第16話 フェルリーナ嬢と決闘4

春介遼二の視点:


僕と有栖川は2年E組みという教室へと担任先生であるレギナ先生に案内されて、そこで自己紹介も済ませたが、着席すると同時に、どうやら僕と有栖川は隣席になっているようで、きっと僕たちの精神的ケアのつもりでこういう配置にしてくよう女王からの取り計らいも関係していることだろう。この教室は2年生の全てがいる本棟<ニラ>の2階で位置されて、ルー達のいるB組とはちょっとだけ離れているところにある。レギナ先生のホームルームも終わり、息を吐き出した僕は隣の席にいる有栖川に目を向けた。奇跡の子という件もあるので、ここいらにいる女子生徒から何やら物珍しい、または熱い視線も向けられているので心なしか、そのお陰で、隣側にいる有栖川が何か複雑で、それでいてちょっとだけ不満のような表情を浮かべた。まあ、僕以外はここの教室って、全員は女子だと言う事だろう?なので、異性として僕と付き合いの長い有栖川なら、きっと何か嫉妬めいたものもちょっぴりと含まれるんだろう。最初の授業を担当する先生がやってくるのを待ちながら、ようやく担任もいなくなったか、唯一の男子生徒である僕に視線をいっそ集中させて話しかけようとする何人の女子が視界に移るけど、そのとき、急に有栖川に声をかけられた。


「それにしても、早山君達とは別々の教室になるのは想定外のことですね。」

「そうだね。まあ、さっきの事務室で聞いてきたからもうわかっただろう?あいつの幼馴染は一緒のクラスだし、きっと上手く行くだろう。」

「そうですね。」

「.......あの......」

「....お話し中で、すみません。えっと、そこの男の子って、先日、学園長が全校集会で事前情報として発表してくれた、<奇跡の子>の内の一人ですよね?その...歴史上、初めて戦闘可能な神使力が身に宿るようになるっていうあれですよね?」

と、勇気を出してきたか、おろおろしながらも懸命に興味を隠そうともせずに声をかけてきた二人の女子生徒。それにしても、結構可愛いね、二人とも。一方は三つ編み黒髪で、もう一人はセミロング茶髪な髪をしている。有栖川以外の女の子とも仲良くなりたいから、そっちから声をかけてくれて助かるよ。

「はい。そうですよ。彼は私の昔からの友達で、ずっと共に過ごしてきましたよ。」

「...へえーー!すごいね、それ!もし差し支えがなければ、二人のお名前を聞かせてもらってもいい?」

テンションが高くなったか、そう聞いてきた。

「それなら、大丈夫っすよ。僕はー」

ドンー

勢いよくドアーが開けられ、何やら慌しい様子にあるというのが顔付きから窺える程な数人の女子生徒がこっちへと声を上げる。

「君達も見に行かない?<聖者の白広壇(ナランテース>で、生徒同士による決闘が始まるらしいよー!」

え?有栖川や他の女子二人と顔を見合わせたら、直ぐにあっちへと向き直って、4人揃って他のクラスメイトと一緒にドアにいる子に案内される形で、校舎の外へと走り出そうと階段に向かっていく!


「森川さん!何がどうなっているんですか?」

「え?早山君は側にいないようですけど、一体何がありましたか?」

と、人混みを割って入ると、堀の縁にある石の柵の前で前を向いている森川さんが見えたので、声をかけてみた。なんで、ルーの奴が隣にいないの?と疑問に思いながら、有栖川と他の2のクラスメイトを連れて近くまで歩いていくと、


「すごいね、ネフィーさん!」

「うん!入学したばかりで、神使力の保有量も二日前で著しく成長したばかりだというのに、まさか<ナムバーズ>序列9位のフェルリーナ嬢と互角な勝負を繰り広げるだなんてー!なんか、かっこいいね、早山君って!」

「ああー!有栖川さんに春介くん!あれ見てー!」

ん?隣にいる....ネフィーさん...だっけ?と共に正面にある丸い舞台らしくものに夢中だったが、僕たちの声が聞こえたか、すぐ振り返って、前を見ろと返事した!何事だ!有栖川と一緒に二人の側に陣取って、前に視線を向けると、


ボコッー!!ガッー!!ドスドスッ!バコッー!!バシッー!!ドゴッー!!

