第15話 フェルリーナ嬢と決闘3

聖メレディーツ女学園。ゼンダル王国のフォルールナ王都にて設立されたそれはこの王国や周辺国において唯一、神滅鬼と戦うために必要な存在であるヴァルキューロアの育成に向けて、とても重要な役割を担う養成校である。100年も前から続いてきた国際的な学園でもあり、ゼンダル王国と友好的な周辺国から多くの編入生を迎え入れて、数多くの一人前のヴァルキューロアを輩出してきた。


神滅鬼と関係なしに、人間同士の争いや戦争は確かに、何百年もずっと絶えずに行われ続けてきた、このグロスカート大陸ではあったが、102年も前に起きた、シュフリード打倒戦争では当時のシュフリード帝国があったが、当時の幼い聖虔白女の身柄の確保と親権を巡る戦争がその帝国の皇帝の圧制に堪えかねて、謀反を起こしたメレディーツ第二皇女の反逆軍の勝利によって終結した後、彼女やその支持者の決定で王国制度へと国政を変えた。帝国の暴行を止めたメレディーツ皇女はその後、普通の国民となり、当時の幼い聖虔白女を皇帝の監禁から助けた功績により、聖なる英雄として称え祭りあげられた。その後、ケルギン条約が締結され、それ以来はこの周辺では国家間による武力衝突は一切起きなくなる。このゼンダル王国は当時の戦争に関わった一国でもあったので、常に平和を旨とした国策を心がけてきた。


周りの国々もこの国と同様で、絶対に同じような争いも繰り返したくないので、外交面ではこの周辺の国は全て、親近な関係にある。それを証明として、各国は多くの<神に見初められた子(ネルーサ)>をこの国の聖メレディーツ女学園に入学させてきた。女性だけが戦闘可能な神使力を使えるが、生まれた瞬間から大人になるまでに、全ての女性がそれを授けてもらえる訳でもなく、大母神が選んだ(ネルーサ)と言われる子だけが戦闘可能な神使力をその身で開花できる。当然、力を持つ者に責任重大、というのもあり、ヴァルキューロア同士による武力紛争を避けるためには、各代の聖虔白女なる者あると確認された人物が一代毎に、大母神にとある重要な祈りを捧げてきた。その祈りの内容とは、戦争を仕掛けた国に災いを下して頂いて、反省させるように。


なので、この全寮制の学園では道徳的な事も生徒に教えられて、そして神使力の正しい使い方だかじゃなくて、それを通しての数々の現神術を在籍生徒に習得させ、教育を施すのを主とした教科内容に組み込まれている。勿論、それだけじゃなくて、普通に世界に関する一般の知識も教科課程として含まれており、この学園に通う全ての生徒は漏れなく卒業後、立派なヴァルキューロアとして正式にそれぞれの国の騎士団へと入団するものが大半である。100年も経った現在に至るまでの歴史記録では落第者も少なくはないが、その場合は騎士団の後方支援か、あるいは事務的な政務にもつけるので、就職率はほぼ100パーセントである。でも、落第者の中にはごく稀にではあるが家に引き篭っていたばかりの怠惰な貴族の娘も何人かいたが。


で、その聖メレディーツ女学園で、今まさに、私闘の為に<聖者の白広壇(ナランテース>と言う名の舞台上で、二人の在籍生が己が信念や主張を通して、物理による戦いを繰り広げている途中である。果たして、勝利を収めるのは少年の方か、あるいは少女の方か、観客の誰もがそう思うのであった。



ふううううううううううーーーーーーーっ!

早いーっ!!!

猛スピードで俺の位置まで駆けてきたフェルリーナ嬢が正確無比に瞬時的に勢いを殺したと同時に体を素早く捻って、スカートを惜しげもなく靡かせたまま鋭い回し蹴りを放ってきた!


しゅーーーーーんっ!

ぎりぎりで身を屈んでかわした俺はまるで自動的に、条件反応と呼べるような行動として、彼女のニーソックスが履かれている軸脚めがけて、スライディングキックで薙ぎ払おうとした!


ドスッー!

利いた!俺の反撃によって、軸脚を払われたフェルリーナ嬢は宙に浮いて、直ぐ様お尻から落ちた!うううおおおおーー!スカートが捲れすぎて、パンツが一瞬、ちらっと見えたぞ!って、いかん!戦闘中なのに余計なことをー!


で、落ちたばかりで身動きも数秒間、自由にできないのを見て機を逃さずに、またも追加攻撃として、彼女の方に飛びかかって、覆い被せてから気絶させるべく首と頭の横側を狙ってチョップを見舞いしようとしたが、


「-はああアーツっ!」

ドンッーーーーー!


