第14話 フェルリーナ嬢と決闘2
「えっと、実は....さっきのはわざとじゃないんです!これだけは本当のことですよー!トイレから外へ出たいとドアーを開けようとしたら君がぶつかってきたから事故でバランスを崩してしまいそれで君にあんな無理な体勢を強いてしまった!だから、俺が悪かったです!神使力は最近、覚醒されたばかりですし現神術も一つもまだ発動できないようなド新参者で決闘とかマジで無理です!ですから、この通り、どうかこの件を見逃して頂けないでしょうか、フェルリーナ嬢?さっきの事は真にすみませんでした!もう繰り返しませんので、どうかご慈悲をー!」
勝てそうな気がしないだけじゃなくて、本当に自分が悪かったという自覚もあるのでまずは誠実さが感じられるように頭を膝丈まで低頭して謝罪をしてみた。さっきは事故とはいえ、完全に俺の方がミスを犯してしまったからだった。よりにもよって、見ず知らずの女の子の胸を触ってしまうとは、これは梨奈が見てたら、または俺があいつにやってしまったら、きっと殺されそうな案件なので、取りあえず謝ろう!
「....ふ。...ふふ!...あははは!」
と、俺の謝罪に対して、何やら蔑んだ視線や笑みを見せたかと思うと、背を弓なりにして口を真っ白い手で覆ったままオレンジ色の長髪を揺らしながら高い笑いし出したぞ!
「...ふふ!...あははは!!何を言おうかと思ってたけど、犬のような外見らしくて、よく吠えてたわね、この<マンドラム>は!」
ん?この子、何いってるの?犬のような外見?<マンドラム>?......というか、<マンドラム>って確かに一種の神滅鬼だよね?それも一番弱いのジョドッス級で。確かに、王城の図書館にある本で読んでた時は<マンドラム>って確かに真っ黒い毛皮や皮膚を持つ大型犬のような外見がしたという絵が載せられてたんだっけ?
「....ふふふふ!!...あははは!本当にどうしようもない犬わね、あなたはっ!<奇跡の子>とかなんだか知らないけれど、低頭しながら謝って済むぐらいなら、ヴァルキューロアの存在はいらないのよー!それに、このゼンダル王国が建国された以来、数多くの功績を何代に亘って貢献してきたフェリィー家の跡取り娘で伯爵令嬢であるこの私、フェルリーナ・フォン・フェリィに、婚約者でもないあなたが高貴なる私の身体をその黒くて汚い手で触っておいて許されるとでも思っているの?まったく、本当に見た目と同様に、頭の方も猿並みに悪いようで笑えないわ、この醜い<マンドラム>は!」
......................なんじゃ、ありゃ.............?俺、もしかした変なこと言ってしまったのかな?謝罪のつもりで真摯に誠実さが伝わるような行動したつもりだったけど、あれって逆効果だったの!?ってか、俺って本当に犬のような外見をしてるのかよ!まあ、確かに鏡で自分の顔を見てきたら、遼二のやつみたいに美形な方とは言い難いけど、それなりに普通な方だとは思ってけどな。本当に醜いのか、俺?梨奈は絶対に俺の容姿についてまったく触れてこないし、きっと俺の内面だけ見て接してきたと信じてる。なので、外見についてはあいつから正直な言葉が聞けないので、もしかしてこの子のいう通りに少しだけ醜いの、俺? 今まで、そんな事を直接誰かに言われたことがないし、小学校にいた頃に外見が周りと違うのにいじめられてた頃でさえあんなん言われてなかったし、一体何なの、この子?顔はまあ、美少女と分類されてもいいけど、なんでそのような高慢で高圧的な言動をしてるの?