舞台上で早い動きと凄まじい攻防を繰り広げてる二人の生徒が見えた!というか、そこにいるのってルーじゃんか!?何で上半身の制服の生地があっちこっちへ引きちぎられてて、そこからは痣みたいなのがあるの?



______________________________


ドスッ!!ガッー!

今、フェルリーナ嬢からの何十回からなる連続のパンチを腕と手でガードし、続け様に反撃として、自分からもパンチを何回か繰り出してみたが、全てが相手にブロックされたり、かわされたりでまったく命中してこなかった!これを繰り返してきた俺らの周囲にはお互いの神使力による放出が強い風を起こして、両方の身体を青白く光らせた!やっぱ、神使力の放出量が一定の限界から過ぎると、目に見える形でオーラみたいに光ってるものになる。


そんな攻防だけじゃなくて、時には彼女から繰り出されてきたキックを腕でブロックしたり、避けたりで凌いできた。俺の方からも何度か蹴りを何発も食らわせようとしたが、彼女も俺と同様、それを上手くガードしたり避けたりで、二人に決着がつきそうな気配が一切やってこない!感覚からしたら、多分、既に5分も経過してきたんだっけ? ならー!


打開策を思いついた俺は直ぐ行動に出した!

「---はっー!!!」

攻防の隙を突いて右腕によるアッパーカットを繰り出してみた!

「-ふんっー!」

やっぱり、よけられた!それも見越したなので、次には僅かに背を後ろへと逸らした彼女へ追撃のつもりで体を逆側に捻って左腕による拳突きを食らわせようとした!

ボゴーツ!!

「きゃああー!」

当たった!

左腕を使っての鉄拳突きを胸の下辺りに受ける彼女は悲鳴を上げると同時に後ろへとぐらついた!なんか、スカートもひらひらして、ちらっとパンツが一瞬見えたけど気にしないように。今は極致な心境にあるのでそんなものに感けてる暇はない。一瞬、動きが停止した彼女のを見ると、隙ありー!

そう思った俺は前に彼女から食らった何十回までに及んだパンチをそのまま、彼女にも返してやろうと試みた!

「はっー!!」

青白い光が見える程に多量な神使力量が纏われた連続のパンチを放った俺は容赦なく彼女の全身に当たって、機関銃のようにとどまる事を知らず、彼女の身体に直撃し続けていく。まあ、なるべく彼女の顔は避けるようにしたいけどな。だった、女の子の可愛い顔をこの手で痣だらけにしたら、目覚めが悪くなるし、何より俺の信条に反する行為だ。


「あがー!いぐー!ぐえっ!うぐっー!がっ!ぐほっー!ぐっ!ゲホッ!ゲホッ!」

と、乳房を揺らされながら、打撃を胴体で万遍なく受けた彼女は様々な呻き声を上げていく! フェルリーナ嬢のそういう辛そうな声を聞くと、なんか可哀想に感じてきて攻撃を止めようとしたが踏みとどまった!


これは一応、俺の自由を巡っての勝負だし、それに、戦いでは男も女もなく参加者は全員、等しく平等な扱いされるべき!


「がっ!....ん..なっ...なっ!舐めないでっーー!!!!!!」

と、勢いよく叫んだフェルリーナ嬢は連撃を受ける途中であるのにも関わらず、自ら後ろへと飛び退って、その反動を利用しての鋭い前蹴りをこっち目掛けて突出された!!!

しまった!


「がっー!」

パンチの連続攻撃の途中であるため、急な対応ができなかった!まともに食らった俺は後ろへと吹き飛ばされた!