惜しいけど、それが成功せずに、彼女は体中を信じられないような速さで回転しながら素早い速度で、反撃として繰り出されたであろう斜め上向きの蹴りを俺の顎にクリーンヒットした!


激痛と共に遥か後方に吹き飛ばされた俺だったが、そんなに遠く吹き飛んでないので、舞台を囲む堀には落ちてなかった。助かったぜ!!


「いっってーな、おい!(でも、少しだけ気持ちよかったのは心の内だけにとどめて置こう。マゾだと悟られたくないからな。)

「あら?急に乱暴な口調になってるけれど、ようやく黒犬らしく吠えるようにはなったわね?」

「いやーー。これは俺の本来の口調なんで、どうか許してくれないかなーお嬢様よー?戦闘中なんで、取り繕いの言葉はもう不可能だって。」

「.....はっ!よくものを言うようになったわね、<マンドラム>の分際で生意気だわ!」

「あんたも口が達者のようなのでお互い様だろう、お嬢様よー。」

と、お互いを挑発し合った俺らだったが、

「それにしても、よくこの私を地面にまで落とせたわね!反応速度はまあ、まあではあるけれど、さっきのはただの腕慣らし程度でしかないわ。私の本気はまだ先なのよ。例えば、これなら........どう!!」


!!!!!!

信じられないような速度で、またもこっちへと駆けてきた途端、今度はさっきと違って、俺の脚を狙っての下段の薙ぎ蹴りを繰り出してきた!

「はあーっ!」

それを跳躍してかわしたけど、しまった!

と、俺の失点を嘲笑うかのように、冷酷な笑みを浮かべた彼女は直ぐ様その伸ばしてきた脚をばね仕掛けのようにそれを上へと鋭く逸らされた!いかん!


ドコオオオーーーーーーーッ!!

!!??@@@?!!!###@@@@!!~@#!!@$~~~@$!!

痛いいいいいいいいーーーーーーーーーーーッ!!!!!!


眼球が本当の意味で、飛び出ちゃいそうな激痛を感じた途端、よく分かった事はそこ足が俺の股間へと強く直撃されて、それを受けた俺は上へと宙を吹き飛ばされて弧をかいて少し開いた距離で舞台の地面へと落下した。


それと同時に舞台を転げまわって鈍痛を抑えた俺は涙をたらしながら、股間を両手で押さえて堪えようとしたが、俺の現状を見てる彼女の反応が気になって、痛みを耐えながらあそこに目を凝らして見ると、どうやら口元を白い手で押さえて爆笑してるらしかったけれど、俺と目が合った途端、直ぐに気を取り直して、容赦なく追撃のつもりで襲い掛かってきた!


「--はっ!!」

王城にある図書館で、エレン姫が俺と仲間3人に付き添って本の読書に付き合ってくれたので、彼女から学んだ知識により、強烈な痛みに対する回復方法および反撃方法を思い出したので、俺の体内に流れてる神使力を爆発的に体外へと向けて放出して、それで股間に感じる痛みも即刻で消えた!

「くたばりなさい、ー黒犬がっ!!」

と、今度は上からドロップキックをかまして来たが、痛みが消えたのと同時に、今度は彼女の伸ばされてきたニーソックスに包まれた右脚を手でつかんで、自身の身体を素早く何回も回転させて、それで堀へと向けて投げ出してやった!

「きゃあああー!」

宙に浮いたまま投げ出されて悲鳴をちょっとだけ上げた彼女だったが、いきなり手を下にある舞台へと向けて目に見える程の強い神使力を放った!それで、少しの放出力が伴う風が手の平から発生されて、それで下の舞台の石が僅かだけどひび割れていると同時に、彼女の身体が後ろへ押される形に綺麗にことなく、後方宙返りしたみたいに無事に着地しやがったぞ、おい!ってか、さっき超パンツ、また見れてラッキよ、ううひょおおおー!(緊張感ゼロで草だな、俺。まあ、気を引き締めていくよ!)


「激痛の最中だったのに、よく回復したわね?神使力の効果的な使い方は悪くないわね。犬の癖によくやってみせた。」

「お褒めに預かり、光栄だよ、お嬢様。」

「動きはいいし、反応速度も悪くないので、<マンドラム>みたく敏捷性も兼ね備えてるようで見た目通りの動きをしているわね。」

一々、見下したつもりの言葉を使いすぎ!すこしは謹んでくれんか、お嬢よ!