「そこの犬!その手袋を拾いなさい。そして、決闘の場である、あそこの出口を通って直ぐにある<聖者の白広壇(ナランテース>へとその黒い尻を引きずりなさい。」
残虐に見える程の嗜虐性の濃い笑みで、そして侮蔑の込めた言葉遣いや眼差しで命令口調でいったきたそのフェルリーナと名乗った子。どうやら、もう逃げ場はないようだな。もしここから、逃げようと、走り出したら、きっと本気になられて攻撃されるに違いない。確かに女王の事前情報によれば、この学園の生徒会長が自分の得意とする一種の防御系の現神術を持続継続して用いる結界のお陰で、会長より格下なヴァルキューロアが無許可に現神術の発動ができないらしいが、でもそれならば、俺よりもっと多い神使力の量を持っているっぽいに見えるので、それで追ってきて直接な物理攻撃で殴り殺される可能性もなくはない....。 .......どうするの?.....
「分かりました。君が満足するような事なら、なんだって付き合います。どうか、お手柔らかにお願いしますね、フェルリーナ嬢。」
取り合えず、時間稼ぎとして一先ず、彼女の言葉に従おう、うん。これがベストだよなー?ね、梨奈?って、梨奈はここにいないんだっけー?ちぇー!まあ、自分で何とかしてみせるよ。俺だって一応、男だしね。
と、中庭にある出口で、本棟から出ていった俺らである。彼女の指差した方向によって外へと案内されたので、こっちを追う形にして最後に歩いてきたそのフェルリーナ嬢である。
建物の外にはすごい広さや大きさを誇る丸い舞台なのがあって、それが幅広い堀によって囲まれていて、堀の中には水みたいなのが流れているぞ!ああー!綺麗ね、これ!もし梨奈、遼二や有栖川さんが一緒にここにいたら、きっと好きなんだろうね、こういう光景を。はああーーー、運の悪い事に、あの子と絡んでしまったが故に、こんなことになってー。......うううぅぅぅ........俺、もう逃げ出していい?それにしても、中央の丸い舞台って大きすぎるなー!計測したら、きっと直径25メートル以上はあるんじゃない?それって、そこの3棟のどれよれ長いじゃんー!上階の窓から見渡してもきっと壮観なんだろうねー。まあ、でも、この舞台は本棟の玄関のある校舎の正面からでは見れないので、校舎内の窓なり直接ここへ出てくるなりでしか確認できないようだな。
「何を突っ立っているの?早く舞台へと上がりなさい、そこの黒い犬!」
と、そのオレンジ色の髪をしてる美少女だけど、ずきずきと苦もなく軽蔑の篭った言葉を平然と言える、性格の悪いお嬢様に急かされたので、それに従った俺である。舞台へと上がるためには跳躍を試すのも悪くないみたいなんだが、今は無難にそこにある階段を昇っていこう。
で、そこへと登ったのはいいが、俺たち二人を見に来たか、さっきのトイレの壁が破壊されて爆音によるものなのか、騒ぎを聞きつけた何人かの女子生徒ががわらわらと校舎から出てきた。そこの本棟とそれを掛け通路で繋がってる両側の棟は全て、2階立てなので、階段を降りてくる生徒もいるようだ。ってか、仲間3人の顔はまだ見ないままだったから、もしかして、まだ出てこないのかな?