舞台へと尻から落ちたけど、バネのように直ぐに飛び上がったけれど、今度は追撃のつもりか、素早く駆け出してき彼女は反応の遅れた俺の顔面を血が滲む出るまで爪を立ててガチっと掴んで、その後はそのニーソックスに覆われた脚で膝蹴りを食らわしてきた!


「ぐっー!!がっー!!ぐほっー!!」

鳩尾に3回までに強烈な攻撃を受けた俺であったが、顔面が彼女の白い手によって掴まれているため、身動きの取れない体勢を強いられた!あぐー!超いってーなあ!でもこの爪が皮膚を刺してる感じはー!(なんか気持ちよくも感じてーっていかん!戦闘中になに色ボケになってんだ!)


と、その後、5回も強力な膝蹴りを受けた俺は肋骨が何本か砕かれてような激痛を感じて意識を失いそうにはなったが、またも鋭くほっぺの皮膚が爪に掻かれてるので、それで保たされた!


「はっ....はっ....どうやら、あんたも遂に限界がきたみたいわね。なら、一回だけ聞くわ。今すぐ降伏なさい。じゃないと、あんたのその真っ黒い頬をめっちゃくちゃにしてやるわっ!」

降伏するものか!俺の自由はそんなに安く捨てたものじゃねえーぞ、お嬢よー!

ってか、残虐行為はしないといってきたじゃんかー!なんでー!??というか、彼女の価値観からすれば、目玉を抉る以外は残虐とはカウントされないのかな.....?それにしても、さっき俺からの猛烈のパンチの雨を食らったために、彼女の上半身の制服も俺と同じようになって、あっちこっちが破かれてて、元々露出の激しい衣装がもっとエッチに見えてきた!絶景、絶景! 


で、何秒も経って、降伏推奨に対する返事をしてやらずにいると、頬を握る手に力が強めてくるかと思うと...

って?...........ぐああああがあああーーー!!ぐぎゃあああああーーー!!!!いぎいいいー!!! 痛いー!!!!痛い!!!!!止めてー!!!!!涙目になりながら、彼女からの強い握力に堪えずにくぐもった声を上げながら、苦悶の表情を彼女の手の隙間から覗かせてる。


「ふふ....!あははははっー!!黒犬らしく、ようやく本来の本当の醜悪な顰め面を晒せるようにはなったわね、この黒くて見るに耐えない<マンドラム>はっ!ふふっ!あはははっー!」


と、神使力をいっそ込めた彼女の手が強く青白い光を帯びてきて、それで顔面中を強く握り潰されようとする俺は成す術なく、大量な血が噴出していったと同時に、顔の肌がまるで刃で引き裂かれたように裂傷がほっぺの両側で深くできたので、どうやら爪と指が揃ってが深く筋肉を貫いていて、それで気絶しそうにー!あああ.....やっぱ、この女、マジで残虐だな!事故で胸を触ってしまったが故にこんな思いをしなきゃならないなんて!俺ってついてないやー!うぐーっ!残虐姫と呼んだ方がいいのかな?.........というか、もう意識が......


「ルーくん!!!!!!」

「ルー!!!!」

「早山君ー!!なんて酷い女性なんですか!!! 貴女はー!!」

なんか、仲間3人の声が聞こえてくる気がしたけど、直ぐにもう聞こえな..............


_______________________________


フェルリーナの視点:


私、フェルリーナ・フォン・フェリィーは幼少の頃から、フェリィー家の跡取り娘という自覚を身につけ、と両親にしつこいまでに念を押されたままにして育ってきて、ヴァルキューロアとしての誇りを常に持つようにとも言われてきた。厳しい環境下で、母であるフェリィー伯爵からは数々の辛くて、堪えられないような訓練を施され続けてきた。