「では、腕慣らしもこれくらいにして、本気といかせてもらうわ。」

と、何やら、仕切りなおすかのように、表情を引き締めてから、嗜虐性のたっぷりこもった微笑を保ちながら、悩ましく腰を左右にちょっとだけくねくねさせながら、こっちへと悠然に、それでいて優雅な足取りでゆっくりと近づいてくる!やばい!これは本当に様になるな!ぽよんとした乳房も、まあ、梨奈ほどではないにしても、少しだけ目が奪われそうーって、....いかん!!戦闘中なのに何考えてんだよ、くそっ!


俺の目と鼻の先まで近づいたフェルリーナ嬢は冷淡な微笑を浮かべたまま、鼻息がかかるような声でこう告げてきた。というか、近すぎて梨奈やエレン姫みたいにいい匂いがしてクラクラしちゃいそうよー!

「20秒以内。」

「え?」

「だから、もういったでしょー?20秒以内で、あなたは必ず、私の攻撃によって、あそこで意識を失くしてくたばっているようになるわよ?」

え?何いってんの、この子?


それを疑問に思う途端、鋭い痛みが顔面に炸裂したに感じた!いーーーーってっ!!

パンチされて後ろへとぐらつきそうだけど、地面の足に力を入れて踏み込んだんだが、今度は雨あられとばかりに、何回かのパンチがマシンガンのごとく俺に襲い掛かってきた!もう痛みも感じる暇がないくらい麻痺した感覚になり、最後に覚えた感触は顔面にまたも上段向けの容赦ない強烈な雷撃のような蹴りがストライクしてきた!


遥か後方へと吹き飛んだ俺だったが、


「ルーくん!!!!!!!!!」

と、なぜか、梨奈の声がちょっとだけ聞こえたと同時に、意識が薄れてきそうに.............


森川里奈の視点:



で、あたしは運よく、ルーくんと同じクラスで、2年生全員の教室が割り当てられてる中央の本棟<ニラ>の内にある、2階の2年B組という教室になってるんだけど、担任先生であるシーラ先生のホームルームがようやく終わろうとした頃に、

タタタターーーー!!

タタタタタタタターーーーー!!

うん?なんか、騒がしいけど、何があったのかな?

「森川さん、だっけ?」

ん?急に前の席に座ってる緑色ショット髪な子が振り向いて、こっちを見てるけど、ああ!!!この子、エレンの部隊にいた子よねー!? 確か、名前はネフィール、だったっけ?

「わたしだよー?エレン様の部隊に務めてきたネフィール・フォン・セーラッスだ。覚えてるでしょー?にしししー....。」

そう。確かに覚えていたわ。この子ってエレン王族直下部隊の部下の一人と自分で自己紹介してたのをはっきり脳内で思い出した。それにしても、あたしに対して、敬語を使わなかったり、フレンドリに接してくるのはきっと、あたし達は本当は<神の聖騎士>であるという事実を伏せるためにと釘を刺されてるに違いないわよね。ってことは、今は<奇跡の子>として、普通の同年代の新入りとしてあたしと話してるんだよね?

「ええ、思い出したね。ネフィールさんだよね?」

「ネフィーと呼んでもいいよ。というか、呼んで欲しいなあぁーー。わたし達って同じクラスでしょー?」

「ええっと、そういうなら、ネフィーさんと呼ぶわね?ルーく、じゃなくて!早山ルーイズという内の一人はまだここへ入ってないんだけれど、どこにいるか知らない?ひょっとして、どこに行ったのかもしかしたら分かるかもと思ってー。」

「ん?そういえば、早山くんって同じクラスなんだよなー!なんでまだ入ってこないのかわたしも知りたいよー。ね、次の授業、サボって彼を探しに行こうよ、ねー?」

「え?........でも.......入学してきて初日だし、なるべく目立たないようにしたいんだけれど.......それに、いつか入ってくるし必要ないと思うよ?」

「んんんん........わたしとしては早く次のつまんない数学の授業から逃げ出したいよーうううぅぅっーーーー.......。」

え?どうやら、この子って、数学が苦手らしいね。それなら、

「あたしー」


ドンー!

と、ドアーが勢いよく開け放たれたと同時に教室へと駆け込んだ別のクラスらしく女子生徒が.....


「君達も早く見に行けー!決闘が開催されそうよ!1階にいる子は皆、既に向かっていったんだ!」

決闘?って、なんだろう、それ?言葉の意味その通りに?

