蝿いな、お前ー!こっちは我慢したいと思ってたのに、もう堪忍袋の緒が切れるぜー!」
そう。仲間が俺の勝利を待ってあそこに着席してるってのに、これ以上時間を無駄にするわけにもいくまい。さっさとこの女を気絶させて、皆の元へ戻ろうぜ!
「がつー!くっ.....何よ~~。数回当たっただけで、この私に勝ったつもり、そこのこっけー」
「もう言わせてやらんよー!」
「ひぎゃあああーーー!!」
今度は彼女の正面まで駆けていって、鎌の刃のあるところでなく、裏にある鈍いところで彼女の頭を打撲してやった。俺の攻撃を受けて何回も旋回を繰り返しながら、舞台の地面を転げまわっていった。
「ひぎー!はああ.......はあああ.....はあああ.....」
「どうした?俺を奴隷にしたいんだろうー?なら、やってみせろよ!フェルリーナさ・ん・?それがお前の全力って訳じゃねえーんだろー!ああー?」
もう頭に血が昇り過ぎてるので、まるでヤクザのような口調になってしまった俺。いかんー!こんな無体をしてしまうとは。梨奈や仲間たちが聞いてしまったら、どう思われるか怖いので、もう止めようね!うん!だって、普段の俺は優しくありたいし、こんな女の所為で自分まで口悪くなりたくないよなー!うん!
「はあああ.......はあああ........このっ!舐めないでよね、黒犬のくせにほざいてんじゃないわー!」
と、怒りに燃え出した彼女は激痛を堪えながらも懸命に俺へと<デバリン>でまたも攻撃をしかけようとしたけど、今度は鎌を使って何十発に亘る射撃を全部、弾いた。
「そ......そんな.....なんなのよー!あの<現神戦武装>はー!??普通は<デバリン>を何十発も数秒間で弾いたら、少しは刃毀れも起こしちゃうというのに、なんで何もないのよーーーー!!!」
「アサネ」
「え?」
「だから、言っただろう?これはアサネ。俺の現神武装、アサネ(朝寝邪魔鬼両断大刃)だよ。」
と、フェルリーナに向けて、言ってやった。
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