「はっ....はっ.....お母様、私、もう休みたいですー!疲れすぎて、剣を握れなくなりそうですー!はっ.....」

あの時、9歳だった私は毎日の地獄のような修行に堪えて、初めて文句を言った時を思い出した。それをお母様に懇願してみたら、

「ガッー!!」

と、慈悲のない、全力の蹴りがお母様から放たれて、それで遥か後方へと吹き飛んだ私が地面に落下したと同時に、襲い掛からる形にして、身体中を覆いかぶせられた。私の上に乗っているお母様は私の顔面目掛けて何度も、神使力のこもった強烈な拳による打撃を繰り返して、当時は私の神使力の保有量が一定の測定を越えたばかりだったので、お母様による容赦ないお仕置きには到底、堪ったものではなかった。

「はっ......はっ.......」

と、顔面中を覆い尽くした痣や打撲傷により、大量な血を流してる私は身体ごと遥か前方へと投げだされて、地面に何度もも転げまわっている私がようやく停止してるのを見るお母様から、こう告げられた。


「剣が握れないというのなら、ソリスを教えよう」

そう。ソリスはこのゼンダル王国の主要な武道で、特殊な戦闘方法を覚えたいヴァルキューロアに教えられてきた国立的な誇りでもある。主に蹴り技をメインな攻撃方法にし、そして顔面への容赦ない攻撃を扱う武道である。その、何年か厳しい訓練を毎日のように強いられてきて、少しでも根を上げようものなら、お母様からの残酷までに感じるほどの制裁を加えられてきたからもうしなくなったように細胞レベルにまで教え込まれてきた。もちろん、制裁を受けた後の傷だらけな私は現神術の使用によって、治癒してももらったけれど、その後は直ぐに訓練へと戻されるので休む暇も殆どなかった、食事時、睡眠時や読書時以外。13歳はこの国の予備校へ通い始めて、聖メレディーツ女学園に通う前の神使力や現神術に関する初歩的な知識、およびヴァルキューロアとしての理念や心構えを旨とした教育課程を施された。


去年から聖メレディーツ女学園に入って今は2年生だけれど、最初の頃に1年生だった時は神滅鬼の退治に追われた日々も一時期あった。そう。神滅鬼がまたも歴史上に姿を現した2年前から、ヴァルキューロアとしての初任務を一年前からこなした私と他の同級生はそれが誇らしかったと思う。長年の厳しい鍛錬の末に、ようやく鬱憤を晴らせる時がやってきたんだもの!で、当時の私が初めて、倒した神滅鬼は1匹の<マンドラム>だった。真っ黒い全身と痣のような物が頭中に膨らませてるあれを見た瞬間、とっても醜くて、気持ち悪く思ったので苦い顔でそれを容赦なしに息絶えるまでに絶え間もなく現神戦武装を使って何度も切り刻んだ。その醜悪な姿を見た途端、思わず脳裏に自分がお母様に制裁された直後に顔の傷を鏡で見た時のことを思い出してしまった。もう、<あんな顔>はもう見たくないわ。私はヴァルキューロアとして神滅鬼と戦う使命を担ってる一員なんだけど、じゃ、それなら、なるべくあの怪物以外は綺麗なものだけをこの目で体験したい。ただでさえ戦場では昔の自分の傷だらけな顔を彷彿とさせる醜い神滅鬼をこの目に映さなきゃいけないというのに、日常生活でもあれなら、もうたまったものではないわー!


と、この黒い皮膚をしてる男の顔面を強く握ってる私だけれど、やっぱり醜いね、この男は!全身が真っ黒でできていて、今まで16歳生きてきた私は見たこともないような肌色だわ!<マンドラム>みたいな色をしているそれは私の神使力がこめられた掴みからなすべきもなく、苦しい表情を浮けべながら、両手を使って私のそれをはがそうとするが、生憎と、本気の今の私では効果が一切ないわー。残念だわね、黒犬さんよ~~~。


「ね、ね、見て?フェルリーナ嬢、また<あれ>やってるよ~?」

「ああ......あれだよねー?その....<最終の豪手>って!」

「ええ。今までは<マンドラム>相手にしか使ってないのに、よもや人間相手にその技を使うとは....」

「ねね、手の隙間から見て?彼、顔が真っ黒だから気づくの難しいけど、凄い涙目になって辛い顔してるように見えるけれど、大丈夫?なんか、痛がりすぎて可哀想に見えるけど....」