と、彼女の催促に呼応するように、あたし、ネフィーさんと他のクラスメイトも彼女に続いて、慌しく廊下を駆け出して、建物の外へと出て行った。


と、何か凄い広さのある、堀に囲まれた丸い舞台が目の前にあるのに気づいてるけど、ネフィーさんと一緒になって、石でできた柵のあるところへと人ごみを割って近づいてみれば........


えええ!!!!!あそこにいるのってルーくんじゃないー!??


ん?!!ルーくん!!あたしの目の前には信じられないような事が起こってるので目を擦ってみたけれど、どうやら本当だ。今、あそこの舞台にいるのは、ルーくんであるに違いないけど、今はバランスを崩しちゃいそうにながらも懸命にも踏ん張って、そこにいる知らない女子生徒からの猛烈なパンチによる連撃に堪えてるところ。ルーくん!?なんでそこにいるの?


と、疑問や心配が脳内に渦巻きはじめると、隣にいるネフィーが、

「あれって、フェルリーナ嬢じゃないか?この学園に在籍してるヴァルキューロア生徒の内に、総合的な強さを測るのに導入されてきたランキング制度、<ナムバーズ>序列9位のランキングにいる子じゃない?」

「え?どういうことなの?」

「彼女、フェルリーナ・フォン・フェリィーはフェリィー家の一人娘で、時期当主だそうよ。フェリィー家は100年も前から、複数の代に亘って、なんらかの功績をこの国で成し遂げてきたんだよ。だから、その所為でで気が強い子で、常に自分の信条や理念を曲げないタイプの面倒くさい高飛車なお嬢さんよ。まあ、わたしも貴族の娘で、彼女より上の序列7の座にいるんだけど、あまりそういうの苦手だよなー......。平民とか貴族とかどうでもいいじゃんー!同じゼンダル王国の民なんだしさー。」

でも、どうしてフェルリーナ嬢が今そこの舞台にいて、ルーくんに激しく殴りかかってる途中に!!? と、ネフィーからルーくんのいるところへ視線を戻すと、彼は眼にも留まらぬ速さで繰り出された雷のような蹴りを顔面に食らって、それで勢いよく後ろへと吹き飛んでいったのが見えた。


!!!!!!!!!!!-------!!!!!!!!

「ルーくんーーーーーっ!!!!!!!!!!」


____________________________________


意識が........途切れそう。舞台上に背中から叩きつけられた俺だったが、さっき、梨奈の叫び声みたいなのを聞かされたから、繋ぎとめた!


そう。

俺は地球から、無理やりにここへと召喚されてきた、<神の聖騎士>の一人なんだぜー!つまり、勇者ってもんだろがー!!カン・ウェイ・とかいう魔王みたいなもんもまだ倒してないのに、こんなところで負けて、たまるかー!!!


全身が激痛に苛まれながらも、血が額、鼻、口元や頭の天辺から下へと流れていても、身につけてる制服があっちこっちへ破かれていて、肌の露出度が女子生徒と争えるようにか、いや、もえ超えてるだろうな、これーー、露出した箇所からは酷い打撲傷がたくさん覗かれていて、もし梨奈の奴が見ていてもきっと驚愕するだろうなーーあははは.........。さっきから食らわされてきたな、あのマシンガンのようなパンチの雨は。顔だけじゃなくて、体中が満遍なく直撃されたようだ。一体何回まで食らってきたんだった?100回以上はあると、感覚から感じた。20秒内であれを全部食らってきたんだっけ、彼女のいった事が正確であるなら?


よろよろと膝が震えていて、痛みが半端なく全身に行き渡っていて、辛く堪えながら立ち上がる俺に、


「.....なんで.....?」

信じられないものを見てしまったかのように、フェルリーナ嬢は俺がゆっくりと、痛みを堪えながら立ち上がるのを見ると、驚愕とした表情になる。


「.......バカな......ありえないわ、それ!」

と、眼前の事実を否定しようと叫んだ彼女だったが、生憎と、これは事実だ。当然だろうー?なあ、そこにいる梨奈よ!


彼女も俺がようやく立ち上がるのを見ると、顔を綻ばせて、嬉しくて、それでいて安心した表情で溜息をついて胸を撫で下ろしたー!うううひょおおおーー梨奈のおっぱいがちょっとだけ揺れて眼福、眼福!


「さっきはいいものを見せてきたな、お嬢さんよ。今度は俺の方からも付き合ってくれないか?」

「.......!!......」


と、きっぱりいってやった俺は、フェルリーナ嬢目掛けて、一瞬にして距離を縮めた!


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