俺らの立っている舞台を見渡すような形に、観客であるたくさんの女子生徒が水のある堀の縁にある白い石でできた低い柵に手を添えたりして、ざわざわと何やら話し合っている。
「ね、ね、さっき、教師達が許可したから、授業中なのに爆破音の発生源を確かめるために外へ出てもいいと言う事になってるけど、あの舞台にいるのって、フェルリーナ嬢じゃない?」
「そのようね。さっきトイレもチェックしてきたけど、そこは壁に穴が開けられていて中庭へと出たから、そこを通ってみれば何だか話し中だった二人の制服姿の子がそれを終えたらしくて、そこの<聖者の白広壇(ナランテース>へと昇ってったけれど、もしかして決闘するつもりなの?」
「それにしても、あそこの男性用みたいな制服を着てる男の子って、確かに先日、学園長が言ってた、<奇跡の子>の内の一人だよねー?なんか、真っ黒い成りをしているけど、なんでそうなの?」
「あたしもわかんないよー。今まで、16歳も生きてきたけど、あんなに全身が真っ黒いな人間、一人も見たことないよー。」
「不思議な事ですね。まあ、<奇跡の子>みたいですし、なんらかの原因があって肌色が黒くなったという可能性も考えられるので、別にどうでもいいことだと思いますが。」
「でもああいうの見たことないから、ちょっとだけ新鮮よね?」
「そうね。なんか、ちょっとだけかっこいいし、ねー?」
「へええーーー?そうなのー?ラニ?あたしとしては、普通に色白な男性の方が無難だとも思うけれど....。」
「ね、ね!あれ見てよー。あそこの<グラン>棟の扉から、教師達が何人も様子を見にか、出てくるよー!」
「これって、大事じゃんー!まあ、あまり見ない光景だから、なんかちょっとだけ楽しいよねー?まるで、祭りみたいで私、ちょっとだけドキドキしちゃうよ!」
と、何やら、騒がしいまでにたくさんの話し声が漠然とではあるが、聞こえてきたぞ!
「そこの黒犬!キョロキョロせずに、高貴なるこの私にだけそこの黒い皮膚と全然似合わない目玉を向けなさい。じゃないと、今すぐそれを抉り取りに行くわよ。」
いかん!あのお嬢様をまたも怒らせてしまったようなので、注意を傾けないと、
「では、決闘内容をあなたに伝えるわ。この私の肌をそこの汚い黒手で触ってきたんだから、本来はその場でそこの黒い肉体を真っ二つにして切り伏せたいところだったけれど、生憎とこの学園では現神戦武装(げんじんせんぶそう)や現神術の使用は現生徒会長であるローズバーグさんによって禁じられているの。それを実際に強制するための結界も張られているので、ここはこの学園の生徒同士の揉め事を解消するための(決闘<ジュエール>)に関する法令、11項を採用するわ。よって、純粋な神使力を通しての身体の四肢や全身が持つ全ての箇所からの物理攻撃だけを使用する試合にするの。断るとは言わせないわよ?」
要はこうだな:武器と前に見たことのあるエレン姫達が使っていたあの魔法っぽい技さえ使わなければ、なんでもありってことだな。つまり、手を使って相手の目を抉ってもいいなのかよー!?まあ、確かに、ごく稀な高度な現神術を使用して、眼球や体内にある贓物は元通りに生え直せられると本で読んだが、様々な条件があるため、一概でなんでも直せるとはいえない。しかし、神使力を通して錬金術で擬似的な贓物も難しいけれど作れるみたいだから、それで代わりの目も挿入してもらえるかも?? って、なに武相な事考えてんの、俺?でも、確かに昨日、貰ってきた学園紹介本から読んだら、残虐行為はここの学園では認められないので、もしそれをするようだったら、あのお嬢様、女王から厳しい罰が下されるかもな.....。
「安心なさい、黒犬さん。何か不潔な汗が大量沸いてきて考え中のようだけど、あなたのその滑稽な眼球はいらないわ。学園の条例として意図的な残虐行為は厳しく罰されるし。というか、もし私より神使力の量が多ければ、物理による破壊行為は一切寄せ付けないんでしょー?なので、例え私がそれを試しても無効化にはなると思うわ。」