「神滅鬼に対して、容赦しないというのはわかるけれど、いくらなんでも、人間相手に対して、残酷すぎやしないかなー?」

「あの女、イかれてるとこあるからなー。」

「酷いですねー!校舎に入ってきた瞬間から、かっこいいなと思って放課後になったら、わたしが先に声をかけようと決めた彼をフェルリーナ嬢があんなに傷つけてー!もうー!許さないよ、フェルリーナ嬢!わたしより強いからって、そんな残虐な行為を行う女性はこの学園ではいりません!ねー!?」

「しゅうううーーー!!!聞かれちゃうわよー!そんなこと言ったら!」

「でも、たしかにル二の言うとおりに、あれってもう非道と言っても過言ではないほどに見兼ねるような行為ですね。人のお顔にあんなように痛めつける必要ってどこにもないじゃないですか!」


と、野次馬から何か聞こえてくるけれど、それを無視して目の前にいる、この醜悪な外見をしている人らしく生物にだけ視線を集中させている。それにしても、よくもこんな真っ黒い皮膚の覆われた手でこの私の身体に触れてきたわね!まるで<マンドラム>に汚されたような感じがして鳥肌が立ってならないわっ!絶対に許さない!私が今までどれほどの辛さ、痛みや苦しみを堪えて今までに至ったか!長年の暴行のような厳しい訓練を受けてきたのにも関わらず、なんで日常生活の中でもこのような醜い黒犬のような外見をしている二足歩行生命体と目を合わせなきゃいけないのー?<マンドラム>みたいな見た目はまあ、ともかく、関わってこなければ、私だって非道のことはしないわ。でも、よりにもよって、トイレへ行こうとしたこの私の胸にその手で掴んでくるとは、万死に値する事なのよっーー!!


いっそ怒りを覚えた私は彼の顔面を爪を深く食い込んで神使力を高めていると、

「フェルリーナ様!頑張って下さい!あんな黒い男、やっつけちゃえー!」

「そうですよー!<奇跡の子>だかなんだか知らないけれど、あんな人型<マンドラム>、早く完膚なきまでにやっちゃって二度とフェルリーナ様に無礼な行動ができないようにしてみてー?」

と、私といつも一緒にいる、取り巻きに声援を送られているようだわー。なんか、嬉しいわね、こんなに支持されてるのって。

と、彼の気絶してるっぽい不快な面がもう見たくないので、今度は食い込んだままの爪でこの黒犬の顔面から手を離さずに、神使力の纏われた逆側の手を使っての爪による刺突をこの犬の黒い腹へと容赦なく強烈な貫通力で食らわしてから、力強く舞台上へと叩きつけてやった。

「ガアアッーーーーー!!!!」


浅いクレーターができる程に叩き付けられた彼は事切れたかのように、ぴっくりとも動かなくなる。この後、先生が10秒まで数えて起きれなくなったら、奴隷にできるのよね?で、放課後、家につれて帰ったら、ようやく、遂に、長年の暴行を加えられ続けてきたこの私に鬱憤を晴らせそうな玩具を手に入れたわ!ふふふふっ......あははははははははははははっーーーー!!!!


_________________________________


森川里奈の視点:


「ルーくんー!!!!!!!」

「「早山君ー!!!」」

「ルー!!!!!!!」

もう我慢できない!あたしのルーくんになんてことをーっ!!もう許さないからねー!あの女、絶対に許さないわ!ルーくんにあんなような残忍な事をしちゃうような人でなし、あたしが全身全霊で以って、成敗してやるわー!!!!

「森川さん!待って!」

と、激怒に燃えてるあたしの肩にネフィーさんが手を置いてきたので、彼女に向き直ってみたら、

「大丈夫だよ、森川さん!彼は神の聖騎士の一人なんだから、そんなに簡単に気を失うと思うー?」

え?小声であたしの耳近くにそう囁いてきたけど、どういう意味なの、それ? 明らかに、実際にもう気絶してるじゃない?早く助けに行かないとー!

「どういうことっすかー!??ネフィールさん?」

「早山君は無事のままだと言いたいんですか?冗談を止してくださいよ!彼はそこで、舞台上に身体ごとめりこんで、微動だにしなくなってるじゃないですかー!早く、保健室へ運びに行かないとー!」

と、仲間二人と全員一致して、ルーくんの心配をしてそういう事を言い出してきた有栖川さんと、

「先ずは待ってー!ミルフォン先生が10まで数えるのをー!」

えー?舞台に視線を戻せば、確かに教職員らしきローブを着てる青髪セミロングな女性が柵の上で立っているようね。なんか、凛々しいよね、そういう姿のって。


_____________________________


痛い。


すごく痛い。


とにかく、痛い。


全身が一人の残虐な女の子による無慈悲な攻撃でズタボロにされ、舞台上にめり込んだまま動けずにいる俺は涙と大量な血を流して、引き裂かれて破かれた制服で、肌の露出した箇所が女子生徒より多くなって、顔中がちくちくずきずき堪えない激痛に苛まれてるので、きっとあの女がさっき爪を深く食い込ませてきて、それでずたずたに頬の皮膚を切り裂かれ貫かれすぎて、中の筋肉や骨も損傷を被るに違いない。............くそー!本当に、ついてないな、俺............。さっき、トイレにさえ行かなければ!.................あるいは、もっと遅くドアを開けて...みたら!........こんなことには...............ならなかったのにー!!えぐっ!うぐっー!


「汝に問う」

え?

急に、直接、頭に響いてくるような声が聞こえた!

「汝に問う。汝はこの世界に生きるすべての住民に等しく、公平な愛を注げるのであろうか?」

どうやら、聞き違いではないようだ。確かに頭の中に声が響いてきた。なら、答えは一つだけ。

「俺がもっとも大事にするのは、俺の隣にいる、今までずっと歩んできた、俺の大切な仲間だけだ。もちろん、この世界はあのカンとかなんとかから救ってみせるが、如何なる時であっても、もし仲間が窮地に立たされたら、優先度はあいつらの救出からだ。」

と、答えた俺である。

「........正解。大衆を救うより、先に世話になってきた、そして世話をしてあげてきた友を見捨てるような輩は落第者。本来、汝の傷を10秒以内に完治させるだけで、<神の聖騎士>としての権能の一部を開放させるのは明日になる予定。しかし、汝の熱意のこもった返答に、惹かれた。よって、開放す。汝の権能の一部を」

と、そう返してきた。

「差し支えがないなら、お名前を聞かせてくれないか?」

「余はシェレアーツ。大母神シェレアーツ.......地球人よ。」

なるほど。それなら、納得できた!

俺のいつも大切にしてきた、今までも、これからも!

怒りっぽくて、直ぐに手を上げてきた赤髪幼馴染。

俺よりイケメンで、お金関係無しに、いつも女子にモてる親友。

そして、その親友の側に、いつも付き添ってきた、その彼女(みたいな存在、はい!)

最後に、数日前から、笑みを絶やさない、優しくて、親切な巨乳持ちの金髪美少女であるエレン姫ともお知り合いになった!

こんな仲間に、こんな友達に、こんな素敵な面々が近くにいるってのに、他に望めるものなんて、何もないだろうがーーーーー!!!!!


と、そんな熱烈で、切実かつ情熱的な真剣で強い思いと共に、体中に青白い光が眩き始めるのであった。


そう、完治した俺は、満ち溢れた神使力の迸りで身体中を光らせながら、目を点にしてぽかんとしてる、頭のネジがいくつか欠けているあの糞女、フェルリーナを前にして、言ってやった!


「あんたのその醜い心情、精神と生き様、鍛えなおして更生させてやる!」

かっこよく見せるために、そう言ってやった!



___________________________________________









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る