そう。王城の図書館に保管されてるたくさんの本を読んできて知った情報だが、この世界、<リルナ>では大母神の定めによって、全ての生命が生まれた瞬間から、神使力というエネルギーの源が宿るように決められてる。昔は人間族の他に神族やミスダン族もいたけど、今はこの世界に住んでいる生き物は動物や人間しかおらず、神使力を体内で宿しているのはその二つの生命体だけ。まあ、確かに神族といえば、全てが完全に滅亡させられず、大神ラニムとその腹心二人がまだ生きていたという話らしいだったが、行方不明になったんだよなー。
でも、神滅鬼と戦えるのはヴァルキューロアなる女性だけになる。なぜなら、ヴァルキューロアは身に宿る神使力の量が戦闘可能だからだ。それ以外はとっても微かなまでに微々たるもので、語るに値しないまでに量が少なすぎるからだ。で、現神術はその神使力を消費して、使う技の数々の総称である。つまり、現神術の発動や使用条件は常に、<戦闘可能な神使力>を持つこと。それがないと、現神術を使うのはただの夢の寝言に過ぎん。
「それは助かりますね、フェルリーナ嬢。では、決闘内容というのは?」
「決闘内容は簡単だわ。私が勝てば、あなたは私の専属奴隷になりなさい。そうなったら、私の気の赴くままに、あなたをペットにして労働させるなり、個人趣味による様々な演技をさせるで、我が家の所有物として重宝するわ。でも、もし万が一にも黒犬であるあなたが勝てば、さっきの私への侮辱行為を許してあげてもいいわよ?」
なにそれ?俺が負ければ、一生の自由を失うが、そっちが負ければさっきの事故の事を許すだけ?それって、いくらなんでも横暴やしませんか、お嬢様よ?というか、ネネサ女王の話によれば、この国では奴隷制度は一切、正式に認められないようなのだが、学園で正式に行われた決闘で定められた規定によると、敗者は絶対に勝者のいう事を何度も聞く必要がある。じゃないと、国法により罰される可能性が高いとも知らされた。でも、女王も俺たちの特別性を考慮してくれるみたいな事をいってきたので、もしカンという魔王めいた存在の討伐に向けて不都合が生じる場合、その時は例え、神の聖騎士の誰かが敗者として負けても、勝者のいうことを聞く必要がないらしいと聞いたな。俺は確かに少しだけマゾっ気なところがあるけど、そんなに節操なしのもんじゃなくて、ちゃんと親しみを持つ女性とだけそういう関係になってもいい。例えば、梨奈とかエレン姫とか。なので、こんな本格的な奴隷にはなりたくないし、断らせてもらおう。
「もし決闘を受けないといえば?」
「なら、例え退学か、女王陛下に罰されても構わずに確実にあなたを殺しますわー!だって、フェリィー家の跡取り娘である私の高貴なる身体を婚約者でもないあなたの黒い手で汚されたんだから、それ相応の報いを与えてやらないと私の家柄が廃るわー!」
ふむ。こいつは本気だなー。もし断れば、本気で殺しにかかってくるに違いない。なら、俺のとるべき行動は一つのみ。俺は一応、異世界から召喚されてきた<神の聖騎士>の一人なんだから、負けた場合は奴隷にされてもきっと、体内に宿る神使力の量が多くなって、簡単そこの家から逃げ出す事もできるだろう。
「分かりましたよ、フェルリーナ嬢。君の決闘の申し入れ、謹んで受け入れます。」
「よろしい。では、ミルフォン先生。貴方がこの決闘の正式な証人になってはもらえないかしら?」
と、そこの柵に立っている20代の若さを誇る教職員らしきローブを着てる青髪セミロングな女性に聞いたフェルリーナ嬢である。
「ええ。わかったわ。でもくれぐれもあまり暴れないように。ここは一応、学び舎であり、神滅鬼と戦うために訓練や鍛錬をするための場所であって、決してヴァルキューロア同士の個人の揉め事で発生した暴力行為、残虐行為、および死闘で整われてるところではないわよ。」
「それは十分、理解していますわ、先生。安心して下さい。私はただ........」
ふううううううーーーーーーーー!
と、猛烈な速度でこっちへと駆け出してきた、オレンジ色な長髪を揺らしているフェルリーナ嬢であるー!!早い!
「犬と戯れたいだけですわーーっ!